第2編 物権
2編 物権/175条〜
1章 総則/175条〜
2章 占有権/180条〜
1節 占有権の取得/180条〜
2節 占有権の効力/188条〜
3節 占有権の消滅/203条〜
4節 準占有/205条〜
3章 所有権/206条〜
1節 所有権の限界/206条〜
2節 所有権の取得/239条〜
3節 共有/249条〜
4章 地上権/265条〜
5章 永小作権/270条〜
6章 地役権/280条〜
7章 留置権/295条〜
8章 先取特権/303条〜
1節 総則/303条〜
2節 先取特権の種類/306条〜
1款 一般の先取特権/306条〜
2款 動産の先取特権/311条〜
3款 不動産の先取特権/325条〜
3節 先取特権の順位/329条〜
4節 先取特権の効力/333条〜
9章 質権/342条〜
1節 総則/342条〜
2節 動産質/352条〜
3節 不動産質/356条〜
4節 権利質/362条〜
10章 抵当権/369条〜
1節 総則/369条〜
2節 抵当権の効力/373条〜
3節 抵当権の消滅/396条〜
4節 根抵当/398の2条〜
⇒譲渡担保の判例/398の22条〜
⇒所有権留保の判例/398の22条〜
 
第1章 総則
第175条〔物権法定主義〕
物権は本法其他の法律に定むるものの外之を創設することができない(ことを得す)
*本法に定める物権(一八〇・二〇六・二六五・二七〇・二八〇・二六三・二九四・二九五・三〇三・三四二・三六九)、その他の法律に定める物権(民施三五・三六、商五一・五二一・五五七・五六二・五八九・七五三2・八四二・八四八、立木二、鉱一二・七一、採石法四、漁二三・四三、鉄道抵当法二以下、鉱抵一−三、工抵二・八以下、軌道ノ抵当ニ関スル法律一・二、漁業財団抵当法一・六、農動産四・一二、自抵三、航抵三、建機抵五、抵証、国際海運一九、企担一、特定多目的ダム法二〇等)、物権の準拠法(法例一〇1)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第176条〔物権の設定・移転の意思主義〕
物権の設定及ひ移転は当事者の意思表示のみに因りて其効力を生す
*物権変動の対抗要件(一七七・一七八)、本条の例外(一八二−一八四・二六三・二九四・二九五・三〇六・三一一・三二五・三四四、農地三・五、仮登記担保二)、所有権留保(割賦七、宅建業四三)、物権の得喪の準拠法(法例一〇2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第177条〔不動産物権の対抗要件〕
不動産に関する物権の得喪及ひ変更は登記法の定むる所に従ひ其登記を為すに非されは之を以て第三者に対抗することができない(ことを得す)
*不動産(八六1)、建物(不登準則一三六)、登記を要する権利(六〇五・五八一1、不登一、民施三七、土収一〇六)、登記を要しない権利(一八〇・二六三・二九四・二九五・三〇六)、登記を要する事項(二五六・二七二・二八一・二八五1・二八六・七五六・九四五・九五〇2)、特則(三九五、借地借家一〇・三一、罹災都市一〇・二五ノ二、農地一八・三二、区分所有一一3)、国税滞納処分の場合(税徴一二一)、他の法律の定める登記・登録(商六八七・七〇三、立木一1、工抵九、鉱抵三、自抵五、建機抵七、抵証一六−一九、企担四、鉱五九・六〇・八四・八五、漁五〇、採石法四、特許六六・九八1・九九3、実用新案一四・二五・二六、意匠二〇・三五・三六、商標一八・三四・三五、著七七・八八・一〇四等)、効力発生要件としての登記(三七三3・三九八ノ四3・三九八ノ一七1)、登記すべき権利の準拠法(法例一〇1)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第178条〔動産物権の対抗要件〕
動産に関する物権の譲渡は其動産の引渡あるに非されは之を以て第三者に対抗することができない(ことを得す)
*動産(八六2,3)、引渡し(一八二−一八四)、証券による引渡し(商五七五・六〇四・七七六)、効力発生要件としての引渡し(三四四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第179条〔混同〕
同一物に付き所有権及ひ他の物権か同一人に帰したるときは其物権は消滅す但其物又は其物権か第三者の権利の目的たるときは此限に在らす
□所有権以外の物権及ひ之を目的とする他の権利か同一人に帰したるときは其権利は消滅す此場合に於ては前項但書の規定を準用す
□前二項の規定は占有権には之を適用せす
*債権の混同(五二〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第2章 占有権
第1節 占有権の取得
第180条〔占有権の取得〕
占有権は自己の為めにする意思を以て物を所持するに因りて之を取得す
*占有権の取得(一八一−一八四)、自己のためにする意思(一六三・二〇五)、物(八五・八六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第181条〔代理占有〕
占有権は代理人に依りて之を取得することができる(ことを得)
*占有権の取得(一八〇・一八二−一八四)、代理占有の消滅(二〇四)、質権の要件としての代理占有の禁止(三四五)
⇒解説
 
第182条〔現実の引渡し、簡易の引渡し〕
占有権の譲渡は占有物の引渡に依りて之を為す
□譲受人又は其代理人か現に占有物を所持する場合に於ては占有権の譲渡は当事者の意思表示のみに依りて之を為すことができる(ことを得)
*占有権の取得(一八〇・一八一・一八三・一八四)、動産物権変動の対抗要件としての引渡し(一七八)、占有権の譲渡の他の方法(一八三・一八四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第183条〔占有改定〕
代理人か自己の占有物を爾後本人の為めに占有すへき意思を表示したるときは本人は之に因りて占有権を取得す
*占有権の取得(一八〇・一八二・一八四)、代理占有(一八一)、動産物権変動の対抗要件(一七八)、質権の要件としての占有改定の禁止(三四五)、善意取得の要件としての占有と占有改定(一九二)、占有権譲渡の他の方法(一八二・一八四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第184条〔指図による占有移転〕
代理人に依りて占有を為す場合に於て本人か其代理人に対し爾後第三者の為めに其物を占有すへき旨を命し第三者之を承諾したるときは其第三者は占有権を取得す
*占有権の取得(一八〇・一八二・一八三)、代理占有(一八一)、動産物権変動の対抗要件としての引渡し(一七八)、占有権譲渡の他の方法(一八二・一八三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第185条〔自主占有への転換〕
権原の性質上占有者に所有の意思なきものとする場合に於ては其占有者か自己に占有を為さしめたる者に対し所有の意思あることを表示し又は新権原に因り更に所有の意思を以て占有を始むるに非されは占有は其性質を変せす
*所有の意思(一六二・一八六1・一九一但・二三九1)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第186条〔占有の態様の推定〕
占有者は所有の意思を以て善意、平穏且公然に占有を為すものと推定す
□前後両時に於て占有を為したる証拠あるときは占有は其間継続したるものと推定す
*権利適法の推定(一八八)、□所有の意思(一六二・一八五・一九一但・二三九1)、善意の占有(一六二2・一八九・一九一・一九二)、悪意の占有(一八九・一九〇1・一九一・一九六2)、平穏・公然(一六二・一九二)、強暴・隠秘(一九〇2)、□占有の継続(一六二・二〇三但・三五二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第187条〔占有の承継〕
占有者の承継人は其選択に従ひ自己の占有のみを主張し又は自己の占有に前主の占有を併せて之を主張することができる(ことを得)
□前主の占有を併せて主張する場合に於ては其瑕疵も亦之を承継す
*□占有の特定承継(一八二−一八四)、占有の包括承継(八九六)、□占有の瑕疵の不存在の推定(一八六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第2節 占有権の効力
第188条〔権利適法の推定〕
占有者か占有物の上に行使する権利は之を適法に有するものと推定す
*占有の態様の推定(一八六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第189条〔善意占有者と果実〕
善意の占有者は占有物より生する果実を取得す
□善意の占有者か本権の訴に於て敗訴したるときは其起訴の時より悪意の占有者と看做す
*善意の推定(一八六1)、善意の占有(一六二2・一九一・一九二)、□果実(八八・八九)、果実収取権に関する特別規定(二九七・三五〇・五七五1・九九二)、□本権の訴え(二〇二)、悪意の占有(一九〇1・一九一・一九六2但)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第190条〔悪意占有者と果実、強暴・隠秘占有者と果実〕
悪意の占有者は果実を返還し且其既に消費し、過失に因りて毀損し又は収取を怠りたる果実の代価を償還する義務を負ふ
□前項の規定は強暴又は隠秘に因る占有者に之を準用す
*□悪意の占有(一八九2・一九一・一九六2但)、果実(八八・八九)、不当利得の返還義務(七〇三・七〇四)
⇒解説
 
第191条〔占有者の損害賠償義務〕
占有物か占有者の責に帰すへき事由に因りて滅失又は毀損したるときは悪意の占有者は其回復者に対し其損害の全部を賠償する義務を負ひ善意の占有者は其滅失又は毀損に因りて現に利益を受くる限度に於て賠償を為す義務を負ふ但所有の意思なき占有者は其善意なるときと雖も全部の賠償を為すことを要す
*責めに帰すべき事由(四一五・五三五3・五三六2)、悪意者の責任規定(七〇四・七〇九)、悪意の占有(一八九2・一九〇1・一九六2但)、善意者の責任規定(七〇三)、善意の占有(一六二2・一八九・一九二・一九六)、善意の推定(一八六1)、現に利益を受ける限度(三二2・一二一・四六二2・七〇二3・七四八2)、所有の意思(一八五・一八六1)
⇒解説
 
第192条〔善意取得〕
平穏且公然に動産の占有を始めたる者か善意にして且過失なきときは即時に其動産の上に行使する権利を取得す
*動産(八六2,3)、占有の承継取得(一八二−一八四)、平穏・公然・善意の推定(一八六1)、本条の特則(一九三−一九五)、有価証券の場合(手一六2・七七1(1)、小二一、商二二九・五一九、抵証四〇)、本条の準用(三一九、区分所有七3・六六)、本条の適用を妨げない旨の規定(立木四5、工抵五2、農動産一三2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第193条〔盗品・遺失物の回復〕
前条の場合に於て占有物か盗品又は遺失物なるときは被害者又は遺失主は盗難又は遺失の時より二年間占有者に対して其物の回復を請求することができる(ことを得)
*盗品(刑二三五・二三六1・二五六)、遺失物(二四〇、遺失)、有価証券の場合(手一六2・七七1(1)、小二一、商二二九・五一九、抵証四〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第194条〔同前〕
占有者か盗品又は遺失物を競売若くは公の市場に於て又は其物と同種の物を販売する商人より善意にて買受けたるときは被害者又は遺失主は占有者か払ひたる代価を弁償するに非されは其物を回復することができない(ことを得す)
*動産の競売(民執一三四−一四二・一九〇−一九五)、特則(質屋二二、公益質屋法一五1、古物営業法二二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第195条〔家畜外の動物の占有による取得〕
他人か飼養せし家畜外の動物を占有する者は其占有の始善意にして且逃失の時より一个月内に飼養主より回復の請求を受けさるときは其動物の上に行使する権利を取得す
*無主物の場合(二三九1)、逸走の家畜(遺失一二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第196条〔占有者の費用償還請求権〕
占有者か占有物を返還する場合に於ては其物の保存の為めに費したる金額其他の必要費を回復者より償還せしむることができる(ことを得)但占有者か果実を取得したる場合に於ては通常の必要費は其負担に帰す
□占有者か占有物の改良の為めに費したる金額其他の有益費に付ては其価格の増加か現存する場合に限り回復者の選択に従ひ其費したる金額又は増価額を償還せしむることができる(ことを得)但悪意の占有者に対しては裁判所は回復者の請求に因り之に相当の期限を許与することができる(ことを得)
*占有者と回復者の関係に関連する条文(一九一・七〇二・七〇三以下)、本条の適用(三九一・五八三2・六〇八2)、□必要費の償還請求権(二七三・二九九1・三五〇・三九一・五八三2・五九五1・六〇八1・六五〇1,2・六六五・六七一・九九三)、占有者の果実取得(一八九・一九〇)、□有益費の償還請求権(二七三・二九九2・三五〇・三九一・五八三2・五九五2・六〇八2・七〇二1,2・九九三)、特則(土改五九、森林二〇〇)、期限許与に関連する効果(二九五1但)
⇒解説
 
第197条〔占有の訴え〕
占有者は後五条の規定に従ひ占有の訴を提起することができる(ことを得)他人の為めに占有を為す者亦同し
*占有の訴え(一九八−二〇二・三五三)、他人のための占有(一八一)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第198条〔占有保持の訴え〕
占有者か其占有を妨害せられたるときは占有保持の訴に依り其妨害の停止及ひ損害の賠償を請求することができる(ことを得)
*訴えの提起期間(二〇一1)、本権の訴えとの関係(二〇二)、損害賠償(七〇九)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第199条〔占有保全の訴え〕
占有者か其占有を妨害せらるる虞あるときは占有保全の訴に依り其妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる(ことを得)
*訴えの提起期間(二〇一2)、本権の訴えとの関係(二〇二)、損害賠償(七〇九)
⇒解説
 
第200条〔占有回収の訴え〕
占有者か其占有を奪はれたるときは占有回収の訴に依り其物の返還及ひ損害の賠償を請求することができる(ことを得)
□占有回収の訴は侵奪者の特定承継人に対して之を提起することができない(ことを得す)但其承継人か侵奪の事実を知りたるときは此限に在らす
*訴えの提起期間(二〇一3)、本権の訴えとの関係(二〇二)、占有回収の訴えの効果(二〇三但・三五二・三五三)、損害賠償(七〇九)、不動産侵奪罪(刑二三五の二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第201条〔占有の訴えの提起期間〕
占有保持の訴は妨害の存する間又は其止みたる後一年内に之を提起することを要す但工事に因り占有物に損害を生したる場合に於て其工事著手の時より一年を経過し又は其工事の竣成したるときは之を提起することができない(ことを得す)
□占有保全の訴は妨害の危険の存する間は之を提起することができる(ことを得)但工事に因り占有物に損害を生する虞あるときは前項但書の規定を準用す
□占有回収の訴は侵奪の時より一年内に之を提起することを要す
*期間の計算(一四〇・一四三)、損害賠償請求権の消滅時効(七二四)、□占有保持の訴え(一九八)、□占有保全の訴え(一九九)、□占有回収の訴え(二〇〇)
⇒解説
 
第202条〔本権の訴えとの関係〕
占有の訴は本権の訴と互に相妨くることなし
□占有の訴は本権に関する理由に基きて之を裁判することができない(ことを得す)
*占有の訴え(一九七−二〇一)、本権の訴え(一八九2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第3節 占有権の消滅
第203条〔占有権の消滅事由〕
占有権は占有者か占有の意思を□棄し又は占有物の所持を失ふに因りて消滅す但占有者か占有回収の訴を提起したるときは此限に在らす
*占有権・占有の意思(一八〇)、占有権喪失の効果(一六四・三〇二・三五二)、占有回収の訴え(二〇〇・二〇一3)
⇒解説
 
第204条〔代理占有の消滅事由〕
代理人に依りて占有を為す場合に於ては占有権は左の事由に因りて消滅す
一 本人か代理人をして占有を為さしむる意思を□棄したること
二 代理人か本人に対し爾後自己又は第三者の為めに占有物を所持すへき意思を表示したること
三 代理人か占有物の所持を失ひたること
□占有権は代理権の消滅のみに因りて消滅せす
*代理占有(一八一)
⇒解説
 
第4節 準占有
第205条〔準占有〕
本章の規定は自己の為めにする意思を以て財産権の行使を為す場合に之を準用す
*自己のためにする意思(一六三・一八〇)、所有権以外の財産権の取得時効(一六三)、債権の準占有(四七八)
⇒解説
 
第3章 所有権
第1節 所有権の限界
第206条〔所有権の意義・内容〕
所有者は法令の制限内に於て自由に其所有物の使用、収益及ひ処分を為す権利を有す
*財産権の不可侵性(憲二九1)、所有権の制限に関する一般規定(所有権に対する一般的限界・公共の福祉=憲二九2・一二、民一1、公共の福祉のための収用と補償=憲二九3、濫用禁止=憲一二、民一3、相隣関係=二〇九−二三八・二六七)、所有・所持等を制限・禁止する法令(銃砲、麻薬一二−一九、覚せい剤一三−二二の二・三〇の七−三〇の一〇、あへん法四−一〇、農地六等)、使用・行為等を制限・禁止する法令(区分所有六1、自賠五、河川五五・五七、道路四四・九一、漁一二〇−一二三、森林八・一〇の二・二一・三一・三四・四四・四五・四九・六六・六七、消防三−五・一〇・二九、都計二九・三七・四二・四三・五二の二、都再七の四・七の六・六〇・六六・六九、建基八−一一・五三・五七の二・五八・六五、航空四九・五〇、温泉法三・九−一一、文化財四三−四五・八〇・八一、医療二四、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律二七・二九・三二、自然環境一七・二五−二八、自然公園法一七−二四、首都圏近郊緑地保全法八、生産緑地法八、公有地の拡大の推進に関する法律四・八、下水一一・一三・三二等)、収益・処分を制限・禁止する法令(独禁、物統令、農地三−五・二一−二五・七五の二−七五の一〇、国土利用一四、宗法二三・二四等)、公用徴収による制限(土地収用その他関係諸法令)、公害発生行為の禁止(公害防止に関する諸法令)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第207条〔土地所有権の限界〕
土地の所有権は法令の制限内に於て其土地の上下に及ふ
*法令の制限の例(電通事業七八−八〇、下水一一・三二、鉱二・七・八、温泉法三−一一、工業用水道事業法三・五、建築物用地下水の採取の規制に関する法律三・四)
⇒解説
 
第208条〔建物の区分所有〕
削除〔昭三七法六九〕
 
第209条〔隣地使用権〕
土地の所有者は疆界又は其近傍に於て牆壁若くは建物を築造し又は之を修繕する為め必要なる範囲内に於て隣地の使用を請求することができる(ことを得)但隣人の承諾あるに非されは其住家に立入ることができない(ことを得す)
□前項の場合に於て隣人か損害を受けたるときは其償金を請求することができる(ことを得)
*地上権への準用(二六七)、住居侵入罪(刑一三〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第210条〔囲繞地通行権〕
或土地か他の土地に囲繞せられて公路に通せさるときは其土地の所有者は公路に至る為め囲繞地を通行することができる(ことを得)
□池沼、河渠若くは海洋に由るに非されは他に通すること能はす又は崖岸ありて土地と公路と著しき高低を為すとき亦同し
*関連規定(建基四三)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第211条〔同前〕
前条の場合に於て通行の場所及ひ方法は通行権を有する者の為めに必要にして且囲繞地の為めに損害最も少きものを選ふことを要す
□通行権を有する者は必要あるときは通路を開設することができる(ことを得)
*地上権への準用(二六七)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第212条〔同前〕
通行権を有する者は通行地の損害に対して償金を払ふことを要す但通路開設の為めに生したる損害に対するものを除く外一年毎に其償金を払ふことができる(ことを得)
*地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第213条〔同前〕
分割に因り公路に通せさる土地を生したるときは其土地の所有者は公路に至る為め他の分割者の所有地のみを通行することができる(ことを得)此場合に於ては償金を払ふことを要せす
□前項の規定は土地の所有者か其土地の一部を譲渡したる場合に之を準用す
*地上権への準用(二六七)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第214条〔自然流水の承水義務〕
土地の所有者は隣地より水の自然に流れ来るを妨くることができない(ことを得す)
*水に関する相隣関係(二一五−二二一)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第215条〔疎通工事権〕
水流か事変に因り低地に於て阻塞したるときは高地の所有者は自費を以て其疏通に必要なる工事を為すことができる(ことを得)
*費用負担の慣習(二一七)、自然流水(二一四)、人工的排水(二二〇・二二一)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第216条〔予防工事などの請求権〕
甲地に於て貯水、排水又は引水の為めに設けたる工作物の破潰又は阻塞に因りて乙地に損害を及ほし又は及ほす虞あるときは乙地の所有者は甲地の所有者をして修繕若くは疏通を為さしめ又必要あるときは予防工事を為さしむることができる(ことを得)
*費用負担の慣習(二一七)、占有権による予防請求(一九九)、土地工作物による損害の賠償責任(七一七1,3)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第217条〔費用負担の慣習〕
前二条の場合に於て費用の負担に付き別段の慣習あるときは其慣習に従ふ
*慣習の効力(法例二)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第218条〔雨水注瀉工作物の禁止〕
土地の所有者は直ちに雨水を隣地に注瀉せしむへき屋根其他の工作物を設くることができない(ことを得す)
*自然流水の承水義務(二一四)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第219条〔水流変更権〕
溝渠其他の水流地の所有者は対岸の土地か他人の所有に属するときは其水路又は幅員を変することができない(ことを得す)
□両岸の土地か水流地の所有者に属するときは其所有者は水路及ひ幅員を変することができる(ことを得)但下口に於て自然の水路に復することを要す
□前二項の規定に異なりたる慣習あるときは其慣習に従ふ
*溝渠共有の推定(二二九)、堰の設置・利用権(二二二)、地上権への準用(二六七)、□慣習の効力(法例二)
⇒解説
 
第220条〔余水排泄権〕
高地の所有者は浸水地を乾かす為め又は家用若くは農工業用の余水を排泄する為め公路、公流又は下水道に至るまて低地に水を通過せしむることができる(ことを得)但低地の為めに損害最も少き場所及ひ方法を選ふことを要す
*承水義務と疎通工事権(二一四・二一五)、通水用工作物の使用権(二二一)、排水設備の設置(下水一〇・一一)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第221条〔通水用工作物の使用権〕
土地の所有者は其所有地の水を通過せしむる為め高地又は低地の所有者か設けたる工作物を使用することができる(ことを得)
□前項の場合に於て他人の工作物を使用する者は其利益を受くる割合に応して工作物の設置及ひ保存の費用を分担することを要す
*他人の排水設備の使用(下水一一)、余水排泄権(二二〇)、承水義務と疎通工事権(二一四・二一五)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第222条〔堰の設置・利用権〕
水流地の所有者は堰を設くる需要あるときは其堰を対岸に附著せしむることができる(ことを得)但之に因りて生したる損害に対して償金を払ふことを要す
□対岸の所有者は水流地の一部か其所有に属するときは右の堰を使用することができる(ことを得)但前条の規定に従ひ費用を分担することを要す
*水流変更権(二一九)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第223条〔界標設置権〕
土地の所有者は隣地の所有者と共同の費用を以て疆界を標示すへき物を設くることができる(ことを得)
*界標設置の費用(二二四)、界標共有の推定(二二九)、地上権への準用(二六七)、境界標損壊罪(刑二六二の二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第224条〔同前〕
界標の設置及ひ保存の費用は相隣者平分して之を負担す但測量の費用は其土地の広狭に応して之を分担す
*界標設置権(二二三)、界標共有の推定(二二九)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第225条〔囲障設置権〕
二棟の建物か其所有者を異にし且其間に空地あるときは各所有者は他の所有者と共同の費用を以て其疆界に囲障を設くることができる(ことを得)
□当事者の協議調はさるときは前項の囲障は板□又は竹垣にして高さ二めーとるたることを要す
〔昭三三法六二第二項改正〕
*囲障設置権(二二六−二二八)、囲障共有の推定(二二九)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第226条〔同前〕
囲障の設置及ひ保存の費用は相隣者平分して之を負担す
*囲障設置権(二二五・二二七・二二八)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第227条〔同前〕
相隣者の一人は第二百二十五条第二項に定めたる材料より良好なるものを用ゐ又は高さを増して囲障を設くることができる(ことを得)但之に因りて生する費用の増額を負担することを要す
*囲障設置権(二二五・二二六・二二八)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第228条〔同前〕
前三条の規定に異なりたる慣習あるときは其慣習に従ふ
*慣習の効力(法例二)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第229条〔境界線上の設置物の共有推定〕
疆界線上に設けたる界標、囲障、牆壁及ひ溝渠は相隣者の共有に属するものと推定す
*界標(二二三・二二四)、牆壁(二〇九・二三〇)、溝渠(二一九・二三七2)、共有(二四九−二六二)、分割の禁止(二五七)、地上権への準用(二六七但)
⇒解説
 
第230条〔同前〕
一棟の建物の部分を成す疆界線上の牆壁には前条の規定を適用せす
□高さの不同なる二棟の建物を隔つる牆壁の低き建物を踰ゆる部分亦同し但防火牆壁は此限に在らす
*牆壁(二二九・二三一・二三二)、建物区分所有における共用部分は区分所有者の共有(区分所有一一)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第231条〔共有牆壁の増築権〕
相隣者の一人は共有の牆壁の高さを増すことができる(ことを得)但其牆壁か此工事に耐へさるときは自費を以て工作を加へ又は其牆壁を改築することを要す
□前項の規定に依りて牆壁の高さを増したる部分は其工事を為したる者の専有に属す
*牆壁(二〇九・二二九・二三〇)、被害者の償金請求権(二三二)、共有物の変更(二五一)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第232条〔同前〕
前条の場合に於て隣人か損害を受けたるときは其償金を請求することができる(ことを得)
*地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第233条〔竹木の剪除・截取権〕
隣地の竹木の枝か疆界線を踰ゆるときは其竹木の所有者をして其枝を剪除せしむることができる(ことを得)
□隣地の竹木の根か疆界線を踰ゆるときは之を截取することができる(ことを得)
*地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第234条〔境界線近傍の建築〕
建物を築造するには疆界線より五十せんちめーとる以上の距離を存することを要す
□前項の規定に違ひて建築を為さんとする者あるときは隣地の所有者は其建築を廃止し又は之を変更せしむることができる(ことを得)但建築著手の時より一年を経過し又は其建築の竣成したる後は損害賠償の請求のみを為すことができる(ことを得)
〔昭三三法六二第一項改正〕
*別段の慣習(二三六)、関連規定(建基五四・六五)、地上権への準用(二六七)、□損害賠償(七〇九)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第235条〔同前〕
疆界線より一めーとる未満の距離に於て他人の宅地を観望すへき□又は椽側を設くる者は目隠を附することを要す
□前項の距離は□又は椽側の最も隣地に近き点より直角線にて疆界線に至るまてを測算す
〔昭三三法六二第一項改正〕
*別段の慣習(二三六)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第236条〔同前〕
前二条の規定に異なりたる慣習あるときは其慣習に従ふ
*慣習の効力(法例二)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第237条〔境界線近傍の穿掘〕
井戸、用水溜、下水溜又は肥料溜を穿つには疆界線より二めーとる以上池、地窖又は厠坑を穿つには一めーとる以上の距離を存することを要す
□水樋を埋め又は溝渠を穿つには疆界線より其深さの半以上の距離を存することを要す但一めーとるを踰ゆることを要せす
〔昭三三法六二本条改正〕
*穿掘者注意義務(二三八)、地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第238条〔同前〕
疆界線の近傍に於て前条の工事を為すときは土砂の崩壊又は水若くは汚液の滲漏を防くに必要なる注意を為すことを要す
*地上権への準用(二六七)
⇒解説
 
第2節 所有権の取得
第239条〔無主物の先占〕
無主の動産は所有の意思を以て之を占有するに因りて其所有権を取得す
□無主の不動産は国庫の所有に属す
*動産と不動産(八六)、所有の意思の推定(一八六1)、占有(一八〇、民施三八)、無主の相続財産の国庫帰属(九五九)、特則(漁、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律)、鉱物の取扱い(鉱二・八)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第240条〔遺失物の拾得〕
遺失物は特別法の定むる所に従ひ公告を為したる後六个月内に其所有者の知れさるときは拾得者其所有権を取得す
〔昭三三法五本条改正〕
*特別法(遺失)、遺失物と善意取得(一九三・一九四)、逃失した家畜外の動物(一九五)、漂流物・沈没品(水救二四以下)、遺失物横領罪(刑二五四・二五五)、宝くじの拾得(当せん金付証票法一一の二)
⇒解説
 
第241条〔埋蔵物の発見〕
埋蔵物は特別法の定むる所に従ひ公告を為したる後六个月内に其所有者の知れさるときは発見者其所有権を取得す但他人の物の中に於て発見したる埋蔵物は発見者及ひ其物の所有者折半して其所有権を取得す
*特別法(遺失一三、文化財五七−六五)
⇒解説
 
第242条〔不動産の附合〕
不動産の所有者は其不動産の従として之に附合したる物の所有権を取得す但権原に因りて其物を附属せしめたる他人の権利を妨けす
*不動産(八六1)、物(八五)、従物(八七)、付加物と抵当権(三七〇)、権原による附合物の収去権(二六九・二七九・五九八・六一六)、附合の効果(二四七・二四八)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第243条〔動産の附合〕
各別の所有者に属する数個の動産か附合に因り毀損するに非されは之を分離すること能はさるに至りたるときは其合成物の所有権は主たる動産の所有者に属す分離の為め過分の費用を要するとき亦同し
*動産(八六2)、主物・従物(八七)、附合の効果(二四七・二四八)
⇒解説
 
第244条〔同前〕
附合したる動産に付き主従の区別を為すこと能はさるときは各動産の所有者は其附合の当時に於ける価格の割合に応して合成物を共有す
*動産(八六2)、主物・従物(八七)、共有(二四九−二六二)、附合の効果(二四七・二四八)、不動産の附合(二四二)
⇒解説
 
第245条〔混和〕
前二条の規定は各別の所有者に属する物か混和して識別すること能はさるに至りたる場合に之を準用す
*物(八五・八六)、混和の効果(二四七・二四八)
⇒解説
 
第246条〔加工〕
他人の動産に工作を加へたる者あるときは其加工物の所有権は材料の所有者に属す但工作に因りて生したる価格か著しく材料の価格に超ゆるときは加工者其物の所有権を取得す
□加工者か材料の一部を供したるときは其価格に工作に因りて生したる価格を加へたるものか他人の材料の価格に超ゆるときに限り加工者其物の所有権を取得す
*動産(八六2)、加工の効果(二四七・二四八)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第247条〔添附の効果〕
前五条の規定に依りて物の所有権か消滅したるときは其物の上に存せる他の権利も亦消滅す
□右の物の所有者か合成物、混和物又は加工物の単独所有者と為りたるときは前項の権利は爾後合成物、混和物又は加工物の上に存し其共有者と為りたるときは其持分の上に存す
*物(八五・八六)、添附(二四二−二四六)、特則(三〇四・三五〇・三七二)
⇒解説
 
第248条〔同前〕
前六条の規定の適用に因りて損失を受けたる者は第七百三条〔善意の受益者の返還義務〕及ひ第七百四条〔悪意の受益者の返還義務〕の規定に従ひ償金を請求することができる(ことを得)
*添附(二四二−二四六)
⇒解説
 
第3節 共有
第249条〔共有者の使用権〕
各共有者は共有物の全部に付き其持分に応したる使用を為すことができる(ことを得)
*所有権の意義・内容(二〇六)、持分(二五〇)、共有物の変更(二五一)、共有物の管理(二五二・二五三)、民法上共有とされるもの(二二九・二四一但・二四四・二四五・六六八・八九八)、共有の性質を有する入会権(二六三)、準共有(二六四)、区分建物の共用部分の共有(区分所有四・一一−二一)、持分処分の制限(六七六、区分所有一五、商六九八但、漁三二・三三、特許三三、著六五)、いわゆる合有の関連規定(六七六・六七七・九〇六−九一四、信託二四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第250条〔共有持分の割合〕
各共有者の持分は相均しきものと推定す
*共有持分の規定(二四一但・二四四・二四五・九〇〇−九〇四、区分所有一四)、持分の効果(二四九・二五二・二五三・二五五・二六一・六七四)、持分の登記(不登三九・七八(5))
⇒解説
 
第251条〔共有物の変更〕
各共有者は他の共有者の同意あるに非されは共有物に変更を加ふることができない(ことを得す)
*共有物の管理(二五二・二五三)、特則(二三一・二三二、区分所有一七・二六・六六、漁三三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第252条〔共有物の管理〕
共有物の管理に関する事項は前条の場合を除く外各共有者の持分の価格に従ひ其過半数を以て之を決す但保存行為は各共有者之を為すことができる(ことを得)
*共有物の使用(二四九)、持分の割合(二五〇)、管理費用(二五三・二五四・二五九)、特則(六七〇、商六九三・六九五、区分所有一八・二六・六六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第253条〔管理費の負担〕
各共有者は其持分に応し管理の費用を払ひ其他共有物の負担に任す
□共有者か一年内に前項の義務を履行せさるときは他の共有者は相当の償金を払ひて其者の持分を取得することができる(ことを得)
*持分の割合(二五〇)、共有物の管理(二五二)、共有物にかかる税の連帯納付義務(税通九、地税一〇の二)、共有に関する債権(二五四・二五九)、特則(商六九四・六九六、区分所有一九・六六)
⇒解説
 
第254条〔共有物に関する債権〕
共有者の一人か共有物に付き他の共有者に対して有する債権は其特定承継人に対しても之を行ふことができる(ことを得)
*共有に関する債権(二五三・二五九)、同旨の規定(区分所有八・六六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第255条〔持分の放棄など〕
共有者の一人か其持分を□棄したるとき又は相続人なくして死亡したるときは其持分は他の共有者に帰属す
*持分(二四九・二五〇)、相続人の不存在(九五一−九五九)、本条の適用除外(区分所有二四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第256条〔共有物の分割請求〕
各共有者は何時にても共有物の分割を請求することができる(ことを得)但五年を超えさる期間内分割を為ささる契約を為すことを妨けす
□此契約は之を更新することができる(ことを得)但其期間は更新の時より五年を超ゆることができない(ことを得す)
*裁判上の分割請求(二五八・九〇七2)、不分割契約の登記(不登三九ノ二)、分割の制限(二五七・六七六2・九〇七3・九〇八)、破産・更生手続と共有物分割(破六七、会更六一)、期間の計算(一四〇・一四三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第257条〔同前〕
前条の規定は第二百二十九条〔境界線上の界標など〕に掲けたる共有物には之を適用せす
〔昭三七法六九本条改正〕
 
第258条〔裁判上の分割請求〕
分割は共有者の協議調はさるときは之を裁判所に請求することができる(ことを得)
□前項の場合に於て現物を以て分割を為すこと能はさるとき又は分割に因りて著しく其価格を損する虞あるときは裁判所は其競売を命することができる(ことを得)
*分割請求(二五六・二五七)、□家庭裁判所に対する遺産分割の請求(九〇七2,3)、遺産の分割方法(九〇六−九〇八)、分割への参加(二六〇)、□競売(民執一九五・一八一以下)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第259条〔共有に関する債権〕
共有者の一人か他の共有者に対して共有に関する債権を有するときは分割に際し債務者に帰すへき共有物の部分を以て其弁済を為さしむることができる(ことを得)
□債権者は右の弁済を受くる為め債務者に帰すへき共有物の部分を売却する必要あるときは其売却を請求することができる(ことを得)
*共有に関する債権(二五三・二五四)、共有物の分割(二五六−二五八)、共有に関する債権の別除権(破九四)
⇒解説
 
第260条〔分割への参加〕
共有物に付き権利を有する者及ひ各共有者の債権者は自己の費用を以て分割に参加することができる(ことを得)
□前項の規定に依りて参加の請求ありたるに拘はらす其参加を待たすして分割を為したるときは其分割は之を以て参加を請求したる者に対抗することができない(ことを得す)
*共有物の分割(二五六−二五八)、訴訟参加(民訴四二−五三)
⇒解説
 
第261条〔担保責任〕
各共有者は他の共有者か分割に因りて得たる物に付き売主と同しく其持分に応して担保の責に任す
*共有物の分割(二五六−二五八)、持分の割合(二五〇)、売主の担保責任(五七二・五六〇−五七一・五五九)、遺産分割の担保責任(九一一−九一四)
⇒解説
 
第262条〔証書の保存〕
分割か結了したるときは各分割者は其受けたる物に関する証書を保存することを要す
□共有者一同又は其中の数人に分割したる物に関する証書は其物の最大部分を受けたる者之を保存することを要す
□前項の場合に於て最大部分を受けたる者なきときは分割者の協議を以て証書の保存者を定む若し協議調はさるときは裁判所之を指定す
□証書の保存者は他の分割者の請求に応して其証書を使用せしむることを要す
*共有物の分割(二五六−二五八)、□証書保存者の指定(非訟八〇)、□訴訟と文書提出義務(民訴二二〇(2)(3))
⇒解説
 
第263条〔共有の性質を有する入会権〕
共有の性質を有する入会権に付ては各地方の慣習に従ふ外本節の規定を適用す
*共有の性質を有しない入会権(二九四)、慣習の効力(法例二)、入会権に登記なし(不登一)、入会林野の整備(入会近代化)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第264条〔準共有〕
本節の規定は数人にて所有権以外の財産権を有する場合に之を準用す但法令に別段の定あるときは此限に在らす
*別段の定め(二八二・二八四・二九二・四二七−四四五・五四四・六七〇−六七六、商二〇三・三一八2、有二二、鉱四四、漁三二・三三、特許三三3・三八・七三・七七5・九四6、実用新案一九3、意匠三六、商標三五、著六四・六五・一一七・附則一〇)、本条の適用除外(区分所有二四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第4章 地上権
第265条〔地上権の内容〕
地上権者は他人の土地に於て工作物又は竹木を所有する為め其土地を使用する権利を有す
*法定地上権(三八八、民執八一、立木五、税徴一二七)、民法施行前の地上権(民施三六・四四)、推定地上権(地上権一)、地上権の登記(不登一(2)・一一一)、地上権の対抗要件(一七七、地上権二、借地借家一〇、罹災都市一〇・二五ノ二)、建物所有を目的とする地上権(借地借家二(1)、罹災都市一)、地上権の設定・移転の制限(農地三・五)、地上権に関する規定の準用(採石法四3)、自己借地権(借地借家一五)
⇒解説
 
第266条〔地代支払義務〕
地上権者か土地の所有者に定期の地代を払ふへきときは第二百七十四条乃至第二百七十六条〔小作料〕の規定を準用す
□此他地代に付ては賃貸借に関する規定を準用す
*□地代の登記(不登一一一)、裁判所による地代の決定(三八八但、立木五)、地代に関する規定(三八八但、借地借家一一、罹災都市一七・二五ノ二、土改六〇−六二・九二・一〇四・一〇七、土区一一三、農地二一−二四の三)、地代と先取特権(三一二−三一六、借地借家一二)、□賃貸借に関する規定(六一一・六一四・三一二−三一六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第267条〔相隣関係の規定の準用〕
第二百九条乃至第二百三十八条〔相隣関係〕の規定は地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間に之を準用す但第二百二十九条〔境界線上の界標などの共有推定〕の推定は地上権設定後に為したる工事に付てのみ之を地上権者に準用す
 
第268条〔地上権の存続期間〕
設定行為を以て地上権の存続期間を定めさりし場合に於て別段の慣習なきときは地上権者は何時にても其権利を□棄することができる(ことを得)但地代を払ふへきときは一年前に予告を為し又は未た期限の至らさる一年分の地代を払ふことを要す
□地上権者か前項の規定に依りて其権利を□棄せさるときは裁判所は当事者の請求に因り二十年以上五十年以下の範囲内に於て工作物又は竹木の種類及ひ状況其他地上権設定の当時の事情を斟酌して其存続期間を定む
*地上権の存続期間(借地借家三−九、罹災都市一一・二五ノ二)、民法施行前の地上権の存続期間(民施四四)、裁判所による期間の決定(立木五)、地上権の放棄(三九八、立木八、土改六一、土区一一四)、慣習の効力(法例二)、存続期間の登記(不登一一一)
⇒解説
 
第269条〔収去権・買取権〕
地上権者は其権利消滅の時土地を原状に復して其工作物及ひ竹木を収去することができる(ことを得)但土地の所有者か時価を提供して之を買取るへき旨を通知したるときは地上権者は正当の理由なくして之を拒むことができない(ことを得す)
□前項の規定に異なりたる慣習あるときは其慣習に従ふ
*その他の収去権(二七九・五九八・六一六)、借地人の建物買取請求権(借地借家一三・一四)、□慣習の効力(法例二)
⇒解説
 
第269条の2〔地下・空間を目的とする地上権〕
地下又は空間は上下の範囲を定め工作物を所有する為め之を地上権の目的と為すことができる(ことを得)此場合に於ては設定行為を以て地上権の行使の為めに土地の使用に制限を加ふることができる(ことを得)
□前項の地上権は第三者が土地の使用又は収益を為す権利を有する場合に於ても其権利又は之を目的とする権利を有する総ての者の承諾あるときは之を設定することができる(ことを得)此場合に於ては土地の使用又は収益を為す権利を有する者は其地上権の行使を妨ぐることができない(を得ず)
〔昭四一法九三本条追加〕
*地下・空間を目的とする地上権の登記手続(不登一一一2)、本条の不準用(採石法四3)、農地の場合(農地三2但)、土地の使用または収益をなす権利(地上権=二六五、永小作権=二七〇、地役権=二八〇、使用借権=五九三、賃借権=六〇一等)
⇒解説
 
第5章 永小作権
第270条〔永小作権の内容〕
永小作人は小作料を払ひて他人の土地に耕作又は牧畜を為す権利を有す
*小作料(二七四−二七七、土改六〇−六二・九二・一〇四・一〇七、土区一一三、農地二9・二一−二四)、民法施行前の永小作権(民施三六・四七)、永小作権の登記(不登一(3)・一一二)、永小作権の対抗要件(一七七)、永小作権の設定・移転等に関する制限(農地三・五・一九・二五・三二)、小作関係の調停(民調二五−三〇)
⇒解説
 
第271条〔永小作人の土地使用の制限〕
永小作人は土地に永久の損害を生すへき変更を加ふることができない(ことを得す)
 
第272条〔永小作権の譲渡・小作地の賃貸〕
永小作人は其権利を他人に譲渡し又は其権利の存続期間内に於て耕作若くは牧畜の為め土地を賃貸することができる(ことを得)但設定行為を以て之を禁したるときは此限に在らす
*譲渡の制限(農地三・五)、但書の登記(不登一一二)
⇒解説
 
第273条〔賃貸借の規定の準用〕
永小作人の義務に付ては本章の規定及ひ設定行為を以て定めたるものの外賃貸借に関する規定を準用す
*賃貸借に関する規定(六〇六2・六一一−六一六・六一七2・六二〇・六二二・三一二−三一六)
⇒解説
 
第274条〔小作料の減免〕
永小作人は不可抗力に因り収益に付き損失を受けたるときと雖も小作料の免除又は減額を請求することができない(ことを得す)
*賃貸借の場合(六〇九−六一一)、小作料の減額請求(農地二四、土改六〇、土区一一三)
⇒解説
 
第275条〔永小作権の放棄〕
永小作人か不可抗力に因り引続き三年以上全く収益を得す又は五年以上小作料より少き収益を得たるときは其権利を□棄することができる(ことを得)
*永小作権の放棄(土改六一、土区一一四)、賃貸借の場合(六一〇)、特則(三九八)
⇒解説
 
第276条〔永小作権の消滅請求〕
永小作人か引続き二年以上小作料の支払を怠り又は破産の宣告を受けたるときは地主は永小作権の消滅を請求することができる(ことを得)
*破産宣告(破一二六−一二九)、賃借人の破産の場合(六二一)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第277条〔慣習の効力〕
前六条の規定に異なりたる慣習あるときは其慣習に従ふ
*慣習の効力(法例二)
⇒解説
 
第278条〔永小作権の存続期間〕
永小作権の存続期間は二十年以上五十年以下とす若し五十年より長き期間を以て永小作権を設定したるときは其期間は之を五十年に短縮す
□永小作権の設定は之を更新することができる(ことを得)但其期間は更新の時より五十年を超ゆることができない(ことを得す)
□設定行為を以て永小作権の存続期間を定めさりしときは其期間は別段の慣習ある場合を除く外之を三十年とす
*民法施行前からのもの(民施四七)、存続期間の登記(不登一一二)、賃借権の存続期間(六〇四)、□慣習の効力(法例二)
⇒解説
 
第279条〔収去権・買取権〕
第二百六十九条〔地上権における収去権・買取権〕の規定は永小作権に之を準用す
 
第6章 地役権
第280条〔地役権の内容〕
地役権者は設定行為を以て定めたる目的に従ひ他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有す但第三章第一節中の公の秩序に関する規定に違反せさることを要す
*法定地役権(農地五四)、地役権の設定の請求(土改六三3・六四、土区一一五・一一七)、公の秩序に関する規定(二〇六−二三八)、地役権の登記(不登一(4)・八一ノ四・一一二ノ二−一一四ノ二)、地役権の対価(土改六〇・六二・九二)、地役権の変更・消滅(二八二・二八七・二九三、土改六一・六三2・六四)、利用権(農地二六)、使用権(森林五〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第281条〔地役権の付従性〕
地役権は要役地の所有権の従として之と共に移転し又は要役地の上に存する他の権利の目的たるものとす但設定行為に別段の定あるときは此限に在らす
□地役権は要役地より分離して之を譲渡し又は他の権利の目的と為すことができない(ことを得す)
*本条の準用(工抵一六2)、□別段の定めの登記(不登一一三1)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第282条〔地役権の不可分性(一)〕
土地の共有者の一人は其持分に付き其土地の為めに又は其土地の上に存する地役権を消滅せしむることができない(ことを得す)
□土地の分割又は其一部の譲渡の場合に於ては地役権は其各部の為めに又は其各部の上に存す但地役権か其性質に因り土地の一部のみに関するときは此限に在らす
*共有(二四九−二六二)、地役権の不可分性(取得時効に関する=二八四、消滅時効に関する=二九二)
⇒解説
 
第283条〔地役権の時効取得〕
地役権は継続且表現のものに限り時効に因りて之を取得することができる(ことを得)
*地役権の時効取得(一六三・二八四)、占有継続の推定(一八六2・二〇五)、継続地役権の消滅時効(二九一)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第284条〔地役権の不可分性(二)〕
共有者の一人か時効に因りて地役権を取得したるときは他の共有者も亦之を取得す
□共有者に対する時効中断は地役権を行使する各共有者に対して之を為すに非されは其効力を生せす
□地役権を行使する共有者数人ある場合に於て其一人に対して時効停止の原因あるも時効は各共有者の為めに進行す
*共有(二四九−二六二)、地役権の不可分性(消滅等に関する=二八二、消滅時効に関する=二九二)、□地役権の時効取得(一六三・二八三)、□取得時効の中断(一四七・一四八・一五七・一六四・一六五)、□時効停止(一五八−一六一)
⇒解説
 
第285条〔用水地役権〕
用水地役権の承役地に於て水か要役地及ひ承役地の需要の為めに不足なるときは其各地の需要に応し先つ之を家用に供し其残余を他の用に供するものとす但設定行為に別段の定あるときは此限に在らす
□同一の承役地の上に数個の用水地役権を設定したるときは後の地役権者は前の地役権者の水の使用を妨くることができない(ことを得す)
*□別段の定めの登記(不登一一三1)、□権利の順位(不登六)
⇒解説
 
第286条〔承役地所有者の積極的義務〕
設定行為又は特別契約に因り承役地の所有者か其費用を以て地役権の行使の為めに工作物を設け又は其修繕を為す義務を負担したるときは其義務は承役地の所有者の特定承継人も亦之を負担す
*工作物の使用(二八八)、委棄による義務の免脱(二八七)、本条の定めの登記(不登一一三)
⇒解説
 
第287条〔委棄による義務の免脱〕
承役地の所有者は何時にても地役権に必要なる土地の部分の所有権を地役権者に委棄して前条の負担を免るることができる(ことを得)
*委棄の結果(混同=一七九1)
⇒解説
 
第288条〔工作物の共同使用〕
承役地の所有者は地役権の行使を妨けさる範囲内に於て其行使の為めに承役地の上に設けたる工作物を使用することができる(ことを得)
□前項の場合に於ては承役地の所有者は其利益を受くる割合に応して工作物の設置及ひ保存の費用を分担することを要す
*承役地所有者の工作物設置・修繕義務(二八六)、通水用工作物の使用(二二一)
⇒解説
 
第289条〔承役地の時効取得による地役権の消滅〕
承役地の占有者か取得時効に必要なる条件を具備せる占有を為したるときは地役権は之に因りて消滅す
*取得時効(一六二・一六三)、消滅時効による消滅(一六七2・二九一・二九三)
⇒解説
 
第290条〔地役権消滅時効の中断〕
前条の消滅時効は地役権者か其権利を行使するに因りて中断す
*一般の時効中断(一四七)
⇒解説
 
第291条〔消滅時効期間の起算点〕
第百六十七条第二項に規定せる消滅時効の期間は不継続地役権に付ては最後の行使の時より之を起算し継続地役権に付ては其行使を妨くへき事実の生したる時より之を起算す
*消滅時効の起算点(一六六)、継続地役権(二八三)
⇒解説
 
第292条〔地役権の不可分性(三)〕
要役地か数人の共有に属する場合に於て其一人の為めに時効の中断又は停止あるときは其中断又は停止は他の共有者の為めにも其効力を生す
*共有(二四九−二六二)、一般の消滅時効の中断(一四七)、地役権の消滅時効の中断(二九〇)、時効の停止(一五八−一六一)、地役権の不可分性(消滅等に関する=二八二、取得時効に関する=二八四)
⇒解説
 
第293条〔地役権の一部の時効消滅〕
地役権者か其権利の一部を行使せさるときは其部分のみ時効に因りて消滅す
*地役権の時効消滅(一六七2・二八九・二九一・二九二)
⇒解説
 
第294条〔共有の性質を有しない入会権〕
共有の性質を有せさる入会権に付ては各地方の慣習に従ふ外本章の規定を準用す
*共有の性質を有する入会権(二六三)、慣習の効力(法例二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第7章 留置権
第295条〔留置権の意義〕
他人の物の占有者か其物に関して生したる債権を有するときは其債権の弁済を受くるまて其物を留置することができる(ことを得)但其債権か弁済期に在らさるときは此限に在らす
□前項の規定は占有か不法行為に因りて始まりたる場合には之を適用せす
*□物(八五・八六)、商事留置権(商五一・五二一・五五七・五六二・五八九・七五三)、登記事項でない(不登一)、留置権の留置的効力(民執五九4,5・一八八・一二四)、留置権者の競売権(民執一九五・一八一以下)、商事留置権以外別除権なし(破九三)、商事留置権は更生担保権となる(会更一二三)、留置権者の差押換請求(税徴五〇)、留置権の優先(税徴二一、地税一四の一五)、同時履行の抗弁権(五三三)、□不法行為(七〇九)、占有の不法(一八六1・一八七2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第296条〔留置権の不可分性〕
留置権者は債権の全部の弁済を受くるまては留置物の全部に付き其権利を行ふことができる(ことを得)
*本条の準用(三〇五・三五〇・三七二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第297条〔果実から優先弁済を受ける権利〕
留置権者は留置物より生する果実を収取し他の債権者に先ちて之を其債権の弁済に充当することができる(ことを得)
□前項の果実は先つ之を債権の利息に充当し尚ほ余剰あるときは之を元本に充当することを要す
*果実(八八・八九)、質権への準用(三五〇)、□弁済充当(四九一)
⇒解説
 
第298条〔留置物の善管義務〕
留置権者は善良なる管理者の注意を以て留置物を占有することを要す
□留置権者は債務者の承諾なくして留置物の使用若くは賃貸を為し又は之を担保に供することができない(ことを得す)但其物の保存に必要なる使用を為すは此限に在らす
□留置権者か前二項の規定に違反したるときは債務者は留置権の消滅を請求することができる(ことを得)
*質権への準用(三五〇)、□善管義務(四〇〇・六四四・六七一・八五二・八六九・一〇一二)、□承諾を得た賃貸・質入(三〇二)、質権の場合(三四八・三五六)、□留置権の消滅(三〇一・三〇二、破九三2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第299条〔留置権者の費用償還請求権〕
留置権者か留置物に付き必要費を出たしたるときは所有者をして其償還を為さしむることができる(ことを得)
□留置権者か留置物に付き有益費を出たしたるときは其価格の増加か現存する場合に限り所有者の選択に従ひ其費したる金額又は増価額を償還せしむることができる(ことを得)但裁判所は所有者の請求に因り之に相当の期限を許与することができる(ことを得)
*質権への準用(三五〇)、□必要費(一九六1・三九一・五八三2・五九五・六〇八1・六五〇1・九九三)、□有益費(一九六2・三九一・五八三2・五九五・六〇八2・七〇二1・九九三)、期限の許与の効果(二九五1但)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第300条〔被担保債権の消滅時効〕
留置権の行使は債権の消滅時効の進行を妨けす
*質権への準用(三五〇)、債権の消滅時効(一六六−一七四ノ二)、時効の中断事由(一四七)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第301条〔留置権の消滅〕
債務者は相当の担保を供して留置権の消滅を請求することができる(ことを得)
*留置権の消滅(二九八3・三〇二、破九三2)、商事留置権の消滅請求(会更一六一ノ二)
⇒解説
 
第302条〔同前〕
留置権は占有の喪失に因りて消滅す但第二百九十八条第二項の規定に依り賃貸又は質入を為したる場合は此限に在らす
*占有の喪失(二〇三)、占有の回復(二〇〇、質権の場合=三五三)
⇒解説
 
第8章 先取特権
第1節 総則
第303条〔先取特権の意義〕
先取特権者は本法其他の法律の規定に従ひ其債務者の財産に付き他の債権者に先ちて自己の債権の弁済を受くる権利を有す
*民法施行前の先取特権(民施四八)、他の法律による先取特権(商二九五・七〇四・八一〇・八四二−八四七・八四九、国際海運一九、区分所有七・六六、立木先取、農動産三−一一、借地借家一二、罹災都市八、税徴八、地税一四、地自二三一の三3、土改三九7、健保一一ノ三、厚年金八八、労保徴二八等)、先取特権の登記(三三六−三四〇、不登一(5))、競売権(民執一八一1・一八九・一九〇・一九三1)、優先弁済権(民執五一1・五九1・八七1・一二一・一三三・一五四1・一八八・一八九・一九二・一九三2、破三九・九二)、更生担保権(会更一二三−一二四の二)
⇒解説
 
第304条〔物上代位〕
先取特権は其目的物の売却、賃貸、滅失又は毀損に因りて債務者か受くへき金銭其他の物に対しても之を行ふことができる(ことを得)但先取特権者は其払渡又は引渡前に差押を為すことを要す
□債務者か先取特権の目的物の上に設定したる物権の対価に付き亦同し
*本条の準用(三五〇・三七二・九四六・九五〇2)、同旨の規定(自抵八、航抵八、建機抵一二)、□売却代金(五五五)、賃貸料(六〇一)、不法行為による損害賠償(七〇九)、保険金(商六二九)、補償金・清算金等についての特別の定め(仮登記担保四1、土収一〇四、農地五二3、土改一〇六2・一〇七・一二三、土区一一二、森林三七・六四、鉱九八、採石法二五)、差押え(民執一九三)、□地代・永小作料(二六六・二七〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第305条〔不可分性〕
第二百九十六条〔留置権の不可分性〕の規定は先取特権に之を準用す
 
第2節 先取特権の種類
第1款 一般の先取特権
第306条〔一般の先取特権を有する債権〕
左に掲けたる原因より生したる債権を有する者は債務者の総財産の上に先取特権を有す
一 共益の費用
二 雇人の給料
三 葬式の費用
四 日用品の供給
〔昭二四法一一五本条改正〕
*他の法律による一般の先取特権(税徴八、地税一四、地自二三一の三3、土改三九7、労保徴二八、厚年金八八、健保一一ノ三、国健保八〇4、自賠八一、商二九五、有四六2、電源開発促進法二五等)、一般の先取特権の順位(三二九・三三二)、一般の先取特権の効力(三三三・三三五・三三六、民執一八一1・一八九・一九〇・一九三1、破三九)
⇒解説
 
第307条〔共益費用の先取特権〕
共益費用の先取特権は各債権者の共同利益の為めに為したる債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用に付き存在す
□前項の費用中総債権者に有益ならさりしものに付ては先取特権は其費用の為め利益を受けたる債権者に対してのみ存在す
*船舶先取特権の場合(商八四二(1))、保存行為の例(二七・二九・四二三・四二四・七〇二)、清算行為の例(七八・二五八・二六〇、民執四二・一九四)、配当行為の例(民執八四−九二・一三九−一四二・一六六)、破産手続と共益債権(破四七(1)(3))、会社更生手続と共益債権(会更二〇八−二一〇・二一六)
⇒解説
 
第308条〔雇人給料の先取特権〕
雇人給料の先取特権は債務者の雇人か受くへき最後の六个月間の給料に付き存在す
〔昭二四法一一五旧三〇九条繰上・改正〕
*会社使用人の先取特権(商二九五、有四六2)、農工業労役の先取特権(三二四)、船員の先取特権(商八四二(7))、雇人給料債権の短期時効(一七四(1))、雇人給料の免責除外(破三六六ノ一二(3))
⇒解説
⇒判例要旨
 
第309条〔葬式費用の先取特権〕
葬式費用の先取特権は債務者の身分に応して為したる葬式の費用に付き存在す
□前項の先取特権は債務者か其扶養すへき親族の身分に応して為したる葬式の費用に付ても亦存在す
〔昭二二法二二二第二項改正、昭二四法一一五旧三〇八条繰下〕
*扶養すべき親族(八七七・八七八)
⇒解説
 
第310条〔日用品供給の先取特権〕
日用品供給の先取特権は債務者又は其扶養すへき同居の親族及ひ其僕婢の生活に必要なる最後の六个月間の飲食品及ひ薪炭油の供給に付き存在す
〔昭二二法二二二本条改正〕
*扶養すべき親族(八七七・八七八)、日用品供給債権の短期時効(一七三(1))
⇒解説
⇒判例要旨
 
第2款 動産の先取特権
第311条〔動産の先取特権を有する債権〕
左に掲けたる原因より生したる債権を有する者は債務者の特定動産の上に先取特権を有す
一 不動産の賃貸借
二 旅店の宿泊
三 旅客又は荷物の運輸
四 公吏の職務上の過失
五 動産の保存
六 動産の売買
七 種苗又は肥料の供給
八 農工業の労役
*動産(八六2,3)、他の法律による動産の先取特権(商七〇四・八一〇・八四二−八四七、国際海運一九、区分所有七・六六、農動産三−一一、証取九七4、商取三八5・八四・八四ノ二、信託業八、鉱一一八等)、動産の先取特権の順位(三二九2・三三〇・三三二)、動産の先取特権の効力(三三三・三三四、民執一九〇、破九二、会更一二三・一二四)
⇒解説
 
第312条〔不動産賃貸の先取特権〕
不動産賃貸の先取特権は其不動産の借賃其他賃貸借関係より生したる賃借人の債務に付き賃借人の動産の上に存在す
*他の法律による不動産賃貸に関連した先取特権(借地借家一二、罹災都市八、立木先取、立木一〇等)、不動産(八六1)、賃貸借(六〇一−六二二)、善意取得(三一九)、効力(三三三)、本条の地代・小作料への準用(二六六2・二七三)、税債権との関係(税徴二〇1(1)、地税一四の一四1(1))
⇒解説
 
第313条〔同前−目的物の範囲〕
土地の賃貸人の先取特権は賃借地又は其利用の為めにする建物に備附けたる動産、其土地の利用に供したる動産及ひ賃借人の占有に在る其土地の果実の上に存在す
□建物の賃貸人の先取特権は賃借人か其建物に備附けたる動産の上に存在す
*動産(八六2)、果実(八八)、善意取得(三一九)、効力(三三三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第314条〔同前−賃借権の譲渡・転貸の場合〕
賃借権の譲渡又は転貸の場合に於ては賃貸人の先取特権は譲受人又は転借人の動産に及ふ譲渡人又は転貸人か受くへき金額に付き亦同し
*賃借権の譲渡・転貸(六一二・六一三)、善意取得(三一九)、効力(三三三)
⇒解説
 
第315条〔同前−総清算の場合の債権の範囲〕
賃借人の財産の総清算の場合に於ては賃貸人の先取特権は前期、当期及ひ次期の借賃其他の債務及ひ前期並に当期に於て生したる損害の賠償に付てのみ存在す
*総清算(六八−八三・九二二−九三六・九四一−九五〇・九五七、商一一六−一四五・一四七・四一七−四三〇、有六九−七五、破)、借賃の支払時期(六一四)
⇒解説
 
第316条〔同前−敷金ある場合〕
賃貸人か敷金を受取りたる場合に於ては其敷金を以て弁済を受けさる債権の部分に付てのみ先取特権を有す
*敷金(六一九2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第317条〔旅店宿泊の先取特権〕
旅店宿泊の先取特権は旅客、其従者及ひ牛馬の宿泊料並に飲食料に付き其旅店に存する手荷物の上に存在す
*善意取得(三一九)、効力(三三三)、宿泊料の短期時効(一七四(4))
⇒解説
 
第318条〔運輸の先取特権〕
運輸の先取特権は旅客又は荷物の運送賃及ひ附随の費用に付き運送人の手に存する荷物の上に存在す
*善意取得(三一九)、効力(三三三)、運送品と留置権(二九五)、運送賃の短期時効(一七四(3))
⇒解説
 
第319条〔善意取得の準用〕
第百九十二条乃至第百九十五条〔動産の善意取得〕の規定は前七条の先取特権に之を準用す
*本条の準用(区分所有七3・六六)
⇒解説
 
第320条〔公吏保証金の先取特権〕
公吏保証金の先取特権は保証金を供したる公吏の職務上の過失に因りて生したる債権に付き其保証金の上に存在す
*他の法律による保証金等の上の先取特権(証取九七4、商取三八5、信託業八等)、公吏の保証金納付義務(公証一九)、公吏の職務上の過失と国または公共団体の賠償責任(憲一七、国賠一)
⇒解説
 
第321条〔動産保存の先取特権〕
動産保存の先取特権は動産の保存費に付き其動産の上に存在す
□前項の先取特権は動産に関する権利を保存、追認又は実行せしむる為めに要したる費用に付ても亦存在す
*動産保存費の例(一九六・二九九・五九五2・六〇八・六五〇・七〇二・九九三、民執一九二・一三九−一四一)、他の法律による動産保存の先取特権(農動産四1(1)・五、商八四二(1)(2))、効力(三三三)、不動産保存の先取特権(三二六)、保存費と留置権(二九五)
⇒解説
 
第322条〔動産売買の先取特権〕
動産売買の先取特権は動産の代価及ひ其利息に付き其動産の上に存在す
*他の法律による動産売買の先取特権(農動産四1(2)・六、商八四二(8))、利息(四〇四・五七五2)、効力(三三三)、本条の債権の短期時効(一七三(1))
⇒解説
 
第323条〔種苗肥料供給の先取特権〕
種苗肥料供給の先取特権は種苗又は肥料の代価及ひ其利息に付き其種苗又は肥料を用ゐたる後一年内に之を用ゐたる土地より生したる果実の上に存在す
□前項の先取特権は蚕種又は蚕の飼養に供したる桑葉の供給に付き其蚕種又は桑葉より生したる物の上にも亦存在す
*他の法律による種苗肥料供給の先取特権(農動産四(3)(4)・七・八)、利息(四〇四)、果実(八八・八九)、効力(三三三)
⇒解説
 
第324条〔農工業労役の先取特権〕
農工業労役の先取特権は農業の労役者に付ては最後の一年間工業の労役者に付ては最後の三个月間の賃金に付き其労役に因りて生したる果実又は製作物の上に存在す
*効力(三三三)、雇人の給料の先取特権(三〇六(2)・三〇八)、労力者の賃金の短期時効(一七四(2))
⇒解説
 
第3款 不動産の先取特権
第325条〔不動産の先取特権を有する債権〕
左に掲けたる原因より生したる債権を有する者は債務者の特定不動産の上に先取特権を有す
一 不動産の保存
二 不動産の工事
三 不動産の売買
*不動産(八六1)、他の法律による不動産の先取特権(借地借家一二、罹災都市八、立木先取、立木一〇等)、効力保存のための登記(三三七−三四〇、不登一(5)・一一五・一二二−一二八・一三六−一四〇)、不動産の先取特権の順位(三二九2・三三一・三三二)、不動産の先取特権の効力(三三七−三四一、民執一八一1、破九二、会更一二三・一二四)
⇒解説
 
第326条〔不動産保存の先取特権〕
不動産保存の先取特権は不動産の保存費に付き其不動産の上に存在す
□第三百二十一条第二項の規定は前項の場合に之を準用す
*不動産保存費の例(一九六・二九九・三九一・五八三2・五八五・五九五2・六〇八・六五〇・六六五・七〇二・九九三、民執一九二・一三九−一四二)、登記による効力の保存(三三七)、効力(三三九・三四一)、税債権との関係(税徴一九1(1)、地税一四の一三1(1))、動産保存の先取特権(三二一)
⇒解説
 
第327条〔不動産工事の先取特権〕
不動産工事の先取特権は工匠、技師及ひ請負人か債務者の不動産に関して為したる工事の費用に付き其不動産の上に存在す
□前項の先取特権は工事に因りて生したる不動産の増価か現存する場合に限り其増価額に付てのみ存在す
*登記による効力の保存(三三八)、効力(三三九・三四一)、税債権との関係(税徴一九1(2)、地税一四の一三1(2))、本条の債権の短期時効(一七〇(2))
⇒解説
 
第328条〔不動産売買の先取特権〕
不動産売買の先取特権は不動産の代価及ひ其利息に付き其不動産の上に存在す
*利息(四〇四・五七五2)、登記による効力の保存(三四〇)、効力(三四一)、税債権との関係(税徴二〇1(2)、地税一四の一四1(2))、動産売買の先取特権(三二二)
⇒解説
 
第3節 先取特権の順位
第329条〔一般の先取特権の順位〕
一般の先取特権か互に競合する場合に於ては其優先権の順位は第三百六条に掲けたる順序に従ふ
□一般の先取特権と特別の先取特権と競合する場合に於ては特別の先取特権は一般の先取特権に先つ但共益費用の先取特権は其利益を受けたる総債権者に対して優先の効力を有す
*同一順位の先取特権(三三二)、□他の法律により三〇六条の先取特権に優先する一般の先取特権(最優先順位=税徴八・二〇1(4)、地税一四・一四の一四1(4)、国税・地方税に次ぐ=自賠八一、地自二三一の三3、土改三九7、労保徴二八、厚年金八八、健保一一ノ三、国健保八〇4等)、他の法律により三〇六条と同列または劣後とされる一般の先取特権(三〇六条一項と同列またはそれに次ぐ=区分所有七・六六、商二九五、有四六2、三〇六条に次ぐ=電源開発促進法二五2、日本道路公団法二六5、電気事業法四〇2等)、□特別の先取特権(三一一・三二五)、共益費用の先取特権(三〇六(1))
⇒解説
 
第330条〔動産の先取特権の順位〕
同一の動産に付き特別の先取特権か互に競合する場合に於ては其優先権の順位左の如し
第一 不動産賃貸、旅店宿泊及ひ運輸の先取特権
第二 動産保存の先取特権但数人の保存者ありたるときは後の保存者は前の保存者に先つ
第三 動産売買、種苗肥料供給及ひ農工業労役の先取特権
□第一順位の先取特権者か債権取得の当時第二又は第三の順位の先取特権者あることを知りたるときは之に対して優先権を行ふことができない(ことを得す)第一順位者の為めに物を保存したる者に対し亦同し
□果実に関しては第一の順位は農業の労役者に第二の順位は種苗又は肥料の供給者に第三の順位は土地の賃貸人に属す
*動産の先取特権(三一一)、同一順位の先取特権(三三二)、他の法律による動産の先取特権の順位(他の先取特権に優先=商八四五、国際海運一九、民法と同列=農動産一一)、動産質権と競合する場合の順位(三三四)、特殊の抵当権と競合する場合の順位(自抵一一、建機抵一五等)、□果実(八八)
⇒解説
 
第331条〔不動産の先取特権の順位〕
同一の不動産に付き特別の先取特権か互に競合する場合に於ては其優先権の順位は第三百二十五条に掲けたる順序に従ふ
□同一の不動産に付き逐次の売買ありたるときは売主相互間の優先権の順位は時の前後に依る
*不動産の先取特権(三二五)、同一順位の先取特権(三三二)、他の法律による不動産の先取特権の順位(借地借家一二3、罹災都市八3、立木先取2等)、税債権との関係(税徴一九1(1)−(3)・二〇1(2)(3)、地税一四の一三1(1)−(3)・一四の一四1(2)(3))
⇒解説
 
第332条〔同一順位の先取特権の効力〕
同一の目的物に付き同一順位の先取特権者数人あるときは各其債権額の割合に応して弁済を受く
 
第4節 先取特権の効力
第333条〔第三取得者への追及力〕
先取特権は債務者か其動産を第三取得者に引渡したる後は其動産に付き之を行ふことができない(ことを得す)
*動産(八六2,3)、引渡し(一八二−一八四)、積荷上の先取特権と積荷の引渡し(商八一三)、目的物の対価と物上代位(三〇四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第334条〔動産質権との順位〕
先取特権と動産質権と競合する場合に於ては動産質権者は第三百三十条に掲けたる第一順位の先取特権者と同一の権利を有す
*動産質権(三五二−三五五)
⇒解説
 
第335条〔一般の先取特権の効力〕
一般の先取特権者は先つ不動産以外の財産に付き弁済を受け尚ほ不足あるに非されは不動産に付き弁済を受くることができない(ことを得す)
□不動産に付ては先つ特別担保の目的たらさるものに付き弁済を受くることを要す
□一般の先取特権者か前二項の規定に従ひて配当に加入することを怠りたるときは其配当加入に因りて受くへかりしものの限度に於ては登記を為したる第三者に対して其先取特権を行ふことができない(ことを得す)
□前三項の規定は不動産以外の財産の代価に先ちて不動産の代価を配当し又は他の不動産の代価に先ちて特別担保の目的たる不動産の代価を配当すへき場合には之を適用せす
*一般の先取特権(三〇六)、不動産(八六1)、□特別担保(三五六・三六九)
⇒解説
 
第336条〔一般先取特権の対抗力〕
一般の先取特権は不動産に付き登記を為ささるも之を以て特別担保を有せさる債権者に対抗することを妨けす但登記を為したる第三者に対しては此限に在らす
*一般の先取特権(三〇六)、不動産(八六1)、先取特権と登記(一七七・三三七−三四〇、不登一(5)・九三ノ一五・一一五・一一八−一二〇・一二二−一二八・一四〇ノ二・一四〇ノ三)、特別担保(三二五・三五六・三六九)
⇒解説
 
第337条〔不動産保存の先取特権の保存〕
不動産保存の先取特権は保存行為完了の後直ちに登記を為すに因りて其効力を保存す
*不動産保存の先取特権(三二五(1)・三二六)、登記(一七七、不登一(5)・一一五・一一八・一一九・一二〇・一二二−一二八)、抵当権に対する優先効(三三九)、抵当権の規定の準用(三四一)
⇒解説
 
第338条〔不動産工事の先取特権の保存〕
不動産工事の先取特権は工事を始むる前に其費用の予算額を登記するに因りて其効力を保存す但工事の費用か予算額を超ゆるときは先取特権は其超過額に付ては存在せす
□工事に因りて生したる不動産の増価額は配当加入の時裁判所に於て選任したる鑑定人をして之を評価せしむることを要す
*不動産工事の先取特権(三二五(2)・三二七)、登記(一七七、不登一(5)・一一五・一一八・一一九・一二〇・一二二−一二八・一三六−一四〇)、抵当権に対する優先効(三三九)、抵当権の規定の準用(三四一)
⇒解説
 
第339条〔抵当権に対する優先効〕
前二条の規定に従ひて登記したる先取特権は抵当権に先ちて之を行ふことができる(ことを得)
*抵当権(三六九)、不動産質権に対しても優先(三六一)
⇒解説
 
第340条〔不動産売買の先取特権の保存〕
不動産売買の先取特権は売買契約と同時に未た代価又は其利息の弁済あらさる旨を登記するに因りて其効力を保存す
*不動産売買の先取特権(三二五(3)・三二八)、売買契約(五五五)、登記(一七七、不登一(5)・一一五・一一八・一一九・一二〇・一二二・一二八)
⇒解説
 
第341条〔抵当権の規定の準用〕
先取特権の効力に付ては本節に定めたるものの外抵当権に関する規定を準用す
*準用される規定(三七〇・三七一・三七四・三七七−三八八・三九〇・三九一・三九四・三九五等)
⇒解説
 
第9章 質権
第1節 総則
第342条〔質権の意義〕
質権者は其債権の担保として債務者又は第三者より受取りたる物を占有し且其物に付き他の債権者に先ちて自己の債権の弁済を受くる権利を有す
*物(八五・八六)、占有(一八〇−一八二・一八四・三四四・三四五)、不動産質権の登記(一七七、不登一(6)・一一六・一一八・一一九・一二〇・一二二−一二八)、質権の効力(三四六−三五一・三五四・三五六・三六一・三六七、民執一八一1・一八九・一九〇・一九三1・五九1,4・一二四・八七1・一三三、破九二、会更一二三・一二四)、特別法(公益質屋法、質屋)、税債権との関係(税徴一五・一七・一八・二二、地税一四の九・一四の一一・一四の一二・一四の一六)、質権設定の制限(農地三)
⇒解説
 
第343条〔質権の目的物〕
質権は譲渡すことを得さる物を以て其目的と為すことができない(ことを得す)
*譲渡できない物(通貨一、紙幣一、麻薬一二)、質権の目的となしえない物(商八五〇・八五一、自抵二〇、航抵二三、建機抵二五、工抵一四2、鉱一三・七二、漁二三、特許三三2)、質権設定が制約される物(農地三・五、宗法二三(1))
⇒解説
 
第344条〔設定契約の要物性〕
質権の設定は債権者に其目的物の引渡を為すに因りて其効力を生す
*物権変動の一般原則(一七六)、引渡し(一八二・一八四・三四五、商二〇七・五七三・五七五・五八四・六〇四・六二〇・六二八・七七六、有二三)
⇒解説
 
第345条〔設定者による代理占有の禁止〕
質権者は質権設定者をして自己に代はりて質物の占有を為さしむることができない(ことを得す)
*要物性(三四四)、占有改定(一八三)、代理占有(一八一・一八四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第346条〔被担保債権の範囲〕
質権は元本、利息、違約金、質権実行の費用、質物保存の費用及ひ債務の不履行又は質物の隠れたる瑕疵に因りて生したる損害の賠償を担保す但設定行為に別段の定あるときは此限に在らす
*利息(四〇四・四〇五・三五八・三五九)、違約金(四二〇3)、質権実行の費用(民執一九四・四二)、質物保存の費用(三五〇・二九九・三五七・三五九)、債務不履行による損害賠償(四一五)、隠れた瑕疵(五七〇・五五九)、別段の定めの登記(不登一一六)、抵当権の場合(三七四)
⇒解説
 
第347条〔留置的効力〕
質権者は前条に掲けたる債権の弁済を受くるまては質物を留置することができる(ことを得)但此権利は之を以て自己に対し優先権を有する債権者に対抗することができない(ことを得す)
*留置(三五〇・二九六)、競売・差押え・滞納処分と留置的効力(民執五九・一二四・一三三・一八八・一九〇、税徴五八)、優先権を有する債権(三三四・三三〇・三五五・三六一・三七三・三三九、税徴八・一五・一七・一八、地税一四・一四の九・一四の一一・一四の一二、地自二三一の三3等)、差押換の請求(税徴五〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第348条〔転質−責任転質〕
質権者は其権利の存続期間内に於て自己の責任を以て質物を転質と為すことができる(ことを得)此場合に於ては転質を為さされは生せさるへき不可抗力に因る損失に付ても亦其責に任す
*特則(電話加入権質に関する臨時特例法四、担社七三)、承諾転質(三五〇・二九八)、転抵当(三七五)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第349条〔流質契約の禁止〕
質権設定者は設定行為又は債務の弁済期前の契約を以て質権者に弁済として質物の所有権を取得せしめ其他法律に定めたる方法に依らすして質物を処分せしむることを約することができない(ことを得す)
*法律に定めた質権実行方法(三五四・三六七、民執一八一・一八八・一九〇・一九三、電話加入権質に関する臨時特例法一〇、公益質屋法一一−一四)、特則(商五一五、質屋一・一七・一九、公益質屋法八−一五)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第350条〔留置権・先取特権の規定の準用〕
第二百九十六条乃至第三百条〔留置権者の権利義務〕及ひ第三百四条〔先取特権による物上代位〕の規定は質権に之を準用す
 
第351条〔物上保証人の求償権〕
他人の債務を担保する為め質権を設定したる者か其債務を弁済し又は質権の実行に因りて質物の所有権を失ひたるときは保証債務に関する規定に従ひ債務者に対して求償権を有す
*保証債務に関する規定(四五九−四六四)、物上保証人の代位弁済(五〇〇・五〇一)、本条の準用(三七二)、同種の規定(自抵九、航抵九、建機抵一三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第2節 動産質
第352条〔対抗要件〕
動産質権者は継続して質物を占有するに非されは其質権を以て第三者に対抗することができない(ことを得す)
*動産(八六2,3)、占有(一八〇・一八一・三四四・三四五)、占有の継続(一八六2・二〇三但)、質物の回収(三五三)、類似規定(商二〇七2)
⇒解説
 
第353条〔質物の回収〕
動産質権者か質物の占有を奪はれたるときは占有回収の訴に依りてのみ其質物を回復することができる(ことを得)
*占有回収の訴え(二〇〇・二〇一3・二〇三但)、対抗要件としての占有継続(三五二)
⇒解説
 
第354条〔質物による簡易な弁済充当〕
動産質権者か其債権の弁済を受けさるときは正当の理由ある場合に限り鑑定人の評価に従ひ質物を以て直ちに弁済に充つることを裁判所に請求することができる(ことを得)此場合に於ては質権者は予め債務者に其請求を通知することを要す
*流質契約の禁止(三四九)、申請手続(非訟八三ノ二・八九)、適用除外(担社八二2)、債権質権者の直接取立権(三六七)
⇒解説
 
第355条〔動産質権の順位〕
数個の債権を担保する為め同一の動産に付き質権を設定したるときは其質権の順位は設定の前後に依る
*動産質権の設定(三四四)、動産物権変動の対抗要件(一七八)
⇒解説
 
第3節 不動産質
第356条〔使用収益権〕
不動産質権者は質権の目的たる不動産の用方に従ひ其使用及ひ収益を為すことができる(ことを得)
*不動産(八六1)、不動産質権の登記(三六一、不登一(6)・一一六・一一九−一二〇・一二二・一二八)、使用収益の原則的不許容(三五〇・二九八2)
⇒解説
 
第357条〔管理費用などの負担〕
不動産質権者は管理の費用を払ひ其他不動産の負担に任す
*質物保存の費用(三五〇・二九九)、不動産の負担(二八六、地税三四二・三四三、砂防法一六・二二等)
⇒解説
 
第358条〔被担保債権の利息〕
不動産質権者は其債権の利息を請求することができない(ことを得す)
*利息(四〇四・四〇五)、特約ある場合の利息と不動産質権の効力(三四六・三六一・三七四)
⇒解説
 
第359条〔特約の効力〕
前三条の規定は設定行為に別段の定あるときは之を適用せす
*特約の登記(不登一一六)
⇒解説
 
第360条〔存続期間〕
不動産質の存続期間は十年を超ゆることができない(ことを得す)若し之より長き期間を以て不動産質を設定したるときは其期間は之を十年に短縮す
□不動産質の設定は之を更新することができる(ことを得)但其期間は更新の時より十年を超ゆることができない(ことを得す)
⇒判例要旨
 
第361条〔抵当権の規定の準用〕
不動産質には本節の規定の外次章の規定を準用す
*準用される規定(三七〇・三七三−三九〇・三九二−三九八ノ二〇)、対抗要件としての登記(一七七・三七三)
⇒解説
 
第4節 権利質
第362条〔権利質の目的〕
質権は財産権を以て其目的と為すことができる(ことを得)
□前項の質権には本節の規定の外前三節の規定を準用す
*権利質の例(商二〇七−二〇九、有二三、手一九、特許九五・九八、実用新案二五、意匠三五、商標三四、著六六・七七、電話加入権質に関する臨時特例法一)、質権の目的となりえない権利(三四三・四六六・五九四・六一二・六二五・八八一、恩給法一一、労基八三2等)、質権設定の禁止(二八一2、商二一〇、鉱一三・七二、漁二三、特許三三2、実用新案一一2、意匠一五2、商標一三2等)、登記(不登一一八)
⇒解説
 
第363条〔要物契約性〕
債権を以て質権の目的と為す場合に於て其債権の証書あるときは質権の設定は其証書の交付を為すに因りて其効力を生す
*質権一般の要物性(三四四)、対抗要件(三六四−三六六)、無記名債権の質入(八六3・三四四)
⇒解説
 
第364条〔指名債権質の対抗要件〕
指名債権を以て質権の目的と為したるときは第四百六十七条の規定に従ひ第三債務者に質権の設定を通知し又は第三債務者か之を承諾するに非されは之を以て第三債務者其他の第三者に対抗することができない(ことを得す)
□前項の規定は株式には之を適用せす
〔平二法六五第二項改正〕
*効力発生要件(三六三)、□特則(国債ニ関スル法律三、社登五)、本項の不適用(記名国債=「民法第三百六十四条第一項ノ規定ハ記名ノ国債ニハ之ヲ適用セズ」)、□株式の質入(商二〇七−二〇九)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第365条〔記名社債質の対抗要件〕
記名の社債を以て質権の目的と為したるときは社債の譲渡に関する規定に従ひ会社の帳簿に質権の設定を記入するに非されは之を以て会社其他の第三者に対抗することができない(ことを得す)
*効力発生要件(三六三)、社債の譲渡に関する規定(商三〇七)、登録社債の特則(社登五2)、無記名社債の質入(八六3・一七八・三四四・三五二)
⇒解説
 
第366条〔指図債権質の対抗要件〕
指図債権を以て質権の目的と為したるときは其証書に質権の設定を裏書するに非されは之を以て第三者に対抗することができない(ことを得す)
*効力発生要件(三六三)、指図債権(商五七四・六〇三・六〇六・七七六、手一一1・一九1・七七1(1))
⇒解説
 
第367条〔債権質権者の直接取立権〕
質権者は質権の目的たる債権を直接に取立つることができる(ことを得)
□債権の目的物か金銭なるときは質権者は自己の債権額に対する部分に限り之を取立つることができる(ことを得)
□右の債権の弁済期か質権者の債権の弁済期前に到来したるときは質権者は第三債務者をして其弁済金額を供託せしむることができる(ことを得)此場合に於ては質権は其供託金の上に存在す
□債権の目的物か金銭に非さるときは質権者は弁済として受けたる物の上に質権を有す
*流質(三四九、商五一五)、債権質権の実行(民執一九三・一四三以下)、□登録株式質権者の支払請求権(商二〇九)、利息の取立て(三五〇・二九七)、□登録株式質への準用(商二〇九2)、供託(四九四−四九八、供託)
⇒解説
 
第368条〔強制執行による質権の実行〕
削除〔昭五四法五〕
 
第10章 抵当権
第1節 総則
第369条〔抵当権の意義〕
抵当権者は債務者又は第三者か占有を移さすして債務の担保に供したる不動産に付き他の債権者に先ちて自己の債権の弁済を受くる権利を有す
地上権及ひ永小作権も亦之を抵当権の目的と為すことができる(ことを得)此場合に於ては本章の規定を準用す
*特別法による抵当権(商八四八、立木二、工抵一四、鉱抵三、鉄道抵当法四、軌道ノ抵当ニ関スル法律一、道路交通事業抵当法九、運河法一三、漁業財団抵当法六、港湾運送事業法二三、観光施設財団抵当法九、鉱一三但、漁二三・二四、自抵三・四、航抵三・四、建機抵五、農動産一二)、抵当権に関する特別法(担社、抵証)、根抵当権に関する特則(三九八ノ二−三九八ノ二二)、抵当権の登記(一七七、不登一(7)・一一七−一三一)、抵当権の効力(三七三−三九五、民執一八一・一八八・五九・八七1、破九二、会更一二三・一二四)、税債権との関係(税徴一六−一八・二二、地税一四の一〇−一四の一二・一四の一六)、□不動産(八六1)、□地上権(二六五−二六九ノ二)、採石権(地上権の規定を準用=採石法四3)、永小作権(二七〇−二七九)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第370条〔抵当権の効力の及ぶ範囲〕
抵当権は抵当地の上に存する建物を除く外其目的たる不動産に附加して之と一体を成したる物に及ふ但設定行為に別段の定あるとき及ひ第四百二十四条の規定に依り債権者か債務者の行為を取消すことができる(ことを得る)場合は此限に在らす
*不動産(八六1)、不動産の附合(二四二)、付加物の例(漁二四1)、工場供用物件(工抵二)、従物(八七2)、地役権(二八一1)、船舶属具(商八四八2)、分離した樹木と抵当権(立木四)、別段の定めの登記(不登一一七)、民法施行前の抵当権(民施四九)、同種の規定(自抵六、建機抵一〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第371条〔果実に対する効力〕
前条の規定は果実には之を適用せす但抵当不動産の差押ありたる後又は第三取得者か第三百八十一条〔滌除権者への実行の通知〕の通知を受けたる後は此限に在らす
□第三取得者か第三百八十一条の通知を受けたるときは其後一年内に抵当不動産の差押ありたる場合に限り前項但書の規定を適用す
*果実(八八1)、差押え(民執四五・四六・一八八)、本条の準用(工抵一六1、鉱抵三)、類似規定(立木三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第372条〔他の担保物権の規定の準用〕
第二百九十六条〔留置権の不可分性〕、第三百四条〔先取特権による物上代位〕及ひ第三百五十一条〔質権における物上保証人の求償権〕の規定は抵当権に之を準用す
⇒判例要旨
 
第2節 抵当権の効力
第373条〔抵当権の順位とその変更〕
数個の債権を担保する為め同一の不動産に付き抵当権を設定したるときは其抵当権の順位は登記の前後に依る
□抵当権の順位は各抵当権者の合意に依りて之を変更することができる(ことを得)但利害の関係を有する者あるときは其承諾を得ることを要す
□前項の順位の変更は其登記を為すに非ざれば其効力を生ぜず
〔昭四六法九九第二項・三項追加〕
*□登記の前後(不登六・四七・四八)、先取特権と抵当権の順位(三三九・三四一)、同種の規定(自抵一〇、航抵一〇、建機抵一四)、□利害関係人の例(三六四・三七五)、企業担保権への準用(企担九)、順位の処分(三七五)、□順位変更の登記(不登一一九ノ二)
⇒解説
 
第374条〔被担保債権の範囲〕
抵当権者か利息其他の定期金を請求する権利を有するときは其満期と為りたる最後の二年分に付てのみ其抵当権を行ふことができる(ことを得)但其以前の定期金に付ても満期後特別の登記を為したるときは其登記の時より之を行ふことを妨けす
□前項の規定は抵当権者か債務の不履行に因りて生したる損害の賠償を請求する権利を有する場合に於て其最後の二年分に付ても亦之を適用す但利息其他の定期金と通して二年分を超ゆることができない(ことを得す)
〔明三四法三六第二項追加〕
*民法施行前の抵当権(民施五〇)、同種の規定(自抵一二、航抵一二、建機抵一六)、根抵当権における特則(三九八ノ三)、□法定利率(四〇四、商五一四)、利息の登記(不登一一七)、利息延滞の特則(抵証二六)、□金銭債務不履行の損害賠償(四一九)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第375条〔抵当権の処分〕
抵当権者は其抵当権を以て他の債権の担保と為し又同一の債務者に対する他の債権者の利益の為め其抵当権若くは其順位を譲渡し又は之を□棄することができる(ことを得)
□前項の場合に於て抵当権者か数人の為めに其抵当権の処分を為したるときは其処分の利益を受くる者の権利の順位は抵当権の登記に附記を為したる前後に依る
*特則(三九八ノ一一−三九八ノ一五、抵証一四、担社七三・七五ノ二)、□抵当権の順位(三七三)、抵当権処分の登記(不登一一九ノ三)、順位の変更(三七三2,3)、□附記登記と順位(不登七・五三・一三四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第376条〔抵当権処分の対抗要件〕
前条の場合に於ては第四百六十七条の規定に従ひ主たる債務者に抵当権の処分を通知し又は其債務者か之を承諾するに非されは之を以て其債務者、保証人、抵当権設定者及ひ其承継人に対抗することができない(ことを得す)
□主たる債務者か前項の通知を受け又は承諾を為したるときは抵当権の処分の利益を受くる者の承諾なくして為したる弁済は之を以て其受益者に対抗することができない(ことを得す)
*□保証人(四四六)、抵当権設定者(三七二・三五一)、□弁済(四七四−五〇四)、根抵当権における特則(三九八ノ一一2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第377条〔代価弁済〕
抵当不動産に付き所有権又は地上権を買受けたる第三者か抵当権者の請求に応して之に其代価を弁済したるときは抵当権は其第三者の為めに消滅す
*所有権(二〇六)、地上権(二六五)、第三取得者の滌除権(三七八−三八六)、第三取得者の任意の弁済(四七四・五〇〇−五〇四)、同種の規定(自抵一三、航抵一五、建機抵一九)
⇒解説
 
第378条〔滌除〕
抵当不動産に付き所有権地上権又は永小作権を取得したる第三者は第三百八十二条乃至第三百八十四条の規定に従ひ抵当権者に提供して其承諾を得たる金額を払渡し又は之を供託して抵当権を滌除することができる(ことを得)
*所有権(二〇六)、地上権(二六五)、永小作権(二七〇)、滌除金額(三八三(3))、供託(四九四・四九五、供託)、買主の滌除と代金支払拒絶権(五七七)、滌除の排斥(抵証二四、農動産一二2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第379条〔滌除をなしえない者〕
主たる債務者、保証人及ひ其承継人は抵当権の滌除を為すことができない(ことを得す)
*保証人(四四六)
⇒解説
 
第380条〔同前〕
停止条件附第三取得者は条件の成否未定の間は抵当権の滌除を為すことができない(ことを得す)
*停止条件付権利(一二七1)
⇒解説
 
第381条〔滌除権者への抵当権実行の通知〕
抵当権者か其抵当権を実行せんと欲するときは予め第三百七十八条に掲けたる第三取得者に其旨を通知することを要す
*抵当権の実行(民執一八一・一八八)、滌除の時期(三八二)、抵当物件の競売請求(三八七)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第382条〔滌除の時期〕
第三取得者は前条の通知を受くるまては何時にても抵当権の滌除を為すことができる(ことを得)
□第三取得者か前条の通知を受けたるときは一个月内に次条の送達を為すに非されは抵当権の滌除を為すことができない(ことを得す)
□前条の通知ありたる後に第三百七十八条に掲けたる権利を取得したる第三者は前項の第三取得者か滌除を為すことができる(ことを得)る期間内に限り之を為すことができる(ことを得)
 
第383条〔滌除の手続〕
第三取得者か抵当権を滌除せんと欲するときは登記を為したる各債権者に左の書面を送達することを要す
一 取得の原因、年月日、譲渡人及ひ取得者の氏名、住所、抵当不動産の性質、所在、代価其他取得者の負担を記載したる書面
二 抵当不動産に関する登記簿の謄本但既に消滅したる権利に関する登記は之を掲くることを要せす
三 債権者か一个月内に次条の規定に従ひ増価競売を請求せさるときは第三取得者は第一号に掲けたる代価又は特に指定したる金額を債権の順位に従ひて弁済又は供託すへき旨を記載したる書面
*送達(九七・三八四1)、住所(二一)、登記簿謄本(不登二一)、増価競売(三八四−三八六、民執一八五−一八八)、滌除金額(三七八)、供託(四九四・四九五)
⇒解説
 
第384条〔増価競売の請求〕
債権者か前条の送達を受けたる後一个月内に増価競売を請求せさるときは第三取得者の提供を承諾したるものと看做す
□増価競売は若し競売に於て第三取得者か提供したる金額より十分の一以上高価に抵当不動産を売却すること能はさるときは十分の一の増価を以て自ら其不動産を買受くへき旨を附言し第三取得者に対して之を請求することを要す
〔昭五四法五第三項削除〕
*増価競売(三八五・三八六、民執一八五−一八八)
⇒解説
 
第385条〔増価競売の通知〕
債権者か増価競売を請求するときは前条の期間内に債務者及ひ抵当不動産の譲渡人に之を通知することを要す
*増価競売(三八四・三八六、民執一八五−一八八)
⇒解説
 
第386条〔増価競売請求の取消し〕
増価競売を請求したる債権者は登記を為したる他の債権者の承諾を得るに非されは其請求を取消すことができない(ことを得す)
*増価競売(三八四・三八五、民執一八五−一八八)
⇒解説
 
第387条〔抵当権者の競売請求権〕
抵当権者か第三百八十二条に定めたる期間内に第三取得者より債務の弁済又は滌除の通知を受けさるときは抵当不動産の競売を請求することができる(ことを得)
*競売の請求(民執一八一・一八八)
⇒解説
 
第388条〔法定地上権〕
土地及ひ其上に存する建物か同一の所有者に属する場合に於て其土地又は建物のみを抵当と為したるときは抵当権設定者は競売の場合に付き地上権を設定したるものと看做す但地代は当事者の請求に因り裁判所之を定む
*地上権(二六五−二六九ノ二)、競売の場合(民執一八一・一八八・四五−九二)、本条の準用(工抵一六1、鉱抵三)、特別法による法定地上権(立木五、民執八一、税徴一二七)、法定借地権(立木六・七、仮登記担保一〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第389条〔抵当地上の建物の競売権〕
抵当権設定の後其設定者か抵当地に建物を築造したるときは抵当権者は土地と共に之を競売することができる(ことを得)但其優先権は土地の代価に付てのみ之を行ふことができる(ことを得)
*土地の抵当権と建物(三七〇)、競売(民執一八一・一八八)、本条の準用(工抵一六1、鉱抵三)
⇒解説
 
第390条〔第三取得者の競買権〕
第三取得者は競買人と為ることができる(ことを得)
*第三取得者(三七七・三七八・三九一)、競買人(民執七九)
⇒解説
 
第391条〔第三取得者の費用償還請求権〕
第三取得者か抵当不動産に付き必要費又は有益費を出たしたるときは第百九十六条〔占有者の費用償還請求権〕の区別に従ひ不動産の代価を以て最も先に其償還を受くることができる(ことを得)
*必要費の償還請求権(一九六1・二七三・二九九1・三五〇・五八三2・五九五2・六〇八1・六五〇1・九九三)、有益費の償還請求権(一九六2・二七三・二九九2・三五〇・五八三2・五九五2・六〇八2・九九三)、同種の規定(自抵一四、航抵一六、建機抵二〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第392条〔共同抵当の代価の配当、次順位者の代位〕
債権者か同一の債権の担保として数個の不動産の上に抵当権を有する場合に於て同時に其代価を配当すへきときは其各不動産の価額に準して其債権の負担を分つ
□或不動産の代価のみを配当すへきときは抵当権者は其代価に付き債権の全部の弁済を受くることができる(ことを得)此場合に於ては次の順位に在る抵当権者は前項の規定に従ひ右の抵当権者か他の不動産に付き弁済を受くへき金額に満つるまて之に代位して抵当権を行ふことができる(ことを得)
*共同抵当の登記(不登一二二−一二八)、抵当権の順位(三七三)、代位の附記登記(三九三)、根抵当権における特則(三九八ノ一六−三九八ノ一八)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第393条〔代位の附記登記〕
前条の規定に従ひ代位に因りて抵当権を行ふ者は其抵当権の登記に其代位を附記することができる(ことを得)
*代位の附記登記(不登七・五三・一一九ノ四)
⇒解説
 
第394条〔抵当不動産以外からの弁済〕
抵当権者は抵当不動産の代価を以て弁済を受けさる債権の部分に付てのみ他の財産を以て弁済を受くることができる(ことを得)
□前項の規定は抵当不動産の代価に先ちて他の財産の代価を配当すへき場合には之を適用せす但他の各債権者は抵当権者をして前項の規定に従ひ弁済を受けしむる為め之に配当すへき金額の供託を請求することができる(ことを得)
*抵当権の優先弁済権(三六九1)、同種の規定(自抵一五、航抵一八、建機抵二二)、抵当証券所持人の裏書人に対する償還請求権(抵証三一・三二・三五−三九)、□供託(四九五)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第395条〔短期賃借権の保護〕
第六百二条に定めたる期間を超えさる賃貸借は抵当権の登記後に登記したるものと雖も之を以て抵当権者に対抗することができる(ことを得)但其賃貸借か抵当権者に損害を及ほすときは裁判所は抵当権者の請求に因り其解除を命することができる(ことを得)
*賃借権の登記(六〇五、不登一(8)・一三二)、登記の前後(不登六・四七・四八)、登記以外の対抗要件(借地借家一〇・三一)、占有者に対する引渡命令(民執八三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第3節 抵当権の消滅
第396条〔抵当権の消滅時効〕
抵当権は債務者及ひ抵当権設定者に対しては其担保する債権と同時に非されは時効に因りて消滅せす
*消滅時効(一六六・一六七1)、同種の規定(自抵一八、航抵二一、建機抵二三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第397条〔目的物の取得時効による抵当権の消滅〕
債務者又は抵当権設定者に非さる者か抵当不動産に付き取得時効に必要なる条件を具備せる占有を為したるときは抵当権は之に因りて消滅す
*取得時効(一六二)、地役権に関する類似規定(二八九)、同種の規定(自抵一九、航抵二二、建機抵二四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第398条〔抵当権の目的たる地上権・永小作権の放棄〕
地上権又は永小作権を抵当と為したる者か其権利を□棄したるも之を以て抵当権者に対抗することができない(ことを得す)
*地上権(二六五)、永小作権(二七〇)、地上権・永小作権の上の抵当権(三六九2)、本条の準用(工抵一六3、鉱抵三)、類似規定(立木八、鉱五七・五八、特許九七)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第4節 根抵当〔昭四六法九九本節追加〕
第398条の2〔根抵当権の意義と被担保債権〕
抵当権は設定行為を以て定むる所に依り一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度に於て担保する為めにも之を設定することができる(ことを得)
□前項の抵当権(以下根抵当権と称す)の担保すべき不特定の債権の範囲は債務者との特定の継続的取引契約に因りて生ずるもの其他債務者との一定の種類の取引に因りて生ずるものに限定して之を定むることを要す
□特定の原因に基き債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若くは小切手上の請求権は前項の規定に拘はらず之を根抵当権の担保すべき債権と為すことができる(ことを得)
*抵当権(三六九)、根抵当(抵証二(1)、地税二〇の六2但、税通四一2但)、旧根抵当権の取扱い(昭四六法九九改附一・二)、特別法上の根抵当権(自抵一九の二、航抵二二の二、建機抵二四の二)、□被担保債権の範囲の変更(三九八ノ四)、極度額(三九八ノ三)、極度額の変更(三九八ノ五)、設定登記(不登一一七2)、□特定の継続的取引契約の例(交互計算=商五二九)、取引の例(五五五・五八七・六五〇・六六六、商五〇一・五〇二、銀一)、□特定の原因の例(一九九、酒税六・二二、鉱一〇九)、手形・小切手上の請求権(手三八・四三・七七、小二八・三九)、債務者との取引によらないものについての優先弁済の制限(三九八ノ三2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第398条の3〔優先弁済の限度と制限〕
根抵当権者は確定したる元本並に利息其他の定期金及び債務の不履行に因りて生じたる損害の賠償の全部に付き極度額を限度として其根抵当権を行ふことができる(ことを得)
□債務者との取引に因らずして取得する手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の担保すべき債権と為したる場合に於て債務者が支払を停止したるとき、債務者に付き破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若くは特別清算開始の申立ありたるとき又は抵当不動産に対する競売の申立若くは滞納処分に因る差押ありたるときは其前に取得したるものに付てのみ其根抵当権を行ふことができる(ことを得)但其事実を知らずして取得したるものに付ても之を行ふことを妨げず
*□元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、質権の場合(三四六)、抵当権の場合(三七四)、利息(四〇四・四〇五)、遅延利息(四一九・四二〇)、極度額(三九八ノ二1)、優先弁済権の制限(税徴一八、地税一四の一二)、条件付債権・将来の請求権の取扱い(一二九・四六〇、民執一八八・八八・九一1(1)・九二、破二三)、□手形・小切手上の請求権(三九八ノ二3)、支払停止(破一二六2)、破産(破一)、和議開始(和一二)、更生手続開始(会更三〇)、整理開始申立て(商三八一)、特別清算開始申立て(商四三一)、競売申立て(民執四五・一八一)、滞納処分による差押え(税徴四七・五六・六二・六八・七二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第398条の4〔被担保債権の範囲・債務者の変更〕
元本の確定前に於ては根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更を為すことができる(ことを得)債務者の変更に付き亦同じ
□前項の変更を為すには後順位の抵当権者其他の第三者の承諾を得ることを要せず
□第一項の変更に付き元本の確定前に登記を為さざるときは其変更は之を為さざりしものと看做す
*元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、被担保債権の範囲(三九八ノ二)、債務者(三九八ノ二2,3)、変更登記手続(不登五六・一一七2・一一九)
⇒解説
 
第398条の5〔極度額の変更〕
根抵当権の極度額の変更は利害の関係を有する者の承諾を得るに非ざれば之を為すことはできない(を得ず)
*極度額(三九八ノ二・三九八ノ三1)、利害関係人の例(三七五、民執八七・一四三・一四五・一五〇)、変更登記手続(不登五六・一一七2)
⇒解説
 
第398条の6〔確定期日〕
根抵当権の担保すべき元本に付ては其確定すべき期日を定め又は之を変更することができる(ことを得)
□第三百九十八条の四第二項の規定は前項の場合に之を準用す
□第一項の期日は之を定め又は変更したる日より五年内たることを要す
□第一項の期日の変更に付き其期日前に登記を為さざるときは担保すべき元本は其期日に於て確定す
*確定期日を定める意味(三九八ノ一九1但)、確定期日到来による元本確定の効果(三九八ノ三1)、確定期日の登記(不登一一七2)、変更登記手続(不登五六・一一七2)
⇒解説
 
第398条の7〔確定前の被担保債権の譲渡等と根抵当権〕
元本の確定前に根抵当権者より債権を取得したる者は其債権に付き根抵当権を行ふことができない(ことを得ず)元本の確定前に債務者の為めに又は債務者に代はりて弁済を為したる者亦同じ
□元本の確定前に債務の引受ありたるときは根抵当権者は引受人の債務に付き其根抵当権を行ふことができない(ことを得ず)
*元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、債権の譲渡(四六六以下)、代位弁済(四九九−五〇一)、確定後の債権の一部譲渡・代位弁済(不登一二四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第398条の8〔確定前の被担保債権についての更改〕
元本の確定前に債権者又は債務者の交替に因る更改ありたるときは其当事者は第五百十八条の規定に拘はらず根抵当権を新債務に移すことができない(ことを得ず)
*更改(五一三以下)
⇒解説
 
第398条の9〔確定前の根抵当権者または債務者の相続〕
元本の確定前に根抵当権者に付き相続が開始したるときは根抵当権は相続開始の時に存する債権の外相続人と根抵当権設定者との合意に依り定めたる相続人が相続の開始後に取得する債権を担保す
□元本の確定前に債務者に付き相続が開始したるときは根抵当権は相続開始の時に存する債務の外根抵当権者と根抵当権設定者との合意に依り定めたる相続人が相続の開始後に負担する債務を担保す
□第三百九十八条の四第二項の規定は前二項の合意を為す場合に之を準用す
□第一項及び第二項の合意に付き相続の開始後六个月内に登記を為さざるときは担保すべき元本は相続開始の時に於て確定したるものと看做す
*元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、相続の開始(八八二)、相続財産(八九六)、相続人(八八六以下・九九〇)、本条による合意の登記(不登一一九ノ五)、元本確定の効果(三九八ノ三1)
⇒解説
 
第398条の10〔確定前の根抵当権者または債務者の合併〕
元本の確定前に根抵当権者に付き合併ありたるときは根抵当権は合併の時に存する債権の外合併後存続する法人又は合併に因りて設立したる法人が合併後に取得する債権を担保す
□元本の確定前に債務者に付き合併ありたるときは根抵当権は合併の時に存する債務の外合併後存続する法人又は合併に因りて設立したる法人が合併後に負担する債務を担保す
□前二項の場合に於ては根抵当権設定者は担保すべき元本の確定を請求することができる(ことを得)但前項の場合に於て其債務者が根抵当権設定者なるときは此限に在らず
□前項の請求ありたるときは担保すべき元本は合併の時に於て確定したるものと看做す
□第三項の請求は根抵当権設定者が合併ありたることを知りたる日より二週間を経過したるときは之を為すことはできない(ことを得ず)合併の日より一个月を経過したるとき亦同じ
*元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、会社の合併(商五六・九八以下・四〇八以下、有五九以下)、合併の時(合併登記の時=商一〇二・四一六1、有六三)、□元本確定の効果(三九八ノ三1)
⇒解説
 
第398条の11〔転抵当以外の第三七五条による処分の禁止〕
元本の確定前に於ては根抵当権者は第三百七十五条第一項〔抵当権の処分〕の処分を為すことはできない(ことを得ず)但其根抵当権を以て他の債権の担保と為すことを妨げず
□第三百七十六条第二項〔転抵当と弁済〕の規定は前項但書の場合に於て元本の確定前に為したる弁済に付ては之を適用せず
*元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、三七五条による抵当権の処分の登記(不登一一九ノ三)
⇒解説
 
第398条の12〔根抵当権の全部譲渡・分割譲渡〕
元本の確定前に於ては根抵当権者は根抵当権設定者の承諾を得て其根抵当権を譲渡すことができる(ことを得)
□根抵当権者は其根抵当権を二個の根抵当権に分割して其一を前項の規定に依り譲渡すことができる(ことを得)此場合に於ては其根抵当権を目的とする権利は譲渡したる根抵当権に付き消滅す
□前項の譲渡を為すには其根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得ることを要す
*□元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、移転登記(不登一・一三四)、□分割譲渡の登記(不登一一九ノ六・一一九ノ七)、根抵当権を目的とする権利の例(三九八ノ一一但、民執一四三・一四五・一五〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第398条の13〔根抵当権の一部譲渡〕
元本の確定前に於ては根抵当権者は根抵当権設定者の承諾を得て其根抵当権の一部譲渡を為し之を譲受人と共有することができる(ことを得)
*元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、一部譲渡の効果(三九八ノ一四)、移転登記(不登一・一三四)
⇒解説
 
第398条の14〔根抵当権の共有関係〕
根抵当権の共有者は各其債権額の割合に応じて弁済を受く但元本の確定前に之と異なる割合を定め又は或者が他の者に先ちて弁済を受くべきことを定めたるときは其定に従ふ
□根抵当権の共有者は他の共有者の同意を得て第三百九十八条の十二第一項の規定に依り其権利を譲渡すことができる(ことを得)
*準共有(二六四)、後発的に共有関係を生ずる場合(三九八ノ一三)、□但書の定めの登記(不登一一九ノ八)
⇒解説
 
第398条の15〔順位譲渡等の受益者たる根抵当権者の譲渡等の効果〕
抵当権の順位の譲渡又は□棄を受けたる根抵当権者が其根抵当権の譲渡又は一部譲渡を為したるときは譲受人は其順位の譲渡又は□棄の利益を受く
*順位の譲渡・放棄(三七五)、根抵当権の全部譲渡・分割譲渡(三九八ノ一二)、根抵当権の一部譲渡(三九八ノ一三)
⇒解説
 
第398条の16〔共同根抵当〕
第三百九十二条及び第三百九十三条の規定は根抵当権に付ては其設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産の上に根抵当権が設定せられたる旨を登記したる場合に限り之を適用す
*共同担保の登記(不登一二二以下)、共同担保の登記のない場合(累積式の根抵当=三九八ノ一八)、共同根抵当の場合の減額請求(三九八ノ二一2)、共同根抵当の場合の消滅請求(三九八ノ二二2)
⇒解説
 
第398条の17〔共同根抵当に関する変更・譲渡、確定〕
前条の登記ある根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若くは極度額の変更又は其譲渡若くは一部譲渡は総ての不動産に付き其登記を為すに非ざれば其効力を生ぜず
□前条の登記ある根抵当権の担保すべき元本は一の不動産に付てのみ確定すべき事由が生じたる場合に於ても亦確定す
*□共同担保の登記(不登一二二以下)、被担保債権の範囲・債務者の変更(三九八ノ四)、極度額の変更(三九八ノ五)、全部譲渡・分割譲渡(三九八ノ一二)、一部譲渡(三九八ノ一三)、□確定事由(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)
⇒解説
 
第398条の18〔累積式の根抵当〕
数個の不動産の上に根抵当権を有する者は第三百九十八条の十六の場合を除く外各不動産の代価に付き各極度額に至るまで優先権を行ふことができる(ことを得)
*極度額(三九八ノ二・三九八ノ三・三九八ノ五)
⇒解説
 
第398条の19〔設定者の確定請求権〕
根抵当権設定者は根抵当権設定の時より三年を経過したるときは担保すべき元本の確定を請求することができる(ことを得)但担保すべき元本の確定すべき期日の定あるときは此限に在らず
□前項の請求ありたるときは担保すべき元本は其請求の時より二週間を経過したるに因りて確定す
*□確定期日(三九八ノ六)、□請求の効力発生時期(九七)、期間の計算(一四〇以下)、元本確定の効果(三九八ノ三1)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第398条の20〔確定事由〕
左の場合に於ては根抵当権の担保すべき元本は確定す
一 担保すべき債権の範囲の変更、取引の終了其他の事由に因り担保すべき元本の生ぜざることと為りたるとき
二 根抵当権者が抵当不動産に付き競売又は第三百七十二条に於て準用する第三百四条の規定に依る差押を申立てたるとき但競売手続の開始又は差押ありたるときに限る
三 根抵当権者が抵当不動産に対し滞納処分に因る差押を為したるとき
四 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分に因る差押ありたることを知りたる時より二週間を経過したるとき
五 債務者又は根抵当権設定者が破産の宣告を受けたるとき
□前項第四号の競売手続の開始若くは差押又は同項第五号の破産の宣告の効力が消滅したるときは担保すべき元本は確定せざりしものと看做す但元本が確定したるものとして其根抵当権又は之を目的とする権利を取得したる者あるときは此限に在らず
*□元本確定の効果(三九八ノ三1)、元本確定前の法律関係(三九八ノ四・三九八ノ七−三九八ノ一三)、元本確定後に生ずる権利(三九八ノ二一・三九八ノ二二)、被担保債権の範囲の変更(三九八ノ四)、取引(三九八ノ二2)、競売の申立て(民執四三・四五・一八一・一八八)、三〇四条による差押え(民執一九三)、競売手続の開始(民執四五・一八八)、滞納処分による差押え(税徴四七・六八)、根抵当権者に対する通知(民執四九・一八八、税徴五五)、破産宣告(破一二六)、□競売手続の開始の効力の消滅(民執五四・六三・七六・一八八)、差押えの効力の消滅(民執三九・四〇、税徴七九・八一)、破産の宣告の効力の消滅(破一一二・一五六)、権利取得者の例(三九八ノ七1)
⇒解説
 
第398条の21〔極度額減額請求権〕
元本の確定後に於ては根抵当権設定者は其根抵当権の極度額を現に存する債務の額と爾後二年間に生ずべき利息其他の定期金及び債務の不履行に因る損害賠償の額とを加へたる額に減ずべきことを請求することができる(ことを得)
□第三百九十八条の十六の登記ある根抵当権の極度額の減額に付ては前項の請求は一の不動産に付き之を為すを以て足る
*元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、極度額(三九八ノ二1・三九八ノ三1・三九八ノ五)、二年分の利息・損害金(三七四)
⇒解説
 
第398条の22〔物上保証人等の根抵当権消滅請求権〕
元本の確定後に於て現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超ゆるときは他人の債務を担保する為め其根抵当権を設定したる者又は抵当不動産に付き所有権、地上権、永小作権若くは第三者に対抗することができる(ことを得)べき賃借権を取得したる第三者は其極度額に相当する金額を払渡し又は之を供託して其根抵当権の消滅を請求することができる(ことを得)此場合に於ては其払渡又は供託は弁済の効力を有す
□第三百九十八条の十六の登記ある根抵当権は一の不動産に付き前項の請求ありたるときは消滅す
□第三百七十九条及び第三百八十条〔滌除をなしえない者〕の規定は第一項の請求に之を準用す
*元本の確定(三九八ノ六・三九八ノ九4・三九八ノ一〇4・三九八ノ一九2・三九八ノ二〇)、現に存する債務の額(三九八ノ三1)、極度額(三九八ノ二1・三九八ノ三1・三九八ノ五)、物上保証人(三七二・三五一)、所有権(二〇六以下)、地上権(二六五以下)、永小作権(二七〇以下)、第三者に対抗しうる賃借権(六〇五、借地借家一〇・三一、農地一八)、第三取得者(滌除権の規定=三七八)、弁済(四七四以下)、供託(四九五、供託)、弁済充当(四八八以下)
⇒解説
⇒判例要旨