第1編 民法総則
1編 総則/0条〜
1章 人/1の3条〜
1節 私権の享有/1の3条〜
2節 能力/3条〜
3節 住所/21条〜
4節 失踪/25条〜
5節 同時死亡の推定/32の2条〜
2章 法人/33条〜
1節 法人の設立/33条〜
2節 法人の管理/52条〜
3節 法人の解散/68条〜
4節 補則/83の2条〜
5節 罰則/84条〜
3章 物/85条〜
4章 法律行為/90条〜
1節 総則/90条〜
2節 意思表示/93条〜
3節 代理/99条〜
4節 無効及ヒ取消/119条〜
5節 条件及ヒ期限/127条〜
5章 期間/138条〜
6章 時効/144条〜
1節 総則/144条〜
2節 取得時効/162条〜
3節 消滅時効/166条〜
 
第1条〔私権の基本原則、信義誠実の原則、権利濫用の禁止〕
私権は公共の福祉に遵ふ
 権利の行使及ひ義務の履行は信義に従ひ誠実に之を為すことを要す
 権利の濫用は之を許さす
〔昭二二法二二二本条追加〕
* 公共の福祉(憲一二・一三・二二1・二九2、刑訴一、行訴二五3・二七3)、 義務の履行(四一五四九三)、信義・誠実(宅建業三一、農地二〇2(1)、建設一八等)、 権利濫用の禁止(憲一二)、濫用による親権喪失(八三四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第1条の2〔民法解釈の基準〕
本法は個人の尊厳と両性の本質的平等とを旨として之を解釈すへし
〔昭二二法二二二本条追加〕
*個人の尊厳(憲一三・二四2、家審一、障害基三)、両性の本質的平等(憲一四・二四、家審一、労基四)
⇒解説
 
第1章 人
第1節 私権の享有
第1条の3〔権利能力の始期〕
私権の享有は出生に始まる
〔昭二二法二二二旧一条繰下〕
*私権(憲二九、法一1)、権利能力の始期=出生(出生届=戸四九以下)、胎児の特則(損害賠償請求権=七二一、相続=八八六、遺贈=九六五、胎児の認知=七八三、遺族の扱い=恩給法七二2、厚年金五九3、国年金三九2、国公共二3、地公共二3、労災一六の二2、国公災一六2、地公災三二2、船員施規六三3、遺族援護二四2)、権利能力の終期=死亡(失踪宣告による死亡の擬制=三一、認定死亡=戸八九、死亡届=戸八六以下)
⇒解説
 
第2条〔外国人の権利能力〕
外国人は法令又は条約に禁止ある場合を除く外私権を享有す
*外国人(外国人の意義=憲一〇、国籍一以下、外登一以下、準拠法=法例三−三四、外国法人=三六・四九)、法令による禁止・制限の例(外国人土地法一以下、鉱一七・八七、国賠六、信託一〇、船舶一−三、商七〇二、航空四、特許二五、実用新案五五3、意匠六八3、商標七七3、弁理士法二、公証一二)
⇒解説
 
第2節 能力

第3条〔成年〕

満二十年を以て成年とす
*年齢の計算(初日を算入する=年計)、年齢のとなえ方(年となえ方)、婚姻による成年(七五三)、船員の特例(船員八四2)、天皇・皇太子・皇太孫の成年(典範二二)
⇒解説
 
第4条〔未成年者の行為能力〕
未成年者か法律行為を為すには其法定代理人の同意を得ることを要す但単に権利を得又は義務を免るへき行為は此限に在らす
 前項の規定に反する行為は之を取消すことを得
* 成年()、法定代理人(親権者=八一八・八一九・八二四−八三三、特別代理人=八二六、後見人=八三八・八三九・八四一・八六七、児童福祉施設の長=児福四七)、法定代理人の権限(包括的同意=五・六」八二〇−八二六・八三三・八五七・八五九・八六〇・八六四−八六八)、身分上の行為の場合(婚姻=七三七、養子縁組=七九七・七九八、認知=七八〇、遺言=九六一・九六二)、意思表示の受領(九八)、訴訟上の取扱い(人訴三・二六・三二、民訴二八・三一)、その他の特則(賃金受領=労基五九」商五・六、中小企業退職金共済法一五、特許七)、 取消権者(一二〇)、取消しの効力(一二一)、追認(一二二一二六
⇒解説
⇒判例要旨
 
第5条〔随意処分の許可〕
法定代理人か目的を定めて処分を許したる財産は其目的の範囲内に於て未成年者随意に之を処分することを得目的を定めすして処分を許したる財産を処分する亦同し
*原則的に法定代理人の同意が必要(
⇒解説
⇒判例要旨
 
第6条〔営業の許可〕
一種又は数種の営業を許されたる未成年者は其営業に関しては成年者と同一の能力を有す
 前項の場合に於て未成年者か未た其営業に堪へさる事跡あるときは其法定代理人は親族編の規定に従ひ其許可を取消し又は之を制限することを得
* 職業の許可(八二三1・八五七、未成年者の就労=船員八四・八五、労基五六−六〇・六二)、営業の許可(八五七・八六四、商五・六・一二・一五、商登四三−四七)、 職業・営業許可の取消し(八二三・八五七・八六五)
⇒解説
⇒判例要旨
 
*〔平11法149改正〕
第7条〔後見開始の審判〕
精神上の障害に因り事理を弁識する能力を欠く常況に在る者に付ては家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求に因り後見開始の審判を為すことを得
 
第7条〔禁治産の宣告〕
心神喪失の常況に在る者に付ては家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、保佐人又は検察官の請求に因り禁治産の宣告を為すことを得
〔昭二二法二二二本条改正〕
*禁治産宣告の手続(家審九1甲(1)、家審規二二−二八)、親族(七二五・七二六)、後見人(八三八−八四六)、保佐人(一一・八四七)、検察官(検察三・四)、禁治産の準拠法(法例四・二四)
 
⇒解説
 
*〔平11法149改正〕
第8条〔成年後見人〕
後見開始の審判を受けたる者は成年被後見人として之に成年後見人を付す
 
第8条〔後見〕
禁治産者は之を後見に付す
*禁治産による後見の開始(八三八(2))、後見人(八三九−八四六)、後見監督人(八四八−八五二)、後見の事務(八五三−八六九)、後見の終了(八七〇−八七五)、後見に関する届出(戸八一−八五)
⇒解説
⇒解説
 
*〔平11法149改正〕
第9条〔成年被後見人の行為能力〕
成年被後見人の法律行為は之を取消すことを得但日用品の購入其他日常生活に関する行為に付ては此限に在らず
⇒判例要旨
第9条〔禁治産者の行為能力〕
禁治産者の行為は之を取消すことを得
*禁治産者(七)、取消し(一二〇以下)、追認の催告(一九)、取り消しえない場合(詐術あるとき=二〇、婚姻=七三八、協議離婚=七六四、認知=七八〇、縁組=七九九、協議離縁=八一二、遺言=九六二・九六三)、意思表示の受領能力(九八)、訴訟行為(民訴三一、人訴三・四・二五・二六・二八・三二1)、特許手続をする能力(特許七1)
⇒解説
 
*〔平11法149改正〕
第10条〔後見開始の審判の取消し〕
第七条に定めたる原因止みたるときは家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人を謂ふ以下同じ)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人を謂ふ以下同じ)又は検察官の請求に因り後見開始の審判を取消すことを要す
第10条〔宣告の取消し〕
禁治産の原因止みたるときは家庭裁判所は第七条に掲けたる者の請求に因り其宣告を取消すことを要す
*宣告取消しの手続(家審九1甲(1)、家審規二九)、能力回復後の追認(一二四2)
⇒解説
 
*〔平11法149改正〕
第11条〔保佐開始の審判〕
精神上の障害に因り事理を弁識する能力が著しく不十分なる者に付ては家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求に因り保佐開始の審判を為すことを得但第七条に定めたる原因ある者に付ては此限に在らず
第11条〔準禁治産者〕
心神耗弱者及ひ浪費者は準禁治産者として之に保佐人を附することを得
〔昭五四法六八本条改正〕
*準禁治産宣告およびその取消しの手続(一三・七・一〇、家審九1甲(2)、家審規三〇)、準禁治産の準拠法(法例五)、保佐人・臨時保佐人(八四七)、保佐の準拠法(法例二五)
*〔平11法149改正〕

第11条の2〔保佐人〕

保佐開始の審判を受けたる者は被保佐人として之に保佐人を付す
⇒解説
*〔平11法149改正〕
第12条〔被保佐人の行為能力〕
被保佐人か左に掲けたる行為を為すには其保佐人の同意を得ることを要す但第九条但書に定めたる行為に付ては此限に在らず
一〔同〕元本を領収し又は之を利用すること
二〔同〕借財又は保証を為すこと
三 不動産其他重要なる財産に関する権利の得喪を目的とする行為を為すこと
四〔同〕訴訟行為を為すこと
五〔同〕贈与、和解又は仲裁契約を為すこと
六 相続の承認若くは放棄又は遺産の分割を為すこと
七 贈与若くは遺贈を拒絶し又は負担付の贈与若くは遺贈を受諾すること
八〔同〕新築、改築、増築又は大修繕を為すこと
九〔同〕第六百二条〔短期賃貸借〕に定めたる期間を超ゆる賃貸借を為すこと
 家庭裁判所は第十一条本文に掲げたる者又は保佐人若くは保佐監督人の請求に因り被保佐人か前項に掲けさる行為を為すにも亦其保佐人の同意を得ることを要する旨の審判を為すことを得但第九条但書に定めたる行為に付ては此限に在らず
 保佐人の同意を得ることを要する行為に付き保佐人が被保佐人の利益を害する虞なきに拘らず同意を為さざるときは家庭裁判所は被保佐人の請求に因り保佐人の同意に代はる許可を与ふることを得
 保佐人の同意を得ることを要する行為にして其同意又は之に代はる許可を得ずして為したるものは之を取消すことを得
第12条〔準禁治産者の行為能力〕
準禁治産者か左に掲けたる行為を為すには其保佐人の同意を得ることを要す
一 元本を領収し又は之を利用すること
二 借財又は保証を為すこと
三 不動産又は重要なる動産に関する権利の得喪を目的とする行為を為すこと
四 訴訟行為を為すこと
五 贈与、和解又は仲裁契約を為すこと
六 相続を承認し又は之を 棄すること
七 贈与若くは遺贈を拒絶し又は負担附の贈与若くは遺贈を受諾すること
八 新築、改築、増築又は大修繕を為すこと
九 第六百二条〔短期賃貸借〕に定めたる期間を超ゆる賃貸借を為すこと
 家庭裁判所は場合に依り準禁治産者か前項に掲けさる行為を為すにも亦其保佐人の同意あることを要する旨を宣告することを得
 前二項の規定に反する行為は之を取消すことを得
* 保証(四四六−四六五)、訴訟行為(民訴三二、人訴三1・二六・三二1)、贈与(五四九)、和解(六九五)、仲裁契約(公催仲裁)、相続の承認(九二〇−九三七)、相続の放棄(九三八−九四〇)、遺贈の受諾=承認・拒絶=放棄(九八六−九八九)、負担付贈与(五五一2・五五三)、負担付遺贈(一〇〇二・一〇〇三)、賃貸借(六〇一)、特許手続に関する定め(特許七2,4)、 一項以外の行為についての家庭裁判所の宣告(家審九1甲(2))、 取消し(一二〇一二六)、追認の催告(一九)、詐術あるときの取消しの制限(二〇
⇒判例要旨
⇒解説
*〔平11法149改正〕
第13条〔保佐開始の審判の取消し〕
第十一条本文に定めたる原因止みたるときは家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求に因り保佐開始の審判を取消すことを要す
家庭裁判所は前項に掲げたる者の請求に因り前条第二項の審判の全部又は一部を取消すことを得
第13条〔準禁治産の宣告およびその取消し〕
第七条〔禁治産の宣告〕及ひ第十条〔禁治産の宣告取消し〕の規定は準禁治産に之を準用す
*宣告・取消しその他の処分の手続(家審九1甲(2)、家審規三〇)
*〔平11法149改正〕
第14条〔補助開始の審判〕
精神上の障害に因り事理を弁識する能力が不十分なる者に付ては家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求に因り補助開始の審判を為すことを得但第七条又は第十一条本文に定めたる原因ある者に付ては此限に在らず
 本人以外の者の請求に因り補助開始の審判を為すには本人の同意あることを要す
 補助開始の審判は第十六条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判と共に之を為すことを要す
第14条乃至第18条〔妻の無能力〕
削除〔昭二二法二二二〕
⇒解説
第15条〔補助人〕
補助開始の審判を受けたる者は被補助人として之に補助人を付す
第16条〔被補助人の行為能力〕
家庭裁判所は第十四条第一項本文に掲げたる者又は補助人若くは補助監督人の請求に因り被補助人が特定の法律行為を為すには其補助人の同意を得ることを要する旨の審判を為すことを得但其同意を得ることを要する行為は第十二条第一項に定めたる行為の一部に限る
 本人以外の者の請求に因り前項の審判を為すには本人の同意あることを要す
 補助人の同意を得ることを要する行為に付き補助人が被補助人の利益を害する虞なきに拘らず同意を為さざるときは家庭裁判所は被補助人の請求に因り補助人の同意に代はる許可を与ふることを得
 補助人の同意を得ることを要する行為にして其同意又は之に代はる許可を得ずして為したるものは之を取消すことを得
補助人には、特定の法律行為の同意権・代理権を付与することができる。  《民16条@》
 
第17条〔補助開始の審判の取消し〕
第十四条第一項本文に定めたる原因止みたるときは家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求に因り補助開始の審判を取消すことを要す
 家庭裁判所は前項に掲げたる者の請求に因り前条第一項の審判の全部又は一部を取消すことを得
 前条第一項の審判及び第八百七十六条の九第一項の審判を総て取消す場合に於ては家庭裁判所は補助開始の審判を取消すことを要す
第18条〔他種の審判をする場合のすでになされた審判の取消し〕
後見開始の審判を為す場合に於て本人が被保佐人又は被補助人なるときは家庭裁判所は其本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取消すことを要す
前項の規定は保佐開始の審判を為す場合に於て本人が成年被後見人若くは被補助人なるとき又は補助開始の審判を為す場合に於て本人が成年被後見人若くは被保佐人なるときに之を準用す
*〔平11法149改正〕
第19条〔制限能力者の相手方の催告権〕
制限能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十六条第一項の審判を受けたる被補助人を謂ふ以下同じ)の相手方は其制限能力者か能力者と為りたる後之に対して一箇月以上の期間内に其取消し得へき行為を追認するや否やを確答すへき旨を催告することを得若し其制限能力者か其期間内に確答を発せさるときは其行為を追認したるものと看做す
 制限能力者か未た能力者とならさる時に於て其法定代理人、保佐人又は補助人に対し其権限内の行為に付き前項の催告を為すも其期間内に確答を発せさるとき亦同し
 〔同〕
 被保佐人又は第十六条第一項の審判を受けたる被補助人に対しては第一項の期間内に其保佐人又は補助人の追認を得べき旨を催告することを得若し其被保佐人又は被補助人が其期間内に右の追認を得たる通知を発せさるときは之を取消したるものと看做す
⇒判例要旨
第19条〔無能力者の相手方の催告権〕
無能力者の相手方は其無能力者か能力者と為りたる後之に対して一个月以上の期間内に其取消し得へき行為を追認するや否やを確答すへき旨を催告することを得若し無能力者か其期間内に確答を発せさるときは其行為を追認したるものと看做す
 無能力者か未た能力者とならさる時に於て法定代理人に対し其権限内の行為に付き前項の催告を為すも其期間内に確答を発せさるとき亦同し
 特別の方式を要する行為に付ては右の期間内に其方式を践みたる通知を発せさるときは之を取消したるものと看做す
 準禁治産者に対しては第一項の期間内に保佐人の同意を得て其行為を追認すへき旨を催告することを得若し準禁治産者か其期間内に右の同意を得たる通知を発せさるときは之を取消したるものと看做す
〔昭二二法二二二第二項・四項改正〕
* 無能力者の行為の取消し(一二)、取消しの効果(一二一)、追認の効果(一二二)、 法定代理人の権限(八二四・八五九)、財産管理権の及ばない場合(八三〇・八六九)、 特別の方式を要する行為の例(後見監督人の同意=八六四)、 準禁治産者と保佐人(一一−一三)、保佐人・臨時保佐人(八四七)
⇒解説
 
*〔平11法149改正〕
第20条〔制限能力者の詐術〕
制限能力者か能力者たることを信せしむる為め詐術を用ひたるときは其行為を取消すことができない(ことを得す)
第20条〔無能力者の詐術〕
無能力者か能力者たることを信せしむる為め詐術を用ゐたるときは其行為を取消すことができない(ことを得す)
*無能力者の行為の取消し(四・九・一二)
⇒解説
⇒判例要旨
第3節 住所
第21条〔住所〕
各人の生活の本拠を以て其住所とす
*公益法人の住所(五〇)、会社の住所(商五四2、有四)、住所に関する届出(住民台二二−二四)、住所の法的効果(不在者=二五、債務履行の場所=四八四、商五一六、相続開始の場所=八八三、手形行為の場所=手二3・四・二一・五二1・七六3、小切手の支払場所=小八、裁判管轄=民訴四2、人訴一・二四・二六・二七・三二、非訟二・三四・一一八・二〇六、破一〇五、家審規二二・三一・三八・四五・六〇・八二・九四・九九・一二〇・一二九、民調三、送達場所=民訴一〇三、準拠法=法例二九、帰化の要件=国籍五−八、小作地の所有制限=農地六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第22条〔居所〕
住所の知れさる場合に於ては居所を以て住所と看做す
*裁判等の管轄(民訴四2、人訴一2・二六・三二、民調三)、準拠法(法例二八2・三〇)
⇒解説
 
第23条〔同前〕
日本に住所を有せさる者は其日本人たると外国人たるとを問はす日本に於ける居所を以て其住所と看做す但法例其他準拠法を定むる法律に従ひ其住所の法律に依るへき場合は此限に在らす
〔昭三九法一〇〇本条改正〕
*法例等による定め(法例一二・二九、遺言準拠二−四・七)
⇒解説
 
第24条〔仮住所〕
或行為に付き仮住所を選定したるときは其行為に関しては之を住所と看做す
*仮住所と訴訟(民訴一〇四1)
⇒解説
 
第4節 失踪
第25条〔不在者の財産の管理〕
従来の住所又は居所を去りたる者か其財産の管理人を置かさりしときは家庭裁判所は利害関係人又は検察官の請求に因り其財産の管理に付き必要なる処分を命することを得本人の不在中管理人の権限か消滅したるとき亦同し
 本人か後日に至り管理人を置きたるときは家庭裁判所は其管理人、利害関係人又は検察官の請求に因り其命令を取消すことを要す
* 住所・居所(二一−二四)、不在者が置いた管理人(二六・二七2,3・二八・六四三以下)、家庭裁判所の命ずる処分(家審九1甲(3)、家審規三一−三七)、 命令の取消し(家審規三七)
⇒解説
 
第26条〔管理人の改任〕
不在者か管理人を置きたる場合に於て其不在者の生死分明ならさるときは家庭裁判所は利害関係人又は検察官の請求に因り管理人を改任することを得
*家庭裁判所による管理人の改任(家審九1甲(3)、家審規三二)
⇒解説
 
第27条〔管理人の職務〕
前二条の規定に依り家庭裁判所に於て選任したる管理人は其管理すへき財産の目録を調製することを要す但其費用は不在者の財産を以て之を支弁す
 不在者の生死分明ならさる場合に於て利害関係人又は検察官の請求あるときは家庭裁判所は不在者か置きたる管理人にも前項の手続を命することを得
 右の外総て家庭裁判所か不在者の財産の保存に必要と認むる処分は之を管理人に命することを得
*本条が準用される場合(八三〇・八九五2)、 財産目録の調製(家審規三六)、 必要な処分(二九1、家審規三三・三四・三六2等)
⇒解説
 

第28条〔管理人の権限〕

管理人か第百三条〔権限の定めのない代理人の代理権の範囲〕に定めたる権限を超ゆる行為を必要とするときは家庭裁判所の許可を得て之を為すことを得不在者の生死分明ならさる場合に於て其管理人か不在者の定め置きたる権限を超ゆる行為を必要とするとき亦同し
*本条が準用される場合(八三〇4・八九五2)、家庭裁判所の許可(家審九1甲(3)、家審規三一)、不在者の定めた権限(六四三・六四四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第29条〔管理人の担保提供、報酬〕
家庭裁判所は管理人をして財産の管理及ひ返還に付き相当の担保を供せしむることを得
 家庭裁判所は管理人と不在者との関係其他の事情に依り不在者の財産中より相当の報酬を管理人に与ふることを得
*本条が準用される場合(八三〇4・八九五2)、 担保の供与(家審規三四・三五)、 受任者の報酬請求権(六四八)、受任者の費用償還請求権(六五〇)
⇒解説
 
第30条〔失踪宣告〕
不在者の生死か七年間分明ならさるときは家庭裁判所は利害関係人の請求に因り失踪の宣告を為すことを得
 戦地に臨みたる者、沈没したる船舶中に在りたる者其他死亡の原因たるへき危難に遭遇したる者の生死か戦争の止みたる後、船舶の沈没したる後又は其他の危難の去りたる後一年間分明ならさるとき亦同し
〔昭三七法四〇第二項改正〕
*失踪宣告手続(家審九1甲(4)、家審規三八−四二・四四)、失踪宣告と戸籍(戸九四・二三、家審規四四)、認定死亡(戸八九・九一)、死亡時期の推定(労災一〇、国公災一九、厚年金五九の二)、外国人の失踪宣告(法例六)
⇒解説
 
第31条〔失踪宣告の効力〕
前条第一項の規定に依り失踪の宣告を受けたる者は前条第一項の期間満了の時に死亡したるものと看做し前条第二項の規定に依り失踪の宣告を受けたる者は危難の去りたる時に死亡したるものと看做す
〔昭三七法四〇本条改正〕
*宣告に基づく届出(戸九四)、宣告の効力発生時期(家審一三、家審規四二)、死亡の効果(姻族関係の終了=七二八2、生存配偶者の復氏可能=七五一1、相続の開始=八八二)
⇒解説
 
第32条〔失踪宣告の取消し〕
失踪者の生存すること又は前条に定めたる時と異なりたる時に死亡したることの証明あるときは家庭裁判所は本人又は利害関係人の請求に因り失踪の宣告を取消すことを要す但失踪の宣告後其取消前に善意を以て為したる行為は其効力を変せす
 失踪の宣告に因りて財産を得たる者は其取消に因りて権利を失ふも現に利益を受くる限度に於てのみ其財産を返還する義務を負ふ
* 取消手続(家審九1甲(4)、家審規三八・四三・四四)、取消しの届出(戸九四)、 取消しの効果の一般規定(一二一)、不当利得返還の一般規定(七〇三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第5節 同時死亡の推定〔昭三七法四〇本節追加〕
第32条の2〔同時死亡の推定〕
死亡したる数人中其一人が他の者の死亡後尚ほ生存したること分明ならざるときは此等の者は同時に死亡したるものと推定す
*同時死亡の効果(相続は相互に開始しない=八八二、代襲相続=八八七2,3、遺贈は効力を生じない=九九四1)
⇒解説
 
第2章 法人
第1節 法人の設立
第33条〔法人設立の準則〕
法人は本法其他の法律の規定に依るに非されは成立することができない(ことを得す)
*本法の規定(公益法人=三四−三六、相続財産法人=九五一、民法施行前の社団・財団=民施一九)、その他の法律の規定(特定非営利活動法人=非営利活動一、会社=商五二・五四、有限会社=有一、地方公共団体・同組合=地自二1、土地改良区=土改一三、商品取引所=商取三、証券取引所=証取八〇、商工会議所=商工会議所法二、労働組合=労組一一、職員団体=国公一〇八の四、地公五四、健康保険組合=健保二六、国民健康保険組合=国健保一四、医療法人=医療三九、消費生活協同組合=生協五七・五八、農業協同組合=農協五、農事組合法人=農協七二の五、農業生産法人=農地二7、弁護士会・日本弁護士連合会=弁護三一・四五、弁理士会=弁理士法一二、司法書士会・日本司法書士会連合会=司書一四・一七の四、土地家屋調査士会・日本土地家屋調査士連合会=土調士一四・一七の四、貸金業協会・全国貸金業協会連合会=貸金二五・三三、等)、特定非営利活動法人(いわゆるNPO)=非営利活動一〇、法人でない社団・財団の取扱い(当事者能力=民訴二九、不服申立て=行服一〇、納税=税通三・七、税徴三・四一、所税二1(8)・四、法税二(8)・三、地税一二・一二の二、手続能力=特許六、著作権=著二6)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第34条〔公益法人の設立〕
祭祀、宗教、慈善、学術、技芸其他公益に関する社団又は財団にして営利を目的とせさるものは主務官庁の許可を得て之を法人と為すことを得
*民法施行前の社団・財団(民施一九)、公益法人設立準拠規定の例(宗法一二−一五、私学三〇・三一、医療四四・四五、社福二九・三〇・七三等)、法人設立の強制主義(弁護三二・四五、弁理士法一〇等)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第34条の2〔公益法人名称の使用禁止〕
社団法人又は財団法人に非ざるものは其名称中に社団法人若くは財団法人なる文字又は此等と誤認せしむべき文字を使用することを得ず
〔昭五四法六八本条追加〕
*名称使用に対する制裁(八四ノ二)
⇒解説
 
第35条〔営利法人の設立〕
営利を目的とする社団は商事会社設立の条件に従ひ之を法人と為すことを得
 前項の社団法人には総て商事会社に関する規定を準用す
*営利を目的とする社団(民事会社=商五二2、有一・二、商事会社=商五二1、有一)
⇒解説
 
第36条〔外国法人の一般的不認許・権利能力〕
外国法人は国、国の行政区画及ひ商事会社を除く外其成立を認許せす但法律又は条約に依りて認許せられたるものは此限に在らす
 前項の規定に依りて認許せられたる外国法人は日本に成立する同種の者と同一の私権を有す但外国人か享有することを得さる権利及ひ法律又は条約中に特別の規定あるものは此限に在らす
*外国会社(商四七九−四八五ノ二、有七六)、外国法人の登記(四九)、法人の権利能力(四三)、外国人の権利能力(二)
⇒解説
 
第37条〔定款の必要的記載事項〕
社団法人の設立者は定款を作り之に左の事項を記載することを要す
一 目的
二 名称
三 事務所
四 資産に関する規定
五 理事の任免に関する規定
六 社員たる資格の得喪に関する規定
*定款の任意的記載事項(三八1・五二2・五三−五五・五八・六一2・六二−六五・六八1(1)・六九・七二・七四)、会社の定款(商六三・一四八・一六五・一六六、有六)
⇒解説
 
第38条〔定款の変更〕
社団法人の定款は総社員の四分の三以上の同意あるときに限り之を変更することを得但定款に別段の定あるときは此限に在らす
 定款の変更は主務官庁の認可を受くるに非されは其効力を生せす
*社員の表決権(六五)、変更登記(四六2)、会社の定款の変更(商七二・一四七・一八七・三四二・三四三、有四七・四八)
⇒解説
 
第39条〔寄附行為の必要的記載事項〕
財団法人の設立者は其設立を目的とする寄附行為を以て第三十七条第一号乃至第五号に掲けたる事項を定むることを要す
*寄附行為の任意的記載事項(五二2・五三−五五・五八・六八1(1)・七二・七四)
⇒解説
 
第40条〔寄附行為の補充〕
財団法人の設立者か其名称、事務所又は理事任免の方法を定めすして死亡したるときは裁判所は利害関係人又は検察官の請求に因り之を定むることを要す
*特別法の規定(私学三二、社福三一)、裁判所の管轄(非訟三四)
⇒解説
 
第41条〔贈与・遺贈の規定の準用〕
生前処分を以て寄附行為を為すときは贈与に関する規定を準用す
 遺言を以て寄附行為を為すときは遺贈に関する規定を準用す
* 贈与(五四九−五五四)、 遺言(九六〇以下)、遺贈(九六〇−一〇二七・一〇三一以下)
⇒解説
 
第42条〔寄附財産の帰属時期〕
生前処分を以て寄附行為を為したるときは寄附財産は法人設立の許可ありたる時より法人の財産を組成す
 遺言を以て寄附行為を為したるときは寄附財産は遺言か効力を生したる時より法人に帰属したるものと看做す
* 設立許可(三四)、 遺言の効力発生時期(九八五)
⇒解説
 
第43条〔法人の権利能力の範囲〕
法人は法令の規定に従ひ定款又は寄附行為に因りて定まりたる目的の範囲内に於て権利を有し義務を負ふ
*法令による制限(商五五、有四)、定款(三七)、寄附行為(三九)、清算法人(七三)、相続財産法人(九五一)、宗教法人の権利能力(宗法一〇)、本条の準用(私学二九、社福二八、労組一二、区分所有四七7・六六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第44条〔法人の不法行為能力〕
法人は理事其他の代理人か其職務を行ふに付き他人に加へたる損害を賠償する責に任す
 法人の目的の範囲内に在らさる行為に因りて他人に損害を加へたるときは其事項の議決を賛成したる社員、理事及ひ之を履行したる理事其他の代理人連帯して其賠償の責に任す
* 理事その他の代理人(五二・五六・五七・七四・七五)、本項の準用(商七八2・一四七・二六一3、有三二、森林組合法五八)、 目的の範囲内(四三)、連帯債務(四三二−四四五)、取締役の責任(商二六六ノ三、有三〇ノ三)、本条の準用(私学二九、労組一二、社福二八、区分所有四七7・六六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第45条〔法人の設立登記〕
法人は其設立の日より主たる事務所の所在地に於ては二週間、其他の事務所の所在地に於ては三週間内に登記を為すことを要す
 法人の設立は其主たる事務所の所在地に於て登記を為すに非されは之を以て他人に対抗することができない(ことを得す)
 法人設立の後新に事務所を設けたるときは其事務所の所在地に於ては三週間内に登記を為すことを要す
〔昭一三法一八第一項・三項改正〕
* 登記期間の起算(四七)、罰則(八四(1))、登記手続(非訟一一七・一一九・一二〇・一二四)、登記事項の公告(民施二四)、 設立登記が法人成立要件である場合(会社=商五七、有四、弁護士会=弁護三四1・五〇、宗教法人=宗法一五、学校法人=私学三三、労働組合=労組一一、農業協同組合=農協六三1等)、 手続(非訟一二一)、外国法人の場合(四九1)
⇒解説
 
第46条〔登記事項・変更登記〕
登記すへき事項左の如し
一 目的
二 名称
三 事務所
四 設立許可の年月日
五 存立時期を定めたるときは其時期
六 資産の総額
七 出資の方法を定めたるときは其方法
八 理事の氏名、住所
 前項に掲けたる事項中に変更を生したるときは主たる事務所の所在地に於ては二週間、其他の事務所の所在地に於ては三週間内に其登記を為すことを要す登記前に在りては其変更を以て他人に対抗することができない(ことを得す)
 理事の職務の執行を停止し若くは之を代行する者を選任する仮処分又は其仮処分の変更若くは取消ありたるときは主たる事務所及び其他の事務所の所在地に於て其登記を為すことを要す此場合に於ては前項後段の規定を準用す
〔昭一三法一八第二項改正、平一法九一第三項追加〕
* 会社の登記事項(商六四1・一四九1・一八八2、有一三2)、 会社の変更登記(商一五・一二・六七・一四七・一八八3、有一三3)、手続(非訟一二一)、罰則(八四(1))
⇒解説
 
第47条〔登記期間の起算〕
第四十五条第一項及ひ前条の規定に依り登記すへき事項にして官庁の許可を要するものは其許可書の到達したる時より登記の期間を起算す
*許可(三四・三八)、許可書または認証ある謄本の添付(非訟一二〇・一二一)
⇒解説
 
第48条〔事務所移転登記〕
法人か主たる事務所を移転したるときは二週間内に旧所在地に於ては移転の登記を為し新所在地に於ては第四十六条第一項に定めたる登記を為し其他の事務所を移転したるときは旧所在地に於ては三週間内に移転の登記を為し新所在地に於ては四週間内に第四十六条第一項に定めたる登記を為すことを要す
 同一の登記所の管轄区域内に於て事務所を移転したるときは其移転のみの登記を為すことを要す
〔昭一三法一八・昭三八法一二六第一項改正〕
*事務所(三七(3)・三九・四六1(3))、手続(非訟一二一)、罰則(八四(1))
⇒解説
 
第49条〔外国法人の登記〕
第四十五条第三項、第四十六条及ひ前条の規定は外国法人か日本に事務所を設くる場合にも亦之を適用す但外国に於て生したる事項に付ては其通知の到達したる時より登記の期間を起算す
 外国法人か始めて日本に事務所を設けたるときは其事務所の所在地に於て登記を為すまては他人は其法人の成立を否認することを得
*外国法人(三六)、管轄登記所(非訟一一七2)、 手続(非訟一二四・二〇九ノ二)、外国会社の登記(商四七九・四八〇、有七六)、 外国会社の登記の効力(商四八一・四九八ノ三、有七六)
⇒解説
 
第50条〔法人の住所〕
法人の住所は其主たる事務所の所在地に在るものとす
*住所(二一)、主たる事務所(三七(3)・三九・四六1(3)・四八・四九)、会社の住所(商五四2、有四)、本条の準用(区分所有四七7・六六)
⇒解説
 
第51条〔財産目録・社員名簿〕
法人は設立の時及ひ毎年初の三个月内に財産目録を作り常に之を事務所に備へ置くことを要す但特に事業年度を設くるものは設立の時及ひ其年度の終に於て之を作ることを要す
 社団法人は社員名簿を備へ置き社員の変更ある毎に之を訂正することを要す
*罰則(八四(2))、 商人および会社の財産目録(商三三・三四、有四三)、 株主名簿(商二二三・二六三)、有限会社の社員名簿(有二八)」本条の準用(区分所有四七7・六六)
⇒解説
 
第2節 法人の管理
第52条〔理事〕
法人には一人又は数人の理事を置くことを要す
 理事数人ある場合に於て定款又は寄附行為に別段の定なきときは法人の事務は理事の過半数を以て之を決す
* 理事(三七(5)・三九・四六1(8))、理事の欠格者(民施二七、刑施三四・三六)、 会社の業務執行(商七〇・一五一・二六〇・二六〇ノ二、有二六)、準用(区分所有四九7・六六)
⇒解説
 
第53条〔理事の代表権〕
理事は総て法人の事務に付き法人を代表す但定款の規定又は寄附行為の趣旨に違反することができない(ことを得す)又社団法人に在りては総会の決議に従ふことを要す
*理事の責任(四四2)、総会の決議(六三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第54条〔代表権の制限〕
理事の代理権に加へたる制限は之を以て善意の第三者に対抗することができない(ことを得す)
*本条の準用(商七八2・一四七・二六一3、有三二、私学四九、区分所有四九7・六六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第55条〔代表権の委任〕
理事は定款、寄附行為又は総会の決議に依りて禁止せられさるときに限り特定の行為の代理を他人に委任することを得
*復代理の規定(一〇四−一〇七)、委任(六四三−六五六)、本条の準用(区分所有四九7・六六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第56条〔仮理事〕
理事の欠けたる場合に於て遅滞の為め損害を生する虞あるときは裁判所は利害関係人又は検察官の請求に因り仮理事を選任す
*裁判所の管轄(非訟三五1)、本条の準用(区分所有四九7・五〇3・六六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第57条〔特別代理人〕
法人と理事との利益相反する事項に付ては理事は代理権を有せす此場合に於ては前条の規定に依りて特別代理人を選任することを要す
*自己契約・双方代理の禁止(一〇八、商二六五)、利益相反(八二六・八四七2・八五一(4)・八六〇)、裁判所の管轄(非訟三五1)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第58条〔監事〕
法人には定款、寄附行為又は総会の決議を以て一人又は数人の監事を置くことを得
*定款(三七)、寄附行為(三九)、総会決議(六三)、監事の職務権限(五九)、監事の欠格者(民施二七、刑施三四・三六)、監事の必置(私学三五1)
⇒解説
 
第59条〔監事の職務権限〕
監事の職務左の如し
一 法人の財産の状況を監査すること
二 理事の業務執行の状況を監査すること
三 財産の状況又は業務の執行に付き不整の廉あることを発見したるときは之を総会又は主務官庁に報告すること
四 前号の報告を為す為め必要あるときは総会を招集すること
*監事(五八)、罰則(八四(4))、総会の招集(六二)、本条の準用(区分所有五〇3・六六)
⇒解説
 
第60条〔通常総会〕
社団法人の理事は少くとも毎年一回社員の通常総会を開くことを要す
 
第61条〔臨時総会〕
社団法人の理事は必要ありと認むるときは何時にても臨時総会を招集することを得
 総社員の五分の一以上より会議の目的たる事項を示して請求を為したるときは理事は臨時総会を招集することを要す但此定数は定款を以て之を増減することを得
* 監事による招集(五九(4))、総会(六二−六六)、 定款(三七)、少数株主または社員による招集請求(商二三七、有三七)
⇒解説
 
第62条〔総会の招集手続〕
総会の招集は少くとも五日前に其会議の目的たる事項を示し定款に定めたる方法に従ひて之を為すことを要す
*総会の決議事項(六四)
⇒解説
 
第63条〔総会の権限〕
社団法人の事務は定款を以て理事其他の役員に委任したるものを除く外総て総会の決議に依りて之を行ふ
*総会と理事との関係(五三)、通常総会(六〇)、臨時総会(六一・五九(4))、総会の決議の例(五八・六八2(1))
⇒解説
 
第64条〔総会の決議事項〕
総会に於ては第六十二条の規定に依りて予め通知を為したる事項に付てのみ決議を為すことを得但定款に別段の定あるときは此限に在らす
*総会の招集手続(六二)、通常総会(六〇)、臨時総会(六一・五九(4))、定款(三七)
⇒解説
 
第65条〔社員の表決権〕
各社員の表決権は平等なるものとす
 総会に出席せさる社員は書面を以て表決を為し又は代理人を出たすことを得
 前二項の規定は定款に別段の定ある場合には之を適用せす
*表決権のない場合(六六)、 定款(三七)
⇒解説
 
第66条〔社員に表決権のない場合〕
社団法人と或社員との関係に付き議決を為す場合に於ては其社員は表決権を有せす
 
第67条〔法人の業務の監督〕
法人の業務は主務官庁の監督に属す
 主務官庁は法人に対し監督上必要なる命令を為すことを得
 主務官庁は何時にても職権を以て法人の業務及ひ財産の状況を検査することを得
〔昭五四法六八第二項追加〕
*主務官庁の監督(三四・三八2・五九(3)・七一・七二2・七七1・八三ノ二)、裁判所の監督(八二、非訟三六)、罰則(検査妨害=八四(3)、命令違反=七一・八四(3)ノ二)
⇒解説
 
第3節 法人の解散
第68条〔法人の解散事由〕
法人は左の事由に因りて解散す
一 定款又は寄附行為を以て定めたる解散事由の発生
二 法人の目的たる事業の成功又は其成功の不能
三 破産
四 設立許可の取消
 社団法人は前項に掲けたる場合の外左の事由に因りて解散す
一 総会の決議
二 社員の欠亡
*清算法人(七三)、解散の監督(八二)、解散登記(七七)、登記手続(非訟一二二)、特殊の法人の解散事由(私学五〇、宗法四三、社福四四)、 定款(三七)、寄附行為(三九)、存立時期の定め(四六1(5))、法人の目的(三七(1)・三九)、破産(七〇・八四(5)、破一二七)、設立許可の取消し(七一)、解散命令(民施二三、商五八、私学六二、宗法八一、社福五四2・八〇)、 解散の決議(六九)
⇒解説
 
第69条〔解散の決議〕
社団法人は総社員の四分の三以上の承諾あるに非されは解散の決議を為すことができない(ことを得す)但定款に別段の定あるときは此限に在らす
*決議による解散(六八2(1))、定款(三七)
⇒解説
 
第70条〔法人の破産〕
法人か其債務を完済すること能はさるに至りたるときは裁判所は理事若くは債権者の請求に因り又は職権を以て破産の宣告を為す
 前項の場合に於て理事は直ちに破産宣告の請求を為すことを要す
*解散事由(六八1(3))、 法人の破産(破一二七・一一九・一二五)、清算法人の破産(八一)、 理事の破産の申立て(破一三三1・三八九)、罰則(八四(5))
⇒解説
 
第71条〔設立許可の取消し〕
法人か其目的以外の事業を為し又は設立の許可を得たる条件若くは主務官庁の監督上の命令に違反し其他公益を害すへき行為を為したる場合に於て他の方法に依り監督の目的を達すること能はざるときは主務官庁は其許可を取消すことを得正当の事由なくして引続き三年以上事業を為さざるとき亦同じ
〔昭五四法六八本条改正〕
*公益法人の設立許可(三四)、監督上の命令(六七2)、取消処分の手続(民施二五・二五ノ二)、民法施行前の法人の解散命令(民施二三、昭五四法六八改正附則二)、設立許可取消しによる解散(六八1(4))、特殊の法人の場合(認証の取消し=宗法八〇、解散命令=宗法八一、私学六二)、会社の解散命令(商五八)
⇒解説
 
第72条〔残余財産の帰属〕
解散したる法人の財産は定款又は寄附行為を以て指定したる人に帰属す
 定款又は寄附行為を以て帰属権利者を指定せす又は之を指定する方法を定めさりしときは理事は主務官庁の許可を得て其法人の目的に類似せる目的の為めに其財産を処分することを得但社団法人に在りては総会の決議を経ることを要す
 前二項の規定に依りて処分せられさる財産は国庫に帰属す
* 残余財産の引渡(清算人の職務=七八1(3))、定款(三七)、寄附行為(三九)、特殊の法人の残余財産の帰属(私学五一、宗法五〇、社福四五)、会社の残余財産の分配(商一三一・一四七・四二五、有七三)、組合の残余財産の分割(六八八2)、 総会の決議(六〇−六五)、 国庫に帰属しない場合(著六二1(2))
⇒解説
 
第73条〔清算法人〕
解散したる法人は清算の目的の範囲内に於ては其清算の結了に至るまて尚ほ存続するものと看做す
*解散(六八)、清算の目的(七八1)、清算の結了の届出(八三)、本条の準用(私学五八、宗法五一、区分所有五五3・六六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第74条〔清算人〕
法人か解散したるときは破産の場合を除く外理事其清算人と為る但定款若くは寄附行為に別段の定あるとき又は総会に於て他人を選任したるときは此限に在らす
*裁判所による清算人の選任(七五)、法人の破産(七〇・八一)、清算人の欠格者(民施二七、刑施三四・三六)、定款(三七)、寄附行為(三九)、本条の準用(区分所有五五3・六六)
⇒解説
 
第75条〔裁判所による清算人の選任〕
前条の規定に依りて清算人たる者なきとき又は清算人の欠けたる為め損害を生する虞あるときは裁判所は利害関係人若くは検察官の請求に因り又は職権を以て清算人を選任することを得
*通常の清算人(七四)、清算人の選任(非訟三七)、清算人の欠格者(民施二七、刑施三四・三六、非訟三七・一三八)、本条の準用(区分所有五五3・六六)
⇒解説
 
第76条〔裁判所による清算人の解任〕
重要なる事由あるときは裁判所は利害関係人若くは検察官の請求に因り又は職権を以て清算人を解任することを得
*裁判所の監督(八二1)、清算人の解任(非訟三七・一三七)、本条の準用(区分所有五五3・六六)
⇒解説
 
第77条〔解散の登記と届出〕
清算人は破産及び設立許可の取消の場合を除く外解散後主たる事務所の所在地に於ては二週間、其他の事務所の所在地に於ては三週間内に其氏名、住所及ひ解散の原因、年月日の登記を為し且つ之を主務官庁に届出つることを要す
 清算中に就職したる清算人は就職後主たる事務所の所在地に於ては二週間、其他の事務所の所在地に於ては三週間内に其氏名、住所の登記を為し且つ之を主務官庁に届出つることを要す
 前項の規定は設立許可の取消に因る解散の際に就職したる清算人に之を準用す
〔昭五四法六八第一項改正・三項追加〕
*破産の場合(七〇・八一、破一一九・一二五)、設定許可取消しの場合(七一)、解散事由(六八)、解散登記の申請(非訟一二二ノ二)、罰則(八四(1))
⇒解説
 
第78条〔清算人の職務権限〕
清算人の職務左の如し
一 現務の結了
二 債権の取立及ひ債務の弁済
三 残余財産の引渡
 清算人は前項の職務を行ふ為めに必要なる一切の行為を為すことを得
*債務の弁済(七九・八〇・四七四以下)、残余財産(七二・八〇)、清算法人の権利能力(七三)、本条の準用(六八八1、私学五八、宗法五一、区分所有五五3・六六)
⇒解説
 
第79条〔債権申出の公告〕
清算人は其就職の日より二个月内に少くとも三回の公告を以て債権者に対し一定の期間内に其請求の申出を為すへき旨を催告することを要す但其期間は二个月を下ることができない(ことを得す)
 前項の公告には債権者か期間内に申出を為ささるときは其債権は清算より除斥せらるへき旨を附記することを要す但清算人は知れたる債権者を除斥することができない(ことを得す)
 清算人は知れたる債権者には各別に其申出を催告することを要す
*公告の方法(民施二六)、罰則(八四(6))、本条の準用(区分所有五五3・六六)
⇒解説
 
第80条〔期間後の債権申出〕
前条の期間後に申出てたる債権者は法人の債務完済の後未た帰属権利者に引渡ささる財産に対してのみ請求を為すことを得
*残余財産の帰属と引渡し(七二・七八1(3))、本条の準用(区分所有五五3・六六)
⇒解説
 
第81条〔清算法人の破産〕
清算中に法人の財産か其債務を完済するに不足なること分明なるに至りたるときは清算人は直ちに破産宣告の請求を為して其旨を公告することを要す
 清算人は破産管財人に其事務を引渡したるときは其任を終はりたるものとす
 本条の場合に於て既に債権者に支払ひ又は帰属権利者に引渡したるものあるときは破産管財人は之を取戻すことを得
* 解散事由としての破産(六八1(3)・七〇)、破産の申立て(破一二八以下)、公告の方法(民施二六)、罰則(八四(5)(6))、 破産管財人(破一五七以下)、 債務の弁済(七八1(2)・七九・八〇)、残余財産の帰属と引渡し(七二・七八1(3))、本条の準用(区分所有五五3・六六)
⇒解説
 
第82条〔解散・清算の監督〕
法人の解散及ひ清算は裁判所の監督に属す
 裁判所は何時にても職権を以て前項の監督に必要なる検査を為すことを得
* 裁判所の監督(七五・七六、非訟三五2・三七・三七ノ二)、 裁判所の検査(非訟三六・三七ノ二)、罰則(八四(3))、本条の準用(区分所有五五3・六六)
⇒解説
 
第83条〔清算結了の届出〕
清算か結了したるときは清算人は之を主務官庁に届出つることを要す
*清算人(七四・七五)、法人格の消滅(七三)
⇒解説
 
第4節 補則〔平三法七九本節追加・平一一法八七節名改正〕
*第4節 主務官庁の権限の委任
第83条の2〔権限の委任〕
本章に定めたる主務官庁の権限は政令の定むる所に依り其全部又は一部を国に所属する行政庁に委任することを得
〔平一一法八七本条改正〕
*主務官庁の権限(三四・三八2・五九(3)・六七・七一・七二2・七七・八三)、政令(公益法人に係る主務官庁の権限の委任等に関する政令)
⇒解説
*第83条ノ2 本章ニ定メタル主務官庁ノ権限ハ政令ノ定ムル所ニ依リ其全部又ハ一部ヲ行政庁ニ委任スルコトヲ得
 
第83条の3〔都道府県知事等による事務処理〕
本章に定めたる主務官庁の権限に属する事務は政令の定むる所に依り都道府県の知事其他の執行機関に於て其全部又は一部を処理することとすることを得
 前項の場合に於て主務官庁は政令の定むる所に依り法人に対する監督上の命令又は設立許可の取消に付き都道府県の執行機関に対し指示を為すことを得
 第一項の場合に於て主務官庁は都道府県の執行機関が其事務を処理するに当りて依るべき基準を定むることを得
 主務官庁が前項の基準を定めたるときは之を告示することを要す〔施行は平12・4・1〕
〔平一一法八七本条追加〕
 
第5節 罰則〔平三法七九本節繰下〕
第84条〔役員に対する罰則〕
法人の理事、監事又は清算人は左の場合に於ては五十万円以下の過料に処せらる
一 本章に定めたる登記を為すことを怠りたるとき
二 第五十一条〔財産目録・社員名簿〕の規定に違反し又は財産目録若くは社員名簿に不正の記載を為したるとき
三 第六十七条〔法人の業務の監督〕又は第八十二条〔解散・清算の監督〕の場合に於て主務官庁、其権限の委任を受けたる国に所属する行政庁若くは其権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関又は裁判所の検査を妨けたるとき
三の二 主務官庁又は其権限の委任を受けたる国に所属する行政庁若くは其権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関の監督上の命令に違反したるとき
四 官庁、主務官庁の権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関又は総会に対し不実の申立を為し又は事実を隠蔽したるとき
五 第七十条〔法人の破産〕又は第八十一条〔清算法人の破産〕の規定に反し破産宣告の請求を為すことを怠りたるとき
六 第七十九条〔債権申出の公告〕又は第八十一条〔清算法人の破産〕に定めたる公告を為すことを怠り又は不正の公告を為したるとき
〔昭五四法六八・平三法七九・平一一法八七本条改正〕
*理事(五二)、監事(五八)、清算人(七四)、過料の裁判(非訟二〇六−二〇八ノ二)、本章に定めた登記(四五−四九・七七)
⇒解説
*第84条 〔同〕
一・二〔同〕
三 第六十七条又は第八十二条の場合に於て主務官庁若くは其権限の委任を受けたる行政庁又は裁判所の検査を妨けたるとき
三の二 主務官庁又は其権限の委任を受けたる行政庁の監督上の命令に違反したるとき
四 官庁又は総会に対し不実の申立を為し又は事実を隠蔽したるとき
五・六〔同〕
 
第84条の2〔公益法人名称使用禁止の罰則〕
第三十四条の二の規定に違反したる者は十万円以下の過料に処せらる
〔昭五四法六八本条追加〕
*過料の裁判(非訟二〇六−二〇八ノ二)
⇒解説
 
第3章 物
第85条〔物の意義〕
本法に於て物とは有体物を謂ふ
*不動産と動産(八六)、電気と財物(刑二四五)、一個の物とみなされるもの(鉄道抵当法二、軌道ノ抵当ニ関スル法律一)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第86条〔不動産と動産〕
土地及ひ其定著物は之を不動産とす
 此他の物は総て之を動産とす
 無記名債権は之を動産と看做す
* 不動産物権の対抗要件(一七七)、不動産とみなされるもの(工抵一四、鉱抵三、立木二1)、不動産の規定の準用(鉱一二・七一)、土地の規定の準用(漁二三1)、建物(不登準則一三六)、 動産物権の対抗要件(一七八)、鉱物の取扱い(鉱二・三)、動産物権の即時取得(一九二)、 無記名債権の譲渡(四七三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第87条〔主物と従物〕
物の所有者か其物の常用に供する為め自己の所有に属する他の物を以て之に附属せしめたるときは其附属せしめたる物を従物とす
 従物は主物の処分に随ふ
* 船舶の従物(商六八五)、 船舶抵当権と属具(商八四八2)、抵当権と附加物(三七〇)、類似規定(区分所有一五)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第88条〔天然果実と法定果実〕
物の用方に従ひ収取する産出物を天然果実とす
 物の使用の対価として受くへき金銭其他の物を法定果実とす
*天然果実の取得(八九1)、法定果実の取得(八九2)、占有者と果実(一八九・一九〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第89条〔果実の取得〕
天然果実は其元物より分離する時に之を収取する権利を有する者に属す
 法定果実は之を収取する権利の存続期間日割を以て之を取得す
*果実の収取権者(一八九1・二〇六・二六五・二七〇・三五六・五七五1・五九三・六〇一・八二八・九九二)、特に果実に対する抵当権の効力(三七一)、 天然果実(八八1)、天然果実と差押え(民執一二二1・一二六)、 法定果実(八八2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第4章 法律行為
第1節 総則
第90条〔公序良俗違反〕
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とす
*公の秩序(九一九二・二八〇)、慣習法(法例二)、外国法との関係(法例三三、遺言準拠八、扶養準拠八1、民訴一一八)、会社解散命令の事由(商五八1(1)、有四)、不法原因給付(七〇八)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第91条〔任意規定と異なる意思表示〕
法律行為の当事者か法令中の公の秩序に関せさる規定に異なりたる意思を表示したるときは其意思に従ふ
*公序良俗違反(九〇)、任意規定と異なる慣習(九二)、公の秩序と地役権(二八〇)、片面的強行規定(借地借家二一・三〇・三七)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第92条〔事実たる慣習〕
法令中の公の秩序に関せさる規定に異なりたる慣習ある場合に於て法律行為の当事者か之に依る意思を有せるものと認むへきときは其慣習に従ふ
*公の秩序(九〇九一)、慣習法(法例二)、商慣習法(商一)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第2節 意思表示
第93条〔心裡留保〕
意思表示は表意者か其真意に非さることを知りて之を為したる為め其効力を妨けらるることなし但相手方か表意者の真意を知り又は之を知ることを得へかりしときは其意思表示は無効とす
*身分行為の場合(七四二(1)・八〇二(1))、代理行為の場合(一〇一1)、本条但書の不適用(商一七五5)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第94条〔通謀虚偽表示〕
相手方と通して為したる虚偽の意思表示は無効とす
 前項の意思表示の無効は之を以て善意の第三者に対抗することができない(ことを得す)
*身分行為の場合(七四二(1)・八〇二(1))、代理行為の場合(一〇一1)、 無効行為の追認(一一九
⇒解説
⇒判例要旨
 
第95条〔錯誤〕
意思表示は法律行為の要素に錯誤ありたるときは無効とす但表意者に重大なる過失ありたるときは表意者自ら其無効を主張することができない(ことを得す)
*身分行為の場合(七四二(1)・八〇二(1))、代理行為の場合(一〇一1)、無効行為の追認(一一九)、売買目的物の隠れた瑕疵(五七〇)、和解と錯誤(六九六)、弁済者の錯誤と不当利得(七〇六・七〇七)、株式引受けと錯誤(商一九一・二八〇ノ一二)、交互計算と錯誤(商五三二)
⇒判例要旨
 
第96条〔詐欺と強迫による意思表示〕
詐欺又は強迫に因る意思表示は之を取消すことを得
 或人に対する意思表示に付き第三者か詐欺を行ひたる場合に於ては相手方か其事実を知りたるときに限り其意思表示を取消すことを得
 詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の第三者に対抗することができない(ことを得す)
*身分行為と詐欺・強迫(七四七・八〇八1・八九一(3)(4)・一〇二五)、代理行為の場合(一〇一1)、法律行為の取消し(一二〇一二六)、詐欺罪(刑二四六)、恐喝罪(刑二四九)、脅迫罪(刑二二二)、株式引受けと詐欺・強迫(商一九一・二八〇ノ一二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第97条〔隔地者に対する意思表示〕
隔地者に対する意思表示は其通知の相手方に到達したる時より其効力を生す
 表意者か通知を発したる後に死亡し又は能力を失ふも意思表示は之か為めに其効力を妨けらるることなし
*送達の特例(民訴九八1、民保一七、税通一二1等)、 契約成立に関する特則(五二六1、商五〇八1・五〇九)、 本項に関する特則(五二五)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第97条の2〔公示による意思表示〕
意思表示は表意者か相手方を知ること能はす又は其所在を知ること能はさるときは公示の方法に依りて之を為すことを得
 前項の公示は公示送達に関する民事訴訟法の規定に従ひ裁判所の掲示場に掲示し且其掲示ありたることを官報及ひ新聞紙に少くも一回掲載して之を為す但裁判所相当と認むるときは官報及ひ新聞紙の掲載に代へ市役所、町村役場又は之に準すへき施設の掲示場に掲示すへきことを命することを得
 公示に依る意思表示は最後に官報若くは新聞紙に掲載したる日又は其掲載に代はる掲示を始めたる日より二週間を経過したる時に相手方に到達したるものと看做す但表意者か相手方を知らす又は其所在を知らさるに付き過失ありたるときは到達の効力を生せす
 公示に関する手続は相手方を知ること能はさる場合に於ては表意者の住所地、相手方の所在を知ること能はさる場合に於ては相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属す
 裁判所は表意者をして公示に関する費用を予納せしむることを要す
〔昭一三法一八本条追加〕
* 公示送達(民訴一一〇−一一二)
⇒解説
 
*〔平11法149改正〕
第98条〔意思表示の受領能力〕
意思表示の相手方か之を受けたる時に未成年者又は成年被後見人なりしときは其意思表示を以て之に対抗することができない(ことを得す)但其法定代理人か之を知りたる後は此限に在らす
第98条
意思表示の相手方か之を受けたる時に未成年者又は禁治産者なりしときは其意思表示を以て之に対抗することができない(ことを得す)但其法定代理人か之を知りたる後は此限に在らす
*未成年者(三・四・七五三)、禁治産者(七−九)、法定代理人(八一八・八一九・八三九−八四一)
⇒解説
第3節 代理

第99条〔代理行為の要件と効力顕名主義・〕

代理人か其権限内に於て本人の為めにすることを示して為したる意思表示は直接に本人に対して其効力を生す
 前項の規定は第三者か代理人に対して為したる意思表示に之を準用す
*法定代理人の例(二五二六二八・八一八・八一九・八二四・八三九−八四一・八五九・九四三2・九五二)、任意代理人の例(商三八・四六・七〇〇・七一三)、代理人の能力(一〇二)、代理人の権限(一〇三)、表見代理(一〇九一一〇一一二)、無権代理(一一三一一八)、本人のためにすることの表示なき行為(一〇〇、商五〇四)、民事訴訟と代理(民訴二八以下・五四以下)、非訟事件手続と代理(非訟六)、占有と代理(一八一)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第100条〔本人のためにすることを示さぬ意思表示〕
代理人か本人の為めにすることを示さすして為したる意思表示は自己の為めに之を為したるものと看做す但相手方か其本人の為めにすることを知り又は之を知ることを得へかりしときは前条第一項の規定を準用す
*顕名主義(九九)、本条の特則(商五〇四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第101条〔代理行為の瑕疵〕
意思表示の効力か意思の欠缺、詐欺、強迫又は或事情を知りたること若くは之を知らさる過失ありたることに因りて影響を受くへき場合に於て其事実の有無は代理人に付き之を定む
 特定の法律行為を為すことを委託せられたる場合に於て代理人か本人の指図に従ひ其行為を為したるときは本人は其自ら知りたる事情に付き代理人の不知を主張することができない(ことを得す)其過失に因りて知らさりし事情に付き亦同し
* 意思の欠缺(九三九四九五)、詐欺・強迫(九六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第102条〔代理人の能力〕
代理人は能力者たることを要せす
*無能力者(一二
⇒解説
 
第103条〔代理人の権限〕
権限の定なき代理人は左の行為のみを為す権限を有す
一 保存行為
二 代理の目的たる物又は権利の性質を変せさる範囲内に於て其利用又は改良を目的とする行為
*権限の定めの例(二八五三七八・八二四・八五九・九一八3・九四三2・九五三、商三八・四六・七〇〇・七一三等)
⇒解説
 
第104条〔任意代理人の復任権〕
委任に因る代理人は本人の許諾を得たるとき又は已むことを得さる事由あるときに非されは復代理人を選任することができない(ことを得す)
*委任(六四三−六五六)、復代理人(一〇五一〇七)、法定代理人の復任権(一〇六)、理事の復任権(五五)、訴訟と復代理(民訴五五2(5))
⇒解説
 
第105条〔復代理人選任の責任〕
代理人か前条の場合に於て復代理人を選任したるときは選任及ひ監督に付き本人に対して其責に任す
 代理人か本人の指名に従ひて復代理人を選任したるときは其不適任又は不誠実なることを知りて之を本人に通知し又は之を解任することを怠りたるに非されは其責に任せす
* 法定代理人の場合(一〇六)、本条の準用(六五八2)、類似規定(代船長=商七〇七後段)
⇒解説
 
第106条〔法定代理人の復任権〕
法定代理人は其責任を以て復代理人を選任することを得但已むことを得さる事由ありたるときは前条第一項に定めたる責任のみを負ふ
*法定代理人の例(二五二六二八・八一八・八一九・八二四・八三九−八四一・八五九・九四三2・九五二)、任意代理人の場合(一〇四一〇五)、遺言執行者の復任権(一〇一六)
⇒解説
 
第107条〔復代理人の権限〕
復代理人は其権限内の行為に付き本人を代表す
 復代理人は本人及ひ第三者に対して代理人と同一の権利義務を有す
*復代理人(一〇四一〇六)、代理人の権利義務(九九一〇三)、本条二項の準用(六五八2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第108条〔自己契約・双方代理の禁止〕
何人と雖も同一の法律行為に付き其相手方の代理人と為り又は当事者双方の代理人と為ることができない(ことを得す)但債務の履行に付ては此限に在らす
*利益相反行為に関する他の規定(五七・八二六・八五一(4)・八六〇・八六六)、社員の自己契約(商七五・一四七)、取締役の自己契約(商二六五、有三〇)、取締役と会社間の訴えの代表(商二七五ノ四、有二七ノ二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第109条〔表見代理−代理権授与の表示があるとき〕
第三者に対して他人に代理権を与へたる旨を表示したる者は其代理権の範囲内に於て其他人と第三者との間に為したる行為に付き其責に任す
*表見支配人(商四二)、権限ありとみなされる使用人(商四四)、表見代表(商二六二、有三二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第110条〔同前−代理権踰越のとき〕
代理人か其権限外の行為を為したる場合に於て第三者か其権限ありと信すへき正当の理由を有せしときは前条の規定を準用す
*代理権の制限と善意の第三者(五四・八二五、商七2・三八3・七八2・二六一3・七一四、有三二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
*〔平11法149改正〕
第111条 〔代理権消滅の事由〕同
一〔同〕
二 代理人の死亡若くは破産又は代理人が後見開始の審判を受けたること
 〔同〕
第111条〔代理権消滅の事由〕
代理権は左の事由に因りて消滅す
一 本人の死亡
二 代理人の死亡、禁治産又は破産
 此他委任に因る代理権は委任の終了に因りて消滅す
*他の代理権消滅事由(二六・七六・八三四・八三五・八三七・八四四−八四六)、 商行為代理の特則(商五〇六)、禁治産(七)、破産(破一二六−一二九)、 委任の終了(六五一・六五三・六五四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第112条〔表見代理−代理権消滅後〕
代理権の消滅は之を以て善意の第三者に対抗することができない(ことを得す)但第三者か過失に因りて其事実を知らさりしときは此限に在らす
*代理権の消滅(一一一)、委任の終了と相手方(六五五、親権者への準用=八三一、後見人への準用=八七四)、代理権・代表権の消滅と登記(商一二・四〇・六九九3)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第113条〔無権代理〕
代理権を有せさる者か他人の代理人として為したる契約は本人か其追認を為すに非されは之に対して其効力を生せす
 追認又は其拒絶は相手方に対して之を為すに非されは之を以て其相手方に対抗することができない(ことを得す)但相手方か其事実を知りたるときは此限に在らす
*表見代理(一〇九一一〇一一二)、無権代理行為の取消し(一一五一一八)、無権代理行為の追認(一一六)、無権代理人の責任(一一七
⇒解説
⇒判例要旨
 
 
第114条〔相手方の催告権〕
前条の場合に於て相手方は相当の期間を定め其期間内に追認を為すや否やを確答すへき旨を本人に催告することを得若し本人か其期間内に確答を為ささるときは追認を拒絶したるものと看做す
*追認(一一六
⇒解説
 
第115条〔相手方の取消権〕
代理権を有せさる者の為したる契約は本人の追認なき間は相手方に於て之を取消すことを得但契約の当時相手方か代理権なきことを知りたるときは此限に在らす
*無権代理(一一三)、追認(一一六
⇒解説
 
第116条〔無権代理行為の追認〕
追認は別段の意思表示なきときは契約の時に遡りて其効力を生す但第三者の権利を害することができない(ことを得す)
*追認の方法(一一三2)、追認の時期(一一四一一五
⇒解説
⇒判例要旨
 
第117条〔無権代理人の責任〕
他人の代理人として契約を為したる者か其代理権を証明すること能はす且本人の追認を得さりしときは相手方の選択に従ひ之に対して履行又は損害賠償の責に任す
 前項の規定は相手方か代理権なきことを知りたるとき若くは過失に因りて之を知らさりしとき又は代理人として契約を為したる者か其能力を有せさりしときは之を適用せす
*無権代理(一一三)、追認(一一六)、自称社員の責任(商八三)、手形行為の特則(手八・七七2、小一一)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第118条〔単独行為の無権代理〕
単独行為に付ては其行為の当時相手方か代理人と称する者の代理権なくして之を為すことに同意し又は其代理権を争はさりしときに限り前五条の規定を準用す代理権を有せさる者に対し其同意を得て単独行為を為したるとき亦同し
*単独行為の例(一二三・五〇五・五一九・五四〇・九六〇)
⇒解説
 
第4節 無効及ひ取消
第119条〔無効行為の追認〕
無効の行為は追認に因りて其効力を生せす但当事者か其無効なることを知りて追認を為したるときは新なる行為を為したるものと看做す
*無効行為(九〇・九三−九五・一三一−一三四・七四二・八〇二、利息一・四)、取り消しうべき行為の追認(一二二−一二五)
⇒解説
 
*〔平11法149改正〕
第120条 〔取消権者〕
能力の制限に因りて取消し得へき行為は制限能力者又は其代理人、承継人若くは同意を為すことを得る者に限り之を取消すことを得
詐欺又は強迫に因りて取消し得べき行為は瑕疵ある意思表示を為したる者又は其代理人若くは承継人に限り之を取消すことを得
⇒判例要旨
第120条〔取消権者〕
取消し得へき行為は無能力者若くは瑕疵ある意思表示を為したる者、其代理人又は承継人に限り之を取消すことを得
〔昭二二法二二二第二項削除〕
*取り消しうべき行為(四・九・一二・九六)、取消しの効果(一二一)、本条以外の取消し(書面によらない贈与の取消し=五五〇、夫婦間の契約の取消し=七五四、後見関係における取消し=八六五・八六六・八七二、遺言の取消し=一〇二二−一〇二七)
⇒解説
 
*〔平11法149改正〕
第121条 〔取消しの効果〕
取消したる行為は初より無効なりしものと看做す但制限能力者は其行為に因りて現に利益を受くる限度に於て償還の義務を負ふ
⇒判例要旨
第121条〔取消しの効果〕
取消したる行為は初より無効なりしものと看做す但無能力者は其行為に因りて現に利益を受くる限度に於て償還の義務を負ふ
*取消しの効果の制限(九六3)、身分行為の取消しの不遡及(婚姻=七四八、縁組=八〇八1)、返還義務の範囲(七〇三・七〇四・七四八2,3・八〇八1)、本条の適用(八六五2・八六六2・八六七)、本条の準用(八七二2)
⇒解説
 
第122条〔追認の効果〕
取消し得へき行為は第百二十条に掲けたる者か之を追認したるときは初より有効なりしものと看做す但第三者の権利を害することができない(ことを得す)
*取り消しうべき行為(四・九・一二・九六)、追認とみなされる場合(一九1,2・一二五)、無効行為の追認(一一九)、本条の適用(八六五2・八六六2)、本条の準用(八七二2)
⇒解説
 
第123条〔取消し・追認の方法〕
取消し得へき行為の相手方か確定せる場合に於て其取消又は追認は相手方に対する意思表示に依りて之を為す
*取り消しうべき行為(四・九・一二・九六)、本条の適用(八六五2・八六六2・八六七)、本条の準用(八七二2)
⇒解説
 
*〔平11法149改正〕
第124条 〔同〕
 成年被後見人が能力者と為りたる後其行為を了知したるときは其了知したる後に非されは追認を為すことができない(ことを得す)
 前二項の規定は法定代理人又は制限能力者の保佐人若くは補助人か追認を為す場合には之を適用せす
第124条〔追認の要件〕
追認は取消の原因たる情況の止みたる後之を為すに非されは其効なし
 禁治産者か能力を回復したる後其行為を了知したるときは其了知したる後に非されは追認を為すことができない(ことを得す)
 前二項の規定は法定代理人か追認を為す場合には之を適用せす
〔昭二二法二二二第三項改正〕
*本条の適用(八六五2・八六六2・八六七)、本条の準用(八七二2)、 追認(一二二・一二三)、 禁治産者(七)、 法定代理人(八一八・八一九・八三九−八四一)
⇒解説
 
第125条〔法定追認〕
前条の規定に依り追認を為すことを得る時より後取消し得へき行為に付き左の事実ありたるときは追認を為したるものと看做す但異議を留めたるときは此限に在らす
一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取消し得へき行為に因りて取得したる権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
*取り消しうべき行為(四・九・一二・九六)、追認(一二二−一二四)、更改(五一三)、強制執行(民執二二−一七三)、本条の適用(八六五2・八六六2・八六七)、本条の準用(八七二2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第126条〔取消権の消滅時効〕
取消権は追認を為すことを得る時より五年間之を行はさるときは時効に因りて消滅す行為の時より二十年を経過したるとき亦同し
*追認しうる時期(一二四)、消滅時効(一六六以下)、本条の適用(八六五2・八六六2・八六七)、本条の準用(八七二2)
⇒解説
 
第5節 条件及ひ期限
第127条〔条件成就の効果〕
停止条件附法律行為は条件成就の時より其効力を生す
 解除条件附法律行為は条件成就の時より其効力を失ふ
 当事者か条件成就の効果を其成就以前に遡らしむる意思を表示したるときは其意思に従ふ
*条件付法律行為(一二八−一三四)、条件を付しえぬ行為の例(五〇六1、手一(2)・一二1・二六1・七五(2)・七七1、小一(2)・一五1)、 停止条件付遺言(九八五2)、停止条件付法律行為の効力(三八〇・五三五)、 解除条件を付しえぬ行為(農地二〇8)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第128条〔条件付法律行為より生ずべき利益の不可侵〕
条件附法律行為の各当事者は条件の成否未定の間に於て条件の成就に因り其行為より生すへき相手方の利益を害することができない(ことを得す)
*条件付権利の効力(一二九、一三〇、五三五)、条件成就の妨害(一三〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第129条〔条件付権利の効力〕
条件の成否未定の間に於ける当事者の権利義務は一般の規定に従ひ之を処分、相続、保存又は担保することを得
*保存(一六六2)、仮登記(不登二)、条件付権利義務の効力(三八〇・五一三2・五三五等)
⇒解説
 
第130条〔条件成就の妨害〕
条件の成就に因りて不利益を受くへき当事者か故意に其条件の成就を妨けたるときは相手方は其条件を成就したるものと看做すことを得
*条件付法律行為・権利の効力(一二八)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第131条〔既成条件〕
条件か法律行為の当時既に成就せる場合に於て其条件か停止条件なるときは其法律行為は無条件とし解除条件なるときは無効とす
 条件の不成就か法律行為の当時既に確定せる場合に於て其条件か停止条件なるときは其法律行為は無効とし解除条件なるときは無条件とす
 前二項の場合に於て当事者か条件の成就又は不成就を知らさる間は第百二十八条及ひ第百二十九条の規定を準用す
*条件成就の効果(一二七)、無効な行為(一一九)
⇒解説
 
第132条〔不法条件〕
不法の条件を附したる法律行為は無効とす不法行為を為ささるを以て条件とするもの亦同し
*不法(九〇)、無効な行為(一一九)、不法行為(七〇九)
⇒解説
 
第133条〔不能条件〕
不能の停止条件を附したる法律行為は無効とす
 不能の解除条件を附したる法律行為は無条件とす
* 停止条件付法律行為(一二七1)、無効な行為(一一九)、 解除条件付法律行為(一二七2)
⇒解説
 
第134条〔純粋随意条件〕
停止条件附法律行為は其条件か単に債務者の意思のみに係るときは無効とす
*停止条件付法律行為(一二七1)、無効な行為(一一九)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第135条〔期限到来の効果〕
法律行為に始期を附したるときは其法律行為の履行は期限の到来するまて之を請求することができない(ことを得す)
 法律行為に終期を附したるときは其法律行為の効力は期限の到来したる時に於て消滅す
*期限を付しえぬ行為(五〇六1)、不確定期限を付しえぬ行為(農地二〇8)、 履行期(四一二)、代金支払いの期限(五七三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第136条〔期限の利益〕
期限は債務者の利益の為めに定めたるものと推定す
 期限の利益は之を 棄することを得但之か為めに相手方の利益を害することができない(ことを得す)
*期限の利益の喪失(一三七)、期限の利益の放棄(五九一2、商一二五・一四七・四三〇、有七五)、期限の利益放棄の特則(手四〇2・七七1(3))
⇒解説
⇒判例要旨
 
第137条〔期限の利益の喪失〕
左の場合に於ては債務者は期限の利益を主張することができない(ことを得す)
一 債務者か破産の宣告を受けたるとき
二 債務者か担保を毀滅し又は之を減少したるとき
三 債務者か担保を供する義務を負ふ場合に於て之を供せさるとき
*破産の宣告(破一二六−一二九)、破産と期限付債権の弁済期(破一七・五二)、債務者が担保を供する義務(四五〇・四五一・六五〇2等)
⇒解説
 
第5章 期間
第138条〔本章の適用範囲〕
期間の計算法は法令、裁判上の命令又は法律行為に別段の定ある場合を除く外本章の規定に従ふ
*別段の定めの例(年計1、戸四三、手三六・三七・七二−七四・七七1(9)、小三〇・六〇−六二、刑二二−二四、刑訴五五・五六、国会一四、税通一〇1、特許三)、民事訴訟における期間(民訴九五以下)、非訟事件における期間(非訟一〇)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第139条〔期間の起算点〕
期間を定むるに時を以てしたるときは即時より之を起算す
*同一規定(刑訴五五1)
⇒解説
 
第140条〔同前〕
期間を定むるに日、週、月又は年を以てしたるときは期間の初日は之を算入せす但其期間か午前零時より始まるときは此限に在らす
*初日不算入(手七三・七七1(9)、小六一1、刑訴五五1、税通一〇1(1)等)、初日算入(年計1、戸四三、刑二三1・二四1等)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第141条〔期間の満了点〕
前条の場合に於ては期間の末日の終了を以て期間の満了とす
*取引時間の定めのあるとき(商五二〇)
⇒解説
 
第142条〔同前〕
期間の末日か大祭日、日曜日其他の休日に当たるときは其日に取引を為ささる慣習ある場合に限り期間は其翌日を以て満了す
*休日(祝日二・三、手八七、小七五、銀一五)、慣習(九二)、同種規定(手七二・七七1(9)、小六〇、民訴九五2、刑訴五五3、税通一〇2、特許三2等)
⇒解説
 
第143条〔暦による計算〕
期間を定むるに週、月又は年を以てしたるときは暦に従ひて之を算す
 週、月又は年の始より期間を起算せさるときは其期間は最後の週、月又は年に於て其起算日に応当する日の前日を以て満了す但月又は年を以て期間を定めたる場合に於て最後の月に応当日なきときは其月の末日を以て満期日とす
*本条の準用(年計2)、同種規定(手三六、刑二二、刑訴五五2、税通一〇1(2)(3)等)
⇒解説
 
第6章 時効
第1節 総則
第144条〔時効の遡及効〕
時効の効力は其起算日に遡る
*消滅時効の起算日(一六六)、時効消滅した債権による相殺(五〇八)、民法の規定の準用(会三一2、地自二三六3、税通七二3・七四2、地税一八3・一八の三2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第145条〔時効の援用〕
時効は当事者か之を援用するに非されは裁判所之に依りて裁判を為すことができない(ことを得す)
*連帯債務・連帯保証の場合(四三九・四五八)、援用を要しない場合(会三一1、地自二三六2、税通七二2・七四2、地税一八2・一八の三2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第146条〔時効利益の放棄〕
時効の利益は予め之を 棄することができない(ことを得す)
*放棄ができない場合(会三一1、地自二三六2、税通七二2・七四2、地税一八2・一八の三2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第147条〔時効の中断事由〕
時効は左の事由に因りて中断す
一 請求
二 差押、仮差押又は仮処分
三 承認
*中断の効力(一四八)、他の中断事由(一六四・一六五・二九〇、手八六1、小七三1、和附則2、会更五、会三二、地自二三六4、税通七三、地税一八の二)、中断後の進行(一五七)、請求(一四九−一五三)、差押え・仮差押え・仮処分(一五四・一五五)、承認(一五六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第148条〔時効中断の効力〕
前条の時効中断は当事者及ひ其承継人の間に於てのみ其効力を有す
*中断事由(一四七)、本条に関連する特則(二八四2・二九二・四三四・四五七1・四五八、手七一・七七1(8)、小五二)
⇒解説
 
第149条〔裁判上の請求〕
裁判上の請求は訴の却下又は取下の場合に於ては時効中断の効力を生せす
*請求(一四七(1))、裁判上の請求(民訴一三三1、民調一九、家審二六2、手八六、小七三)、訴えの却下(民訴一四〇・三五五1)、訴えの取下げ(民訴二六一−二六三)、裁判上の請求とみなされるもの(商三九六、和附則2、会更七七等)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第150条〔支払督促〕
支払督促は債権者か法定の期間内に仮執行の宣言の申立を為ささるに因り其効力を失ふときは時効中断の効力を生せす
〔大一五法六九・平八法一一〇本条改正〕
*請求(一四七(1))、支払督促(民訴三八二−三九七)、法定の期間(民訴三九二)、仮執行の申立て(民訴三九一)
⇒解説
 
第151条〔和解の呼出し・任意出頭〕
和解の為めにする呼出は相手方か出頭せす又は和解の調はさるときは一个月内に訴を提起するに非されは時効中断の効力を生せす任意出頭の場合に於て和解の調はさるとき亦同し
*請求(一四七(1))、和解の呼出し(民訴二七五)、任意出頭(民訴二七三)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第152条〔破産手続参加〕
破産手続参加は債権者か之を取消し又は其請求か却下せられたるときは時効中断の効力を生せす
*請求(一四七(1))、破産手続参加(破二二八)、類似規定(会更五)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第153条〔催告〕
催告は六个月内に裁判上の請求、和解の為めにする呼出若くは任意出頭、破産手続参加、差押、仮差押又は仮処分を為すに非されは時効中断の効力を生せす
*請求(一四七(1))、裁判上の請求(一四九)、和解の呼出し・任意出頭(一五一)、破産手続参加(一五二)、差押え・仮差押え・仮処分(一五四・一五五)、本条の特則(会三二、地自二三六4、税通七三1、地税一八の二1、健保四2等)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第154条〔差押え・仮差押え・仮処分〕
差押、仮差押及ひ仮処分は権利者の請求に因り又は法律の規定に従はさるに因りて取消されたるときは時効中断の効力を生せす
*差押え・仮差押え・仮処分(一四七(2)・一五五)、差押え(民執四五・九三・一一二・一二二・一四三)、仮差押え(民保四七−五二)、仮処分(民保五二−五七)、差押え等の取消し(民執四〇・五三・五四・六三・一二八−一三〇、民保五一)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第155条〔同前〕
差押、仮差押及ひ仮処分は時効の利益を受くる者に対して之を為ささるときは之を其者に通知したる後に非されは時効中断の効力を生せす
*差押え・仮差押え・仮処分(一四七(2)・一五四)、時効中断の当事者(一四八)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第156条〔承認〕
時効中断の効力を生すへき承認を為すには相手方の権利に付き処分の能力又は権限あることを要せす
*承認(一四七(3)・一六六2但・一六八2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第157条〔中断後の時効の進行〕
中断したる時効は其中断の事由の終了したる時より更に其進行を始む
 裁判上の請求に因りて中断したる時効は裁判の確定したる時より更に其進行を始む
*特則(税通七三1、地税一八の二1)、 中断の事由(一四七)、 裁判上の請求(一四九)、判決の確定(民訴一一四−一一八)、同種規定(手八六2、小七三2)
⇒解説
⇒判例要旨
 
*〔平11法149改正〕
第158条〔未成年者・成年被後見人に対する時効の停止〕
時効の期間満了前六箇月内に於て未成年者又は成年被後見人か法定代理人を有せさりしときは其者か能力者と為り又は法定代理人か就職したる時より六箇月内は之に対して時効完成せす
第158条〔無能力者に対する時効の停止〕
時効の期間満了前六个月内に於て未成年者又は禁治産者か法定代理人を有せさりしときは其者か能力者と為り又は法定代理人か就職したる時より六个月内は之に対して時効完成せす
*未成年者(三・七五三)、禁治産者(七)、法定代理人(八一八・八一九・八三九−八四一)
⇒解説
⇒判例要旨
*〔平11法149改正〕
第159条〔財産管理者に対する未成年者・成年被後見人の権利の時効の停止〕
未成年者又は成年被後見人か其財産を管理する父、母又は後見人に対して有する権利に付ては其者か能力者と為り又は後任の法定代理人か就職したる時より六箇月内は時効完成せす
第159条の2〔夫婦間の権利の時効の停止〕
夫婦の一方か他の一方に対して有する権利に付ては婚姻解消の時より六个月内は時効完成せす
〔昭二二法二二二本条追加〕
*夫婦間の契約取消権(七五四)、夫婦の財産関係(七五五・七五六・七五八−七六二)
⇒解説
 
第160条〔相続財産に対する時効の停止〕
相続財産に関しては相続人の確定し、管理人の選任せられ又は破産の宣告ありたる時より六个月内は時効完成せす
*相続財産(八九六)、相続人の確定(九一五・九二〇・九二二)、管理人の選任(九五二)、破産の宣告(破一二九)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第161条〔天災・事変による時効の停止〕
時効の期間満了の時に当たり天災其他避くへからさる事変の為め時効を中断すること能はさるときは其妨碍の止みたる時より二週間内は時効完成せす
*時効の中断(一四七)、不可抗力による期間の伸長(手五四、小四七)
⇒解説
 
第2節 取得時効
第162条〔所有権の取得時効〕
二十年間所有の意思を以て平穏且公然に他人の物を占有したる者は其所有権を取得す
 十年間所有の意思を以て平穏且公然に他人の不動産を占有したる者か其占有の始善意にして且過失なかりしときは其不動産の所有権を取得す
*所有の意思(一八五・一八六)、占有(一八〇・一八一)、占有の平穏・公然・善意・継続の推定(一八六)、所有権(二〇六以下)、所有権以外の取得時効(一六三)、取得時効の中断(一六四)、取得時効に相当する効果に関する規定(二八九・三九七)、動産の即時取得(一九二)、 不動産(八六1)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第163条〔所有権以外の財産権の取得時効〕
所有権以外の財産権を自己の為めにする意思を以て平穏且公然に行使する者は前条の区別に従ひ二十年又は十年の後其権利を取得す
*所有権の取得時効(一六二)、自己のためにする意思(一八〇・二〇五)、準占有(二〇五)、占有の平穏・公然・善意・継続の推定(一八六)、地役権の取得時効(二八三・二八四)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第164条〔取得時効の自然中断〕
第百六十二条の時効は占有者か任意に其占有を中止し又は他人の為めに之を奪はれたるときは中断す
*占有の侵奪(二〇〇・二〇一3)、占有権の消滅(二〇三)、時効の中断(一四七)、本条の準用(一六五)
⇒解説
 
第165条〔同前〕
前条の規定は第百六十三条の場合に之を準用す
 
第3節 消滅時効
第166条〔消滅時効の進行〕
消滅時効は権利を行使することを得る時より進行す
 前項の規定は始期附又は停止条件附権利の目的物を占有する第三者の為めに其占有の時より取得時効の進行することを妨けす但権利者は其時効を中断する為め何時にても占有者の承認を求むることを得
*時効の起算日(一四四)、地役権の消滅時効の起算点(二九一)、留置権と消滅時効(三〇〇)、抵当権と消滅時効(三九六・三九七)、 始期付または停止条件付権利(一三五1・一二七1)、取得時効(一六二以下)、承認(一四七(3)・一五六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第167条〔債権・財産権の消滅時効〕
債権は十年間之を行はさるに因りて消滅す
 債権又は所有権に非さる財産権は二十年間之を行はさるに因りて消滅す
* 債権の消滅時効期間の特則(一六八−一七四・七二四・八三二・八七五・八七六・九三四3・九四七3・九五〇2・九五七2、商五二二、手七〇・七七1(8)、小五一、労基一一五、会三〇、地自二三六1、税通七二1・七四1、地税一八1・一八の三1、健保四1等)、 特則(取消権=一二六、地役権=二九一−二九三、抵当権=三九六・三九七、債権者取消権=四二六、相続回復請求権=八八四、相続承認・放棄の取消権=九一九、遺贈の承認・放棄の取消権=九八九、包括遺贈=九九〇、遺留分減殺請求権=一〇四二)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第168条〔定期金債権の消滅時効〕
定期金の債権は第一回の弁済期より二十年間之を行はさるに因りて消滅す最後の弁済期より十年間之を行はさるとき亦同し
 定期金の債権者は時効中断の証を得る為め何時にても其債務者の承認書を求むることを得
*債権の消滅時効(一六七1)、 定期金債権(六八九−六九四、恩給法四五等)、特則(恩給法五)、 承認(一四七(3)・一五六)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第169条〔定期給付債権の短期消滅時効〕
年又は之より短き時期を以て定めたる金銭其他の物の給付を目的とする債権は五年間之を行はさるに因りて消滅す
*債権の消滅時効(一六七1)
⇒解説
 
第170条〔三年の短期消滅時効の債権〕
左に掲けたる債権は三年間之を行はさるに因りて消滅す
一 医師、産婆及ひ薬剤師の治術、勤労及ひ調剤に関する債権
二 技師、棟梁及ひ請負人の工事に関する債権但此時効は其負担したる工事終了の時より之を起算す
*債権の消滅時効(一六七1)、請負人の債権(六三二・六三三)
⇒解説
 
第171条〔同前〕
弁護士は事件終了の時より公証人は其職務執行の時より三年を経過したるときは其職務に関して受取りたる書類に付き其責を免る
〔昭四一法一一一本条改正〕
*債権の消滅時効(一六七1)
⇒解説
 
第172条〔二年の短期消滅時効の債権〕
弁護士及び公証人の職務に関する債権は其原因たる事件終了の時より二年間之を行はさるに因りて消滅す但其事件中の各事項終了の時より五年を経過したるときは右の期間内と雖も其事項に関する債権は消滅す
〔昭四一法一一一本条改正〕
*債権の消滅時効(一六七1)
⇒解説
 
第173条〔同前〕
左に掲けたる債権は二年間之を行はさるに因りて消滅す
一 生産者、卸売商人及ひ小売商人か売却したる産物及ひ商品の代価
二 居職人及ひ製造人の仕事に関する債権
三 生徒及ひ習業者の教育、衣食及ひ止宿の代料に関する校主、塾主、教師及ひ師匠の債権
*債権の消滅時効(一六七1)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第174条〔一年の短期消滅時効の債権〕
左に掲けたる債権は一年間之を行はさるに因りて消滅す
一 月又は之より短き時期を以て定めたる雇人の給料
二 労力者及ひ芸人の賃金並に其供給したる物の代価
三 運送賃
四 旅店、料理店、貸席及ひ娯遊場の宿泊料、飲食料、席料、木戸銭、消費物代価並に立替金
五 動産の損料
*債権の消滅時効(一六七1)
⇒解説
⇒判例要旨
 
第174条の2〔確定債権の時効期間〕
確定判決に依りて確定したる権利は十年より短き時効期間の定あるものと雖も其時効期間は之を十年とす裁判上の和解、調停其他確定判決と同一の効力を有するものに依りて確定したる権利に付き亦同し
 前項の規定は確定の当時未た弁済期の到来せさる債権には之を適用せす
〔昭一三法一八本条追加〕
*確定判決(民訴一一四−一一八)、確定判決と同一の効力を有するもの(民執二二(7)、民訴二六七・三九六、公催仲裁八〇〇、民調一六、家審二一、破二四二、会更二四五1等)
⇒解説
⇒判例要旨