第5編 相続
5編 相続/882条〜
1章 総則/882条〜
2章 相続人/886条〜
3章 相続の効力/896条〜
1節 総則/896条〜
2節 相続分/900条〜
3節 遺産の分割/906条〜
4章 相続の承認及び放棄/915条〜
1節 総則/915条〜
2節 承認/920条〜
1款 単純承認/920条〜
2款 限定承認/922条〜
3節 放棄/938条〜
5章 財産の分離/941条〜
6章 相続人の不存在/951条〜
7章 遺言/960条〜
1節 総則/960条〜
2節 遺言の方式/967条〜
1款 普通の方式/967条〜
2款 特別の方式/976条〜
3節 遺言の効力/985条〜
4節 遺言の執行/1004条〜
5節 遺言の取消/1022条〜
8章 遺留分/1028条〜
⇒附則
 
第1章 総則
第882条〔相続開始原因〕
相続は、死亡によつて開始する。
*失踪(三〇−三二)、死亡・失踪の届出(戸八六−九四)、相続人の不存在(九五一以下)、相続の承認・放棄(九一五以下)、相続の準拠法(法例二六)
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⇒判例要旨
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第883条〔相続開始の場所〕
相続は、被相続人の住所において開始する。
*住所(二一)、相続開始地(民訴五(14)、家審規九九・一二〇、破一〇六)、相続税の賦課(相税一)
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第884条〔相続回復請求権〕
相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知つた時から五年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様である。
*相続回復の請求(民訴五(14)、家審一七・一八・二四・二五・二六2)、相続開始の時(八八二)
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第885条〔相続財産に関する費用〕
相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する。但し、相続人の過失によるものは、この限りでない。
□前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によつて得た財産を以て、これを支弁することを要しない。
*相続財産管理の費用(九一八・九二六・九四〇・九四三・九四四・九五〇・九五二−九五八)、遺言執行の費用(一〇二一)、共益費用と先取特権(三〇六・三〇七)、破産の場合の財団債権(破四七(1)(3))、相続人の注意義務(九一八・九二六・九四〇・九四四)
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第2章 相続人
第886条〔胎児の相続権〕
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
□前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない。
*権利能力の始期(一ノ三)、胎児の権利能力(七二一・九六五)、胎児の認知と届出(七八三1、戸六一・六五)
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第887条〔子・代襲相続〕
被相続人の子は、相続人となる。
□被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によつて、その相続権を失つたときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。但し、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
□前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によつて、その代襲相続権を失つた場合にこれを準用する。
〔昭三七法四〇本条改正〕
*□嫡出子(七七二・七八九・八〇九)、認知した子(七七九)、胎児(八八六)、□相続の開始(八八二)、同時死亡者の子を含む(三二ノ二)、相続放棄は代襲原因とならず(九三九)、胎児も代襲相続権あり(八八六)、被相続人の直系卑属でない者=養子縁組前の養子の子(七二七)
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第888条〔代襲相続〕
削除〔昭三七法四〇〕
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第889条〔直系尊属・兄弟姉妹〕
左に掲げる者は、第八百八十七条の規定によつて相続人となるべき者がない場合には、左の順位に従つて相続人となる。
第一 直系尊属。但し、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
第二 兄弟姉妹
□第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合にこれを準用する。
〔昭五五法五一第二項改正〕
*□相続人となりえない者(八九一−八九五)、□相続人のない場合(九五八−九五九)
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第890条〔配偶者〕
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、前三条の規定によつて相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
*離婚または婚姻取消しと配偶者の財産分与請求権(七六八・七七一・七四九)
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第891条〔相続欠格事由〕
左に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位に在る者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知つて、これを告発せず、又は告訴しなかつた者。但し、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であつたときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によつて、被相続人が相続に関する遺言をし、これを取り消し、又はこれを変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によつて、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消させ、又はこれを変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
*□一□殺人罪(刑一九九)、自殺関与罪(刑二〇二)、殺人予備罪(刑二〇一)、殺人・自殺関与の未遂罪(刑二〇三)、傷害致死罪(刑二〇五)、□二□告発(刑訴二三九・二四一)、告訴(刑訴二三一・二三二・二四一)、□三□四□遺言の取消変更(一〇二二−一〇二六)、□五□遺言書の不法開封等(一〇〇四・一〇〇五)、私文書偽造罪(刑一五九)
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第892条〔推定相続人の廃除〕
遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があつたときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
*遺言による廃除(八九三)、遺留分を有する推定相続人(一〇二八)、相続人廃除の手続(八九三−八九五、家審九1乙(9)・一七・二六、家審規九九−一〇一・一四三)、廃除の届出(戸九七)、旧法下の廃除の効力(附則二九)
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第893条〔遺言による推定相続人の廃除〕
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければならない。この場合において、廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼつてその効力を生ずる。
*推定相続人の廃除(八九二)、遺言の効力発生時期(九八五)、相続人廃除の審判または調停(家審九1乙(9)・一七・二六、家審規九九−一〇一・一四三)、廃除の遺言があった場合の遺産の管理(八九五)、廃除の届出(戸九七)
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第894条〔廃除の取消し〕
被相続人は、何時でも、推定相続人の廃除の取消を家庭裁判所に請求することができる。
□前条の規定は、廃除の取消にこれを準用する。
*廃除の取消しの審判または調停(家審九1乙(9)・一七・二六、家審規九九−一〇一・一四三)、廃除の取消しの届出(戸九七)
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第895条〔廃除確定前の相続開始〕
推定相続人の廃除又はその取消の請求があつた後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によつて、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。廃除の遺言があつたときも、同様である。
□家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条〔不在者財産管理人の権利義務〕の規定を準用する。
*審判の確定(家審一三・一四、家審規一〇〇・一七)、相続の開始(八八二)、遺産の管理(家審九1甲(23)、家審規九九・一〇二)、遺言による推定相続人の廃除(八九三)、管理人の選任(家審規一〇二・三二)、管理人の権利義務(家審一六、家審規一〇二・三三−三六)
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第3章 相続の効力
第1節 総則
第896条〔相続の一般的効力〕
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
*相続開始の時(八八二)、特別規定(税通五、地税九、民訴一二四1(1)3)、一身専属の権利義務の例(六二五・六五三・八八一、恩給法九1)、単純承認の効果(九二〇)、限定承認の効果(九二二)、放棄の効果(九三九)、祭祀供用物承継の例外(八九七)、相続人数人ある場合(八九八・八九九)、相続の許可(通運八、航空一一六・一二四、港湾運送事業法一八)
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第897条〔祭祀供用物の承継〕
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従つて祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従つて祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が、これを承継する。
□前項本文の場合において慣習が明かでないときは、前項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
*□生前における祭祀供用物の承継(七六九・七四九・七五一2・七七一・八〇八2・八一七)、□承継者の指定(家審九1乙(6)・一五・一七、家審規一〇三)
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第898条〔共同相続−相続財産の共有〕
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
*包括受遺者も含まれる(九九〇)、共同相続人の権利義務の承継(八九九)、遺産分割の遡及効(九〇九)、共同相続人と限定承認(九二三・九三六)、共同相続と放棄(九三九)
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第899条〔同前−権利義務の承継〕
各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
*共同相続人と相続財産の共有(八九八)、包括受遺者の権利義務(九九〇)、債権債務の共同承継(四二七・四二八・四三〇)、相続税の分割課税(相税一一)、相続債務の連帯(税通五3、相税三四)、単独承継の特則(航空一一六・一二四、港湾運送事業法一八)
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第2節 相続分
第900条〔法定相続分〕
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、左の規定に従う。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。但し、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
〔昭五五法五一本条改正〕
*包括受遺者の権利義務(九九〇)、代襲相続分(九〇一)、指定相続分(九〇二)、□一□子(八八七)、配偶者(八九〇)、□二□直系尊属(八八九1(1))、□三□兄弟姉妹(八八九1(2))
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第901条〔代襲相続分〕
第八百八十七条第二項又は第三項〔代襲相続〕の規定によつて相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであつたものと同じである。但し、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであつた部分について、前条の規定に従つてその相続分を定める。
□前項の規定は、第八百八十九条第二項〔兄弟姉妹の子の代襲相続〕の規定によつて兄弟姉妹の子が相続人となる場合にこれを準用する。
〔昭五五法五一第二項改正〕
*法定相続分(九〇〇)、指定相続分(九〇二)
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第902条〔指定相続分〕
被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。但し、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
□被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定によつてこれを定める。
*包括受遺者(九六四・九九〇)、遺留分に関する規定(一〇二八・一〇四四)、遺産の分割に関する遺言(九〇八)
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第903条〔特別受益者の相続分〕
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定によつて算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額を以てその者の相続分とする。
□遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
□被相続人が前二項の規定と異なつた意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に反しない範囲内で、その効力を有する。
*寄与分(九〇四ノ二)、□贈与の価額(九〇四)、遺贈(九六四)、贈与(五四九以下)、分家・廃絶家再興のための贈与(附則三一)、相続開始の時(八八二)、□遺留分に関する規定(一〇二八−一〇四四)
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⇒判例要旨
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第904条〔同前〕
前条に掲げる贈与の価額は、受贈者の行為によつて、その目的たる財産が滅失し、又はその価格の増減があつたときでも、相続開始の当時なお原状のままで在るものとみなしてこれを定める。
*相続開始の時(八八二)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第904条の2〔寄与分〕
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定によつて算定した相続分に寄与分を加えた額をもつてその者の相続分とする。
□前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
□寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることができない。
□第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があつた場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。
〔昭五五法五一本条追加〕
*寄与分審判の手続(家審九1乙(9)の二)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第905条〔相続分の取戻し〕
共同相続人の一人が分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
□前項に定める権利は、一箇月以内にこれを行わなければならない。
*包括受遺者も含まれる(九九〇)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第3節 遺産の分割
第906条〔遺産分割の基準〕
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
〔昭五五法五一本条改正〕
*相続財産の共有(八九八・附則三二)、分割の方法(家審規一〇七・一〇九・一一〇)、農地の遺産分割(農地三1(7))
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第907条〔分割の実行〕
共同相続人は、第九百八条の規定によつて被相続人が遺言で禁じた場合を除く外、何時でも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
□遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
□前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、分割を禁ずることができる。
*遺産分割と相続税(相税五五)、□遺産の分割に関する審判の手続(九〇四の二、家審九1乙(9)の二・九1乙(10)・一五・一六・一七・二六2、家審規一〇四−一一二)、□分割禁止の審判および取消変更(家審規一一一・一一二)
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第908条〔遺言による分割の指定または禁止〕
被相続人は、遺言で、分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間内分割を禁ずることができる。
*分割の基準(九〇六)、審判による分割の禁止(九〇七3)
⇒参照条文
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第909条〔分割の遡及効〕
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼつてその効力を生ずる。但し、第三者の権利を害することができない。
*相続開始の時(八八二)
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第910条〔相続開始後の被認知者の分割請求〕
相続の開始後認知によつて相続人となつた者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
*相続の開始(八八二)、相続開始後における被相続人の子の認知(七八一2・七八七但)、認知の遡及効(七八四)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第911条〔遺産分割による担保責任〕
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責に任ずる。
*遺言による特則(九一四)、売主の担保責任(五六〇−五七二)、共有物の分割と担保責任(二六一)
⇒参照条文
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第912条〔債権についての担保責任〕
各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が分割によつて受けた債権について、分割の当時における債務者の資力を担保する。
□弁済期に至らない債権及び停止条件附の債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
*遺言による特則(九一四)、停止条件(一二七1)、弁済をすべき時(一三五1・一三七)、債権の売主の担保責任(五六九)
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第913条〔無資力者の担保責任の分担〕
担保の責に任ずる共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、各□その相続分に応じてこれを分担する。但し、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
*遺言による特則(九一四)
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第914条〔遺言による別段の定め〕
前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、これを適用しない。
*遺言による相続分の指定(九〇二)、遺産分割に関する遺言(九〇八)
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第4章 相続の承認及び放棄
第1節 総則
第915条〔承認・放棄の期間〕
相続人は、自己のために相続の開始があつたことを知つた時から三箇月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。但し、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によつて、家庭裁判所において、これを伸長することができる。
□相続人は、承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
*相続の開始(八八二)、家庭裁判所による期間の伸長(家審九1甲(24)、家審規一一三・九九)、期間内に限定承認または放棄をしないとき(九二一(2))、遺贈の承認・放棄(九八六−九八九)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第916条〔同前〕
相続人が承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があつたことを知つた時から、これを起算する。
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第917条〔同前〕
相続人が無能力者であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が無能力者のために相続の開始があつたことを知つた時から、これを起算する。
*準禁治産者と相続の承認・放棄(一二1(6))
⇒参照条文
*〔平11法149改正〕
第917条 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があつたことを知つた時から、これを起算する。
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第918条〔相続財産の管理〕
相続人は、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産を管理しなければならない。但し、承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
□家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によつて、何時でも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
□家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条〔不在者財産管理人の権利義務〕の規定を準用する。
*□承認または放棄後の管理義務(九二六・九四〇・九四四・九五〇)、□家庭裁判所の処理(家審九1甲(25)、家審規一一八・九九)、□管理人の権利義務(家審一六、家審規一一八・三三−三六)
⇒参照条文
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第919条〔承認・放棄の取消し〕
承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、これを取り消すことができない。
□前項の規定は、第一編及び前編の規定によつて承認又は放棄の取消をすることを妨げない。但し、その取消権は、追認をすることができる時から六箇月間これを行わないときは、時効によつて消滅する。承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様である。
□前項の規定によつて限定承認又は放棄の取消をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
〔昭三七法四〇第三項追加〕
*第一編の規定による取消し(四・九・一二1(6)3・九六・一二〇−一二五)、第四編の規定による取消し(八六五・八六四・八六七)、□申述の手続(家審九1甲(25)の二、家審規一一四1,3・一一五・九九)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第2節 承認
第1款 単純承認
第920条〔単純承認の効果〕
相続人が単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
*相続の効力(八九六−八九九)、破産と単純承認(破八・一〇)
⇒参照条文
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第921条〔法定単純承認〕
左に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。但し、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は放棄をしなかつたとき。
三 相続人が、限定承認又は放棄をした後でも、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかつたとき。但し、その相続人が放棄をしたことによつて相続人となつた者が承認をした後は、この限りでない。
*□一□相続人の財産管理義務(九一八)、本号の事由と限定承認(九三七)、□三□限定承認または放棄後の管理義務(九二六・九四〇)、財産目録の調製(九二四)
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第2款 限定承認
第922条〔限定承認の効果〕
相続人は、相続によつて得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、承認をすることができる。
*限定承認の期間(九一五・九二一(2))、破産と限定承認(破五・八−一〇)、債権者側からの財産分離請求(九四一・九五〇)
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第923条〔共同相続人の限定承認〕
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
*共同相続人の一部の法定単純承認または放棄(九三七・九三九)、限定承認と相続財産管理人の選任(九三六)、包括受遺者(九九〇)
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第924条〔限定承認の方式〕
相続人が限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間〔三か月〕内に、財産目録を調製してこれを家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
*期間内に限定承認をしない効果(九二一(2))、家庭裁判所への申述(家審九1甲(26)、家審規一一四−一一六・九九)、限定承認前の財産の調査(九一五2)
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第925条〔相続人・被相続人間の権利義務の不消滅〕
相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかつたものとみなす。
*相続と混同(九二〇・一七九・五二〇)、破産と相続人の被相続人に対する債権(破一二2・三三)、本条の準用(九五〇2)
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第926条〔限定承認後の相続財産の管理〕
限定承認者は、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産の管理を継続しなければならない。
□第六百四十五条〔受任者の報告義務〕、第六百四十六条〔受任者の受取物等の引渡義務〕、第六百五十条第一項、第二項〔受任者の費用償還請求権等〕及び第九百十八条第二項、第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
*管理人の選任(九三六)、管理の継続(九一八)、不正な管理と法定単純承認(九二一(3)・九三七)
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第927条〔相続債権者・受遺者に対する公告および催告〕
限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、一切の相続債権者及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。
□第七十九条第二項及び第三項〔法人の清算における公告および催告の方法〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。
*公告または催告懈怠の責任(九三四)、公告費用の負担(八八五)、期間内に申し出なかった債権者の権利(九三五)
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第928条〔催告期間中の弁済拒絶権〕
限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
*期間内の弁済の責任等(九三四)、本条の準用(九五〇2・九五七2)
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第929条〔配当弁済〕
第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産を以て、その期間内に申し出た債権者その他知れた債権者に、各□その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但し、優先権を有する債権者の権利を害することができない。
*期間中の弁済(九二八)、期間内に申し出なかった債権者の権利(九三五)、優先権を有する債権者(三〇三・三四二・三六九)、本条違反の弁済の責任(九三四)
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第930条〔期限前の債務等の弁済〕
限定承認者は、弁済期に至らない債権でも、前条の規定によつてこれを弁済しなければならない。
□条件附の債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従つて、これを弁済しなければならない。
*家庭裁判所による鑑定人の選任(家審九1甲(27)、家審規九九)、期限前の弁済(七〇六)、本条違反の弁済の責任(九三四)
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第931条〔受遺者への弁済〕
限定承認者は、前二条の規定によつて各債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。
*本条違反の弁済の責任(九三四)
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第932条〔相続財産の換価〕
前三条の規定に従つて弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付しなければならない。但し、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。
*競売(民執一九〇・一九五・一八一・一八八)、家庭裁判所による鑑定人の選任(家審九1甲(27)、家審規九九)
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第933条〔相続債権者等の競売または鑑定参加〕
相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合には、第二百六十条第二項〔共有分割への参加請求の効果〕の規定を準用する。
*競売参加(民執一八八・四九・六四)
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第934条〔不当弁済の責任〕
限定承認者が、第九百二十七条に定める公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内にある債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによつて他の債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなつたときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。第九百二十九条乃至第九百三十一条の規定に違反して弁済をしたときも、同様である。
□前項の規定は、情を知つて不当に弁済を受けた債権者又は受遺者に対する他の債権者又は受遺者の求償を妨げない。
□第七百二十四条〔損害賠償請求権の消滅時効〕の規定は、前二項の場合にも、これを適用する。
*損害賠償(四一五)
⇒参照条文
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第935条〔期間内に申し出なかった債権者および受遺者〕
第九百二十七条第一項の期間内に申し出なかつた債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかつたものは、残余財産についてのみその権利を行うことができる。但し、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。
*特別担保(三一一・三二五・三四二・三六九)
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第936条〔共同相続財産の管理人〕
相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない。
□管理人は、相続人のために、これに代わつて、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。
□第九百二十六条乃至前条の規定は、管理人にこれを準用する。但し、第九百二十七条第一項に定める公告をする期間は、管理人の選任があつた後十日以内とする。
*□共同相続と限定承認(九二三)、家庭裁判所による管理人の選任(家審九1甲(28)、家審規一一六・九九・一一八・三二)、□管理人と代理権(九九−一〇一・一〇六・一〇七)、□管理人の権利義務(家審一六、家審規一一八・三三−三六)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第937条〔共同相続における法定単純承認〕
限定承認をした共同相続人の一人又は数人について第九百二十一条第一号〔相続財産の処分〕又は第三号〔相続財産の隠匿・消費・財産目録不記載〕に掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産を以て弁済を受けることができなかつた債権額について、その者に対し、その相続分に応じて権利を行うことができる。
*共同相続人の限定承認(九二三)
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第3節 放棄
第938条〔放棄の方式〕
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
*相続放棄の期間(九一五1)、放棄の申述(家審九1甲(29)、家審規一一四・一一五・九九)、財産の調査(九一五2)
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⇒判例要旨
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第939条〔放棄の効力〕
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初から相続人とならなかつたものとみなす。
〔昭三七法四〇本条改正〕
⇒判例要旨
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第940条〔相続放棄者の管理継続義務〕
相続の放棄をした者は、その放棄によつて相続人となつた者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意を以て、その財産の管理を継続しなければならない。
□第六百四十五条〔受任者の報告義務〕、第六百四十六条〔受任者の受取物等の引渡義務〕、第六百五十条第一項、第二項〔受任者の費用償還請求権等〕及び第九百十八条第二項、第三項〔家庭裁判所による管理人の選任等〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。
*放棄前の管理義務(九一八)、自己の財産におけると同一の注意(六五九)
⇒参照条文
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第5章 財産の分離
第941条〔第一種の財産分離〕
相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後でも、同様である。
□家庭裁判所が前項の請求によつて財産の分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があつたこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。
*相続開始の時(八八二)、財産分離の請求(家審九1甲(30)、家審規一一七・九九)、財産分離と財産の不混同(九二五・九五〇2)、第二種の財産分離(九五〇)、破産と財産の分離(破一二九−一三一・一三六・五)
⇒参照条文
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第942条〔財産分離の効果〕
財産分離の請求をした者及び前条第二項の規定によつて配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先だつて弁済を受ける。
*相続人の固有財産に対する劣後的地位(九四八)
⇒参照条文
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第943条〔財産分離後の相続財産の管理〕
財産分離の請求があつたときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
□家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条〔不在者財産管理人の権利義務〕の規定を準用する。
*家庭裁判所の処分(家審九1甲(31)、家審規一一八・九九)、家庭裁判所による管理人の選任(家審規一一八・三二)、管理人の権利義務(家審一六、家審規三二−三六)
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第944条〔財産分離後の相続財産の管理義務〕
相続人は、単純承認をした後でも、財産分離の請求があつたときは、以後、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産の管理をしなければならない。但し、家庭裁判所が管理人を選任したときは、この限りでない。
□第六百四十五条乃至第六百四十七条〔受任者の義務と責任〕及び第六百五十条第一項、第二項〔受任者の費用償還請求権等〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。
*相続人の相続財産管理義務(九一八・九二六・九四〇)、管理人の選任(九四三)、自己の財産におけると同一の注意(六五九)
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第945条〔財産分離の対抗要件〕
財産の分離は、不動産については、その登記をしなければ、これを第三者に対抗することができない。
*不動産(八六1)、登記(一七七、不登一・二七)、本条の準用(九五〇2)
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第946条〔物上代位〕
第三百四条〔先取特権の物上代位〕の規定は、財産分離の場合にこれを準用する。
*本条の準用(九五〇2)
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第947条〔相続債権者および受遺者への弁済〕
相続人は、第九百四十一条第一項及び第二項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
□財産分離の請求があつたときは、相続人は、第九百四十一条第二項の期間の満了後に、相続財産を以て、財産分離の請求又は配当加入の申出をした債権者及び受遺者に、各□その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但し、優先権を有する債権者の権利を害することができない。
□第九百三十条乃至第九百三十四条〔限定承認者の弁済〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。
*請求者・申出者の優先権(九四二)、優先権を有する債権者(三〇三・三四二・三六九)
⇒参照条文
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第948条〔相続人の固有財産からの弁済〕
財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産を以て全部の弁済を受けることができなかつた場合に限り、相続人の固有財産についてその権利を行うことができる。この場合には、相続人の債権者は、その者に先だつて弁済を受けることができる。
*請求者および配当加入申出者(九四一2・九四七2)、相続財産に対する優先的地位(九四二)
⇒参照条文
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第949条〔財産分離の阻止〕
相続人は、その固有財産を以て相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させることができる。但し、相続人の債権者が、これによつて損害を受けるべきことを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。
*財産分離の審判と相続人の即時抗告(家審規一一七1)、財産分離申立却下審判と相続人の債権者の即時抗告(家審規一一七2)、財産分離の請求・効果(九四一・九四二)
⇒参照条文
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第950条〔第二種の財産分離〕
相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。
□第三百四条〔先取特権の物上代位〕、第九百二十五条〔限定承認における相続財産と相続人の財産との分離〕、第九百二十七条乃至第九百三十四条〔限定承認における相続財産の清算〕、第九百四十三条乃至第九百四十五条〔第一種の財産分離における相続財産の管理・対抗要件〕及び第九百四十八条〔第一種の財産分離における相続人の固有財産からの弁済〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、第九百二十七条〔債権者に対する公告および催告〕に定める公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がこれをしなければならない。
*第一種の財産分離(九四一)、破産と財産分離(破一二九−一三一・一三六・五)、□限定承認の期間(九一五)、財産分離の請求(家審九1甲(30)、家審規九九・一一七)
⇒参照条文
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第6章 相続人の不存在
第951条〔相続財産法人〕
相続人のあることが明かでないときは、相続財産は、これを法人とする。
*法人(三三・四三)、相続人があることが明らかとなったとき(九五五・九五六)、借家権の承継(借地借家三六)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第952条〔相続財産管理人の選任〕
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によつて、相続財産の管理人を選任しなければならない。
□家庭裁判所は、遅滞なく管理人の選任を公告しなければならない。
*管理人の選任(家審九1甲(32)、家審規一一八・九九)、公告すべき事項(家審規一一九1)
⇒参照条文
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第953条〔管理人の権利義務等〕
第二十七条乃至第二十九条〔不在者財産管理人の権利義務〕の規定は、相続財産の管理人にこれを準用する。
*管理人の改任と辞任(家審規一一八・三二)、管理人の注意義務(家審一六)、財産目録調製義務(家審規一一八・三六)、管理人の状況報告義務(九五四、家審規一一八・三三)、管理人の計算義務・損害賠償義務等(九五六2・九五九1、家審一六)、管理人の担保提供義務(家審規一一八・三四・三五)、管理人の費用償還請求権(家審一六)、管理人の財産保存義務およびその取消し・変更(家審規一一八・三七)
⇒参照条文
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第954条〔管理人の財産状況報告義務〕
管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、これに相続財産の状況を報告しなければならない。
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第955条〔相続財産法人の不存立〕
相続人のあることが明かになつたときは、法人は、存立しなかつたものとみなす。但し、管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
*管理人の権限(九五三・二八)
⇒参照条文
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第956条〔管理人の代理権の消滅時期〕
管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
□前項の場合には、管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。
*管理人の代理権(九五三・二八)、相続の承認(九一五・九二〇・九二二)、管理人の計算義務(家審一六)
⇒参照条文
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第957条〔相続財産の清算〕
第九百五十二条第二項に定める公告があつた後二箇月以内に相続人のあることが明かにならなかつたときは、管理人は、遅滞なく一切の相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。
□第七十九条第二項、第三項〔法人の清算に関する公告と催告の方法〕及び第九百二十八条乃至第九百三十五条〔限定承認における相続財産の清算〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、第九百三十二条但書〔鑑定人の評価による価額弁済〕の規定は、この限りでない。
*公告の方法(民施九三)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第958条〔相続人捜索の公告〕
前条第一項の期間の満了後、なお、相続人のあることが明かでないときは、家庭裁判所は、管理人又は検察官の請求によつて、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、六箇月を下ることができない。
〔昭三七法四〇本条改正〕
*公告すべき事項(家審規一一九2)、家庭裁判所による処分(家審九1甲(32))
⇒参照条文
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第958条の2〔公告の効力〕
前条の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、相続人並びに管理人に知れなかつた相続債権者及び受遺者は、その権利を行うことができない。
〔昭三七法四〇本条追加〕
⇒判例要旨
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第958条の3〔特別縁故者への分与〕
前条の場合において相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があつた者の請求によつて、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
□前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内に、これをしなければならない。
〔昭三七法四〇本条追加〕
*相続財産処分手続(家審九1甲(32)の二・一五の四、家審規一一九の二−一一九の八)、清算(九五七)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第959条〔相続財産の国庫帰属〕
前条の規定によつて処分されなかつた相続財産は、国庫に帰属する。この場合には、第九百五十六条第二項〔管理人の計算義務〕の規定を準用する。
〔昭三七法四〇本条改正〕
*国庫帰属(相続人曠欠ノ場合ニ於テ国庫ニ帰属シタル財産ノ引渡ニ関スル件、相続人曠欠ノ為メ国庫ニ帰属シタル財産中森林原野ノ引渡及登録ニ関スル件)、本条の特則(著六二、特許七六、実用新案二六、意匠三六、商標三五)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第7章 遺言
第1節 総則
第960条〔遺言の要式性〕
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、これをすることができない。
*この法律に定める方式(九六七−九七五・九七六−九八四)、遺言の取消しとその要式性(一〇二二)、遺言の準拠法(法例二七・三四)
⇒参照条文
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第961条〔遺言能力〕
満十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
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第962条〔無能力者の遺言能力〕
第四条〔未成年者の行為能力の制限〕、第九条〔禁治産者の行為能力の制限〕及び第十二条〔準禁治産者の行為能力の制限〕の規定は、遺言には、これを適用しない。
*未成年者と遺言(九六一)、発言不能者の遺言(九七二)、禁治産者の遺言(九七三・九八二)
⇒参照条文
*〔平11法149改正〕
第962条〔未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の遺言能力〕第四条、第九条、第十二条及び第十六条の規定は、遺言には、これを適用しない。
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第963条〔遺言能力を要する時期〕
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
*遺言能力(九六一・九六二)、禁治産者と遺言をする時の能力(九六二・九七三・九八二)
⇒参照条文
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第964条〔包括遺贈・特定遺贈〕
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。但し、遺留分に関する規定に違反することができない。
*遺留分に関する規定(一〇二八・一〇四四)、違反した遺贈の減殺(一〇三一)、特定遺贈の放棄(九八六−九八八)、破産と特定遺贈(破一一)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第965条〔受遺者の能力・欠格事由〕
第八百八十六条〔胎児の相続権〕及び第八百九十一条〔相続欠格事由〕の規定は、受遺者にこれを準用する。
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第966条〔被後見人の遺言の制限〕
被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
□前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、これを適用しない。
*後見の計算(八七〇)
⇒参照条文
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第2節 遺言の方式
第1款 普通の方式
第967条〔普通方式の種類〕
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によつてこれをしなければならない。但し、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
*遺言の要式性(九六〇・一〇二二)、遺言の方式の準拠法(法例三四、遺言準拠)
⇒参照条文
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第968条〔自筆証書遺言〕
自筆証書によつて遺言をするには、遺言者が、その全文、日附及び氏名を自書し、これに印をおさなければならない。
□自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を附記して特にこれに署名し、且つ、その変更の場所に印をおさなければ、その効力がない。
*禁治産者がする遺言(九七三)、遺言書の検認・開封(一〇〇四・一〇〇五)、□特別方式遺言に準用(九八二)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第969条〔公正証書遺言〕
公正証書によつて遺言をするには、左の方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会があること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印をおすこと。但し、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を附記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前四号に掲げる方式に従つて作つたものである旨を附記して、これに署名し、印をおすこと。
*公証人による作成(公証二六−四〇・五七・一八2)、領事の代行(九八四)、禁治産者の場合(九七三)、遺言書の検認不要(一〇〇四)、証人欠格事由(九七四)、公証人(公証一・一一)
⇒参照条文
*〔平11法149改正〕
第969条 公正証書によつて遺言をするには、次の方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二〔同〕
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前四号に掲げる方式に従つて作つたものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
⇒判例要旨
*〔平11法149改正〕
第969条の2〔口がきけない者の公正証書遺言〕口がきけない者が公正証書によつて遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述」又は「自書」とする。
□前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
□公証人は、前二項に定める方式に従つて公正証書を作つたときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
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第970条〔秘密証書遺言〕
秘密証書によつて遺言をするには、左の方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印をおすこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章を以てこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日附及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印をおすこと。
□第九百六十八条第二項〔自筆証書遺言の加除訂正〕の規定は、秘密証書による遺言にこれを準用する。
*公証人による作成(公証二六−四〇・五七・一八2)、領事の代行(九八四)、禁治産者の場合(九七三)、遺言書の検認・開封(一〇〇四1,3)、証人欠格事由(九七四)、申述と発言不能者(九七二)、公証人(公証一・一一)
⇒参照条文
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第971条〔秘密証書遺言の転換〕
秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあつても、第九百六十八条の方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。
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第972条〔発言不能者の遺言〕
言語を発することができない者が秘密証書によつて遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。
□公証人は、遺言者が前項に定める方式を践んだ旨を封紙に記載して、申述の記載に代えなければならない。
*証人欠格事由(九七四)、申述の記載(九七〇1(4))、公証人(公証一・一一)
⇒参照条文
*〔平11法149改正〕
第972条〔口がきけない者の秘密証書遺言〕口がきけない者が秘密証書によつて遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。
□前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
□第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。
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第973条〔禁治産者の遺言〕
禁治産者が本心に復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会がなければならない。
□遺言に立ち会つた医師は、遺言者が遺言をする時において心神喪失の状況になかつた旨を遺言書に附記して、これに署名し、印をおさなければならない。但し、秘密証書によつて遺言をする場合には、その封紙に右の記載をし、署名し、印をおさなければならない。
*禁治産者(七・九六二・九六三)、立会欠格事由(九七四)、公証人と状況録取(公証三五)、特別方式遺言に準用(九八二)
⇒参照条文
*〔平11法149改正〕
第973条〔成年被後見人の秘密証書遺言〕成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
□遺言に立ち会つた医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかつた旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書によつて遺言をする場合には、その封紙に右の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
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第974条〔証人・立会人の欠格事由〕
左に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 禁治産者及び準禁治産者
三 推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
四 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇人
*遺言の証人(九六九(1)・九七〇1(3)・九七二1)、遺言の立会人(九七三)、未成年者(三・七五三)、禁治産者(七)、公証人(公証一・一一)、書記(公証二四)、特別方式遺言に準用(九八二)
⇒参照条文
*〔平11法149改正〕
第974条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一〔同〕
二・三〔三・四を繰上げ〕
⇒判例要旨
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第975条〔共同遺言の禁止〕
遺言は、二人以上の者が同一の証書でこれをすることができない。
*特別方式遺言に準用(九八二)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第2款 特別の方式
第976条〔死亡危急者の遺言〕
疾病その他の事由によつて死亡の危急に迫つた者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会を以て、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合には、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印をおさなければならない。
□前項の規定によつてした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。
□家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
*証人欠格事由(九八二・九七四)、本条の遺言の作成(九八二・九六八2)、禁治産者の場合(九七三)、共同遺言の禁止(九八二・九七五)、本条の遺言の失効(九八三)、家庭裁判所の確認(家審九1甲(33)、家審規一二〇・一二一)
⇒参照条文
*〔平11法149改正〕
第976条 疾病その他の事由によつて死亡の危急に迫つた者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもつて、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合には、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
□口がきけない者が前項の規定によつて遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
□第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
□前三項の規定によつてした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。
□〔□を繰下げ〕
⇒判例要旨
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第977条〔伝染病隔離者の遺言〕
伝染病のため行政処分によつて交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会を以て遺言書を作ることができる。
*遺言の要式性(九六七但・九七〇)、本条の遺言の失効(九八三)、共同遺言の禁止(九八二・九七五)、遺言書中の加除変更(九八二・九六八2)、証人・立会人の欠格事由(九八二・九七四)、遺言書関係者の署名押印(九八〇・九八一)
⇒参照条文
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第978条〔在船者の遺言〕
船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会を以て遺言書を作ることができる。
*遺言の要式性(九六七但・九六〇)、証人の欠格事由(九八二・九七四)、遺言書関係者の署名押印(九八〇・九八一)、本条の遺言の作成(九八二・九六八2・九七三・九七五)、本条の遺言の失効(九八三)
⇒参照条文
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第979条〔船舶遭難者の遺言〕
船舶遭難の場合において、船舶中に在つて死亡の危急に迫つた者は、証人二人以上の立会を以て口頭で遺言をすることができる。
□前項の規定に従つてした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印をおし、且つ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。
□第九百七十六条第三項〔家庭裁判所の確認の準則〕の規定は、前項の場合にこれを準用する。
*遺言の要式性(九六七但・九六〇)、証人の欠格事由(九八二・九七四)、本条の遺言の作成(九八二・九六八2・九七三・九七五)、本条の遺言の失効(九八三)、署名押印(九八一)、家庭裁判所の確認(家審九1甲(33)、家審規一二〇・一二一)、本条の準用(附則三三、家審附則2)
⇒参照条文
*〔平11法149改正〕
第979条 〔同〕
□口がきけない者が前項の規定によつて遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
□前二項の規定に従つてした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。
□第九百七十六条第五項の規定は、前項の場合について準用する。
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第980条〔遺言関係者の署名押印〕
第九百七十七条及び第九百七十八条の場合には、遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印をおさなければならない。
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第981条〔署名押印不能の場合〕
第九百七十七条乃至第九百七十九条の場合において、署名又は印をおすことのできない者があるときは、立会人又は証人は、その事由を附記しなければならない。
*署名押印(九八〇)
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第982条〔普通方式遺言の規定の準用〕
第九百六十八条第二項〔遺言の加除訂正〕及び第九百七十三条乃至第九百七十五条〔禁治産者の遺言、証人または立会人の欠格事由、共同遺言の禁止〕の規定は、第九百七十六条乃至前条の規定による遺言にこれを準用する。
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第983条〔遺言者の生存による特別方式遺言の失効〕
第九百七十六条乃至前条の規定によつてした遺言は、遺言者が普通の方式によつて遺言をすることができるようになつた時から六箇月間生存するときは、その効力がない。
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第984条〔在外日本人の遺言の特則〕
日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によつて遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事がこれを行う。
*公正証書による遺言(九六九)、秘密証書による遺言(九七〇)、遺言の方式の準拠法(法例三四、遺言準拠)
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第3節 遺言の効力
第985条〔遺言の効力発生時期〕
遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
□遺言に停止条件を附した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
*死亡(三一)、停止条件(一二七)、遺言の効力発生時期に関する問題(遺言による認知の遡及効=七八一2・七八四、遺言による寄附行為の効力発生=四二2、遺言による推定相続人の廃除・取消しの遡及効=八九三後段・八九四2)、遺言の準拠法(法例二七)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第986条〔遺贈の放棄〕
受遺者は、遺言者の死亡後、何時でも、遺贈の放棄をすることができる。
□遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼつてその効力を生ずる。
*放棄の取消し(九八九)、放棄の効果(九九五)、包括受遺者の放棄(九九〇・九一五・九三八・九三九)、準禁治産者と遺贈の放棄(一二1(7))、後見と遺贈の放棄(八六四)、遺贈の承認・放棄と受遺者の破産(破一〇・一一)
⇒参照条文
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第987条〔利害関係人の催告権〕
遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨を受遺者に催告することができる。若し、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。
*遺贈義務者(八八七−八九〇・九五一)、包括受遺者の場合(九九〇・九一五以下・九二一(2))、特定受遺者が破産した場合(破一一)
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第988条〔受遺者の相続人の承認・放棄〕
受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で、承認又は放棄をすることができる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
*自己の相続権の範囲(九〇〇−九〇二)、包括受遺者の相続人の承認・放棄(九九〇・九一六)
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第989条〔遺贈の承認・放棄の取消し〕
遺贈の承認及び放棄は、これを取り消すことができない。
□第九百十九条第二項〔相続の承認・放棄の取消許容〕の規定は、遺贈の承認及び放棄にこれを準用する。
*包括受遺者の承認・放棄の取消し(九九〇・九一九)
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第990条〔包括受遺者の権利義務〕
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
*包括受遺者(九六四)、相続人の権利義務(八九六−八九九・九〇五−九一四・九一五−九四〇)
⇒参照条文
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第991条〔受遺者の担保請求権〕
受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担保を請求することができる。停止条件附の遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様である。
*遺贈義務者(八八七−八九〇・九五一)、停止条件付遺贈(一二七1)、停止条件付遺贈の効力(九八五2・九九四2)
⇒参照条文
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第992条〔受遺者の果実取得権〕
受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
*遺贈の履行を請求しうる時(九八五・一三五−一三七)、果実(八八・八九)
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第993条〔遺贈義務者の費用償還請求権〕
遺贈義務者が遺言者の死亡後に遺贈の目的物について費用を出したときは、第二百九十九条〔留置権者の費用償還請求権〕の規定を準用する。
□果実を収取するために出した通常の必要費は、果実の価格を超えない限度で、その償還を請求することができる。
*遺贈義務者(八八七−八九〇・九五一)、果実(九九二)
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第994条〔遺言の効力発生以前の受遺者の死亡〕
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
□停止条件附の遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様である。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
〔昭三七法四〇第一項改正〕
*死亡(三一)、同時死亡の推定(三二ノ二)、遺言の効力発生時期(九八五)
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第995条〔遺贈の無効・失効の場合における目的財産の帰属〕
遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によつてその効力がなくなつたときは、受遺者が受けるべきであつたものは、相続人に帰属する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
*遺贈の無効(九九四・九六五・八九一・九六六)、遺贈の放棄(九八六−九八九)、包括遺贈の放棄の効果(九九〇・九三九)、負担付遺贈の放棄の効果(一〇〇二2)
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第996条〔相続財産に属しない権利の遺贈〕
遺贈は、その目的たる権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかつたときは、その効力を生じない。但し、その権利が相続財産に属すると属しないとにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認むべきときは、この限りでない。
*遺言者の死亡と遺言の効力発生時期(九八五1)、特則(九九七・一〇〇〇)
⇒参照条文
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第997条〔相続財産に属しない権利の遺贈における遺贈義務者の責任〕
相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条但書の規定によつて有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得してこれを受遺者に移転する義務を負う。若し、これを取得することができないか、又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、その価額を弁償しなければならない。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
*遺贈義務者(八八七−八九〇・九五一)
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第998条〔不特定物の遺贈義務者の担保責任〕
不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者が追奪を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じく、担保の責に任ずる。
□前項の場合において、物に瑕疵があつたときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物を以てこれに代えなければならない。
*不特定物債権(四〇一)、遺贈義務者(八八七−八九〇・九五一)、売主の追奪担保責任(五六〇−五六四)、売主の瑕疵担保責任−適用なし(五七〇・五六六)
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第999条〔遺贈の物上代位〕
遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失によつて第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。
□遺贈の目的物が、他の物と附合し、又は混和した場合において、遺言者が第二百四十三条乃至第二百四十五条〔動産の附合および混和〕の規定によつて合成物又は混和物の単独所有者又は共有者となつたときは、その全部の所有権又は共有権を遺贈の目的としたものと推定する。
*第三者に対する償金請求権(四一五・七〇三・七〇四・七〇九・二四八・二〇〇、商六二九)、債権の遺贈の物上代位(一〇〇一)
⇒参照条文
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第1000条〔第三者の権利の目的たる財産の遺贈〕
遺贈の目的たる物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消滅させるべき旨を請求することができない。但し、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
*遺言者の死亡と遺言の効力発生時期(九八五)、遺贈義務者(八八七−八九〇・九五一)、相続財産に属しない権利の遺贈(九九六・九九七)
⇒参照条文
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第1001条〔債権の遺贈の物上代位〕
債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、且つ、その受け取つた物が、なお、相続財産中に在るときは、その物を遺贈の目的としたものと推定する。
□金銭を目的とする債権については、相続財産中にその債権額に相当する金銭がないときでも、その金額を遺贈の目的としたものと推定する。
*遺贈の物上代位(九九九)、遺言と抵触する生前処分(一〇二三2)
⇒参照条文
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第1002条〔負担付遺贈〕
負担附遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責に任ずる。
□受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者が、自ら受遺者となることができる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
*負担義務と不履行と遺言の取消し(一〇二七)、遺贈の放棄(九八六−九八九・九九五・九九〇・九三九)
⇒参照条文
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第1003条〔負担付遺贈の受遺者の免責〕
負担附遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴によつて減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じてその負担した義務を免かれる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
*負担付遺贈(一〇〇二・一〇二七)、遺留分回復の訴え(一〇三二・一〇三八)
⇒参照条文
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第4節 遺言の執行
第1004条〔遺言書の検認・開封〕
遺言書の保管者は、相続の開始を知つた後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様である。
□前項の規定は、公正証書による遺言には、これを適用しない。
□封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会を以てしなければ、これを開封することができない。
*□遺言書(九六七)、相続開始(八八二)、家庭裁判所の検認(家審九1甲(34)、家審規一二二−一二四・一二〇)、□公正証書による遺言(九六九)、□相続人の立会い(家審規一二三(3)・一二四)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第1005条〔前条違反の制裁〕
前条の規定によつて遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処せられる。
〔昭五四法六八本条改正〕
*過料の裁判(非訟二〇六−二〇八ノ二)
⇒参照条文
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第1006条〔遺言執行者の指定〕
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
□遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
□遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
*遺言執行者(一〇〇七−一〇一〇)、遺言執行者の権利義務(一〇一一−一〇二〇)、遺言執行と信託(信託二・四九2、信託業五1(5))
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第1007条〔遺言執行者の就職〕
遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
*遺言執行者の任務(一〇一一・一〇一二)、任務の懈怠と解任(一〇一九1)
⇒参照条文
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第1008条〔遺言執行者就職の催告〕
相続人その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨を遺言執行者に催告することができる。若し、遺言執行者が、その期間内に、相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。
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第1009条〔遺言執行者の欠格事由〕
無能力者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
*無能力者(三・七五三・七・一一)、破産者(破一二六)、遺言執行者の指定選任(一〇〇六・一〇一〇)
⇒参照条文
*〔平11法149改正〕
第1009条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
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第1010条〔遺言執行者の選任〕
遺言執行者が、ないとき、又はなくなつたときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によつて、これを選任することができる。
*遺言執行者がないときまたはなくなったとき(一〇〇六・一〇〇七・一〇〇九・一〇一九)、家庭裁判所による選任(家審九1甲(35)、家審規一二五・一二〇)
⇒参照条文
⇒判例要旨
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第1011条〔財産目録の調製〕
遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を調製して、これを相続人に交付しなければならない。
□遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会を以て財産目録を調製し、又は公証人にこれを調製させなければならない。
*公証人(公証一・一一)、目録調製の費用(一〇二一)
⇒参照条文
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第1012条〔遺言執行者の職務権限〕
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
□第六百四十四条乃至第六百四十七条〔受任者の義務と責任〕及び第六百五十条〔受任者の費用償還請求権等〕の規定は、遺言執行者にこれを準用する。
*遺言執行者の地位(一〇一五)、相続財産の管理(九一八・九二六・九三六2・九四〇・九四四)、その他の任務(八九三・八九四・一〇一一・七八一2、戸六四)、破産申立ての義務(破一三六2)、任務の懈怠と解任(一〇一九)
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⇒判例要旨
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第1013条〔相続人の処分権喪失〕
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
*相続人の相続財産管理(九一八・九二六・九三六2・九四〇・九四四)
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第1014条〔特定財産に関する遺言の執行〕
前三条の規定は、遺言が特定財産に関する場合には、その財産についてのみこれを適用する。
*遺贈の包括および特定名義(九六四)
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第1015条〔遺言執行者の地位〕
遺言執行者は、これを相続人の代理人とみなす。
*遺言執行者の職務権限(一〇一二・一〇一三)、代理人(九九−一〇二・一〇八)
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⇒判例要旨
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第1016条〔遺言執行者の復任権〕
遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。但し、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
□遺言執行者が前項但書の規定によつて第三者にその任務を行わせる場合には、相続人に対して、第百五条〔復代理人の選任・監督に関する代理人の責任〕に定める責任を負う。
*復代理人の選任・権限(一〇四−一〇七)
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第1017条〔共同遺言執行者〕
数人の遺言執行者がある場合には、その任務の執行は、過半数でこれを決する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
□各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
*遺言執行者の数(一〇〇六1)、保存行為(一〇三(1))
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第1018条〔遺言執行者の報酬〕
家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によつて遺言執行者の報酬を定めることができる。但し、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
□遺言執行者が報酬を受けるべき場合には、第六百四十八条第二項及び第三項〔受任者の報酬の支払方法〕の規定を準用する。
*遺言執行者に対する報酬の付与(家審九1甲(36)、家審規一二〇)、報酬の負担(一〇二一)
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第1019条〔遺言執行者の解任・辞任〕
遺言執行者がその任務を怠つたときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
□遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
*遺言執行者の任務の例(一〇一一・一〇一二・一〇〇七・八九三、戸六四)、家庭裁判所の解任・辞任の処分(家審九1甲(37)、家審規一二六・一二七・一二〇)
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第1020条〔任務終了と委任の規定の準用〕
第六百五十四条〔委任終了後の善処義務委任〕及び第六百五十五条〔委任終了の対抗要件〕の規定は、遺言執行者の任務が終了した場合にこれを準用する。
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第1021条〔遺言執行の費用〕
遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。但し、これによつて遺留分を減ずることができない。
*遺言執行に関する費用の例(一〇〇四・一〇一〇・一〇一九・一〇一一・一〇一二・一〇一八)、遺留分(一〇二八・一〇四四)、相続財産に関する費用の負担(八八五)
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第5節 遺言の取消
第1022条〔遺言取消しの自由と取消しの方式〕
遺言者は、何時でも、遺言の方式に従つて、その遺言の全部又は一部を取り消すことができる。
*遺言の方式(九六七以下・九七六以下)、遺言取消しの準拠法(法例二七2)
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第1023条〔抵触する後の遺言または処分による取消し〕
前の遺言と後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす。
□前項の規定は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合にこれを準用する。
⇒判例要旨
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第1024条〔遺言書または遺贈の目的物の破棄による取消し〕
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を取り消したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様である。
*遺言書中の加除変更(九六八2・九七〇2・九八二)
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第1025条〔取り消された遺言の復活〕
前三条の規定によつて取り消された遺言は、その取消の行為が、取り消され、又は効力を生じなくなるに至つたときでも、その効力を回復しない。但し、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
*一般の取消しの効果(一二一)、詐欺・強迫と取消し(九六)
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第1026条〔遺言の取消権の放棄〕
遺言者は、その遺言の取消権を放棄することができない。
*遺言の取消し(一〇二二)
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第1027条〔負担付遺贈遺言の取消し〕
負担附遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行を催告し、若し、その期間内に履行がないときは、遺言の取消を家庭裁判所に請求することができる。
*負担付遺贈(一〇〇二・一〇〇三)、相続人(八八七−八九〇・一〇一二1・一〇一三・一〇一五)、遺言取消しの審判(家審九1甲(38)、家審規一二〇・一二八)
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第8章 遺留分
第1028条〔遺留分権利者とその遺留分〕
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、左の額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の三分の一
二 その他の場合には、被相続人の財産の二分の一
〔昭五五法五一本条改正〕
*兄弟姉妹以外の相続人(八八七・八八九1(1)・八九〇・一〇四四・八八七2,3)、共同相続人の遺留分(一〇四四・九〇〇)、代襲相続人の遺留分(一〇四四・九〇一)、遺留分の規定に違反しえないもの(九〇二1・九〇三3・九六四)、相続財産の負担費用と遺留分(八八五2・一〇二一但)
⇒参照条文
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第1029条〔遺留分算定の基礎となる財産〕
遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、これを算定する。
□条件附の権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選定した鑑定人の評価に従つて、その価格を定める。
*□相続開始の時(八八二)、贈与(五四九)、算入される贈与(一〇三〇・一〇三九・一〇四四・九〇三・九〇四)、□条件(一二七)、鑑定人の選定(家審九1甲(27)、家審規九九)
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第1030条〔算入せられる贈与の範囲〕
贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によつてその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知つて贈与をしたときは、一年前にしたものでも、同様である。
*贈与(五四九)、相続開始(八八二)、贈与とみなされるもの(一〇三九)、一年前の贈与で算入されるもの(一〇四四・九〇三・九〇四)
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第1031条〔遺贈・贈与の減殺〕
遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するに必要な限度で、遺贈及び前条に掲げる贈与の減殺を請求することができる。
*遺留分権利者・遺留分(一〇二八)、遺贈(九六四)、遺留分に関する訴え・調停・審判(民訴五(14)、家審一七・二一・二四・二五・二六2)、減殺請求権の消滅時効(一〇四二)
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第1032条〔条件付権利等の贈与または遺贈の一部減殺〕
条件附の権利又は存続期間の不確定な権利を贈与又は遺贈の目的とした場合において、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第千二十九条第二項の規定によつて定めた価格に従い、直ちにその残部の価額を受贈者又は受遺者に給付しなければならない。
*条件(一二七)
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第1033条〔減殺の順序〕
贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、これを減殺することができない。
*死因贈与(五五四)
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第1034条〔目的物の価額による遺贈の割合減殺〕
遺贈は、その目的の価額の割合に応じてこれを減殺する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
*死因贈与(五五四)
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第1035条〔贈与の減殺の順序〕
贈与の減殺は、後の贈与から始め、順次に前の贈与に及ぶ。
*死因贈与(五五四)
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第1036条〔受贈者の果実の返還〕
受贈者は、その返還すべき財産の外、なお、減殺の請求があつた日以後の果実を返還しなければならない。
*果実(八八・八九)
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第1037条〔受贈者の無資力による損失の負担〕
減殺を受けるべき受贈者の無資力によつて生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
*減殺を受けるべき受贈者(一〇三一・一〇三〇・一〇三九)
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第1038条〔負担付贈与の減殺〕
負担附贈与は、その目的の価額の中から負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができる。
*負担付贈与(五五三)、負担付遺贈の受遺者の負担軽減(一〇〇三)
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第1039条〔不当対価による有償行為の減殺〕
不相当な対価を以てした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知つてしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。
*遺留分権利者(一〇二八)、贈与とみなす効果(一〇二九1・一〇三〇・一〇三三・一〇三五)
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第1040条〔贈与の目的物を処分した場合の減殺〕
減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者にその価額を弁償しなければならない。但し、譲受人が譲渡の当時遺留分権利者に損害を加えることを知つたときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。
□前項の規定は、受贈者が贈与の目的の上に権利を設定した場合にこれを準用する。
*減殺を受けるべき受贈者(一〇三一・一〇三〇・一〇三九)、遺留分権利者(一〇二八)、悪意の譲受人の価額弁償(一〇四一2)
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第1041条〔価額による弁償〕
受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免かれることができる。
□前項の規定は、前条第一項但書の場合にこれを準用する。
*遺留分権利者(一〇二八)
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第1042条〔減殺請求権の消滅時効〕
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があつたことを知つた時から、一年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。相続の開始の時から十年を経過したときも、同様である。
*遺留分権利者(一〇二八)、相続の開始(八八二)、減殺すべき贈与または遺贈(一〇三一・一〇三〇・一〇三九)
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第1043条〔遺留分の放棄〕
相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
□共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
*相続の開始(八八二)、遺留分(一〇二八・一〇四四)、遺留分放棄の許可(家審九1甲(39)、家審規九九)
⇒参照条文
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第1044条〔代襲相続および相続分の規定の準用〕
第八百八十七条第二項、第三項〔代襲相続〕、第九百条〔法定相続分〕、第九百一条〔代襲相続分〕、第九百三条及び第九百四条〔特別受益者の相続分〕の規定は、遺留分にこれを準用する。
〔昭三七法四〇本条改正〕
*遺留分(一〇二八)
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附 則(昭和二二年一二月二二日・法律第二二二号)
第1条〔新法の施行期日〕この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
第2条〔分家の場合の親族入籍の廃止〕明治三十五年法律第三十七号は、これを廃止する。
第3条〔定義〕この附則で、新法とは、この法律による改正後の民法をいい、旧法とは、従前の民法をいい、応急措置法とは、昭和二十二年法律第七十四号をいう。
第4条〔新法遡及効の原則〕新法は、別段の規定のある場合を除いては、新法施行前に生じた事項にもこれを適用する。但し、旧法及び応急措置法によつて生じた効力を妨げない。
*新法施行日(附則一)、昭和二二年五月三日施行する旨の規定(応急措置法附則1)
⇒参照条文
第5条〔妻の行為〕応急措置法施行前に妻が旧法第十四条第一項の規定に違反してした行為は、これを取り消すことができない。
第6条〔隠居の取消し〕応急措置法施行前にした隠居が旧法によつて取り消すことができる場合には、なお、旧法によつてこれを取り消すことができる。この場合には、旧法第七百六十条の規定を適用する。
*隠居(旧七五二−七五七)、隠居の取消し(旧七五八・七五九)
第7条〔隠居・入夫婚姻の対抗要件〕応急措置法施行前に隠居又は入夫婚姻による戸主権の喪失があつた場合には、なお、旧法第七百六十一条の規定を適用する。
*戸主権の喪失(旧七五二−七五七1・七三六1)
第8条〔婚姻の取消し〕新法施行前にした婚姻が旧法によつて取り消すことができる場合でも、その取消の原因である事項が新法に定めてないときは、その婚姻は、これを取り消すことができない。
*婚姻の取消し(旧七七九−七八七)、新法にない取消原因(相姦者の婚姻の取消し=旧七八〇・七六八、父母・後見人・親族会の同意のない子の婚姻の取消し=旧七八三・七八四、婿養子縁組における縁組の無効・取消しによる婚姻の取消し=旧七八六)
第9条〔詐欺・強迫による離婚の取消しの期間〕新法第七百六十四条において準用する新法第七百四十七条第二項の期間は、当事者が、新法施行前に、詐欺を発見し、又は強迫を免かれた場合には、新法施行の日から、これを起算する。
第10条〔離婚、婚姻取消しによる財産分与〕日本国憲法施行後新法施行前に離婚した者の一方は、新法第七百六十八条の規定に従い相手方に対して財産の分与を請求することができる。
□前項の規定は、婚姻の取消についてこれを準用する。
*日本国憲法施行(憲一〇〇1)、離婚(旧八〇八・八一三)、家庭裁判所による財産分与の処分(家審附則2、家審一七、家審規一四五)、婚姻の取消し(旧七七九−七八七)
⇒参照条文
第11条〔離婚原因〕新法施行前に生じた事実を原因とする離婚の請求については、なお、従前の例による。
□新法第七百七十条第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
*旧法にない離婚原因(七七〇1(1)(4)(5))、新法にない離婚原因(旧八一三(4)(5)(7)(8)(10))
⇒参照条文
第12条〔子の復氏〕応急措置法施行前に未成年の子が旧法第七百三十七条又は第七百三十八条の規定によつて父又は母の家に入つた場合には、その子は、成年に達した時から一年以内に従前の氏に復することができる。その子が新法施行前に成年に達した場合において、新法施行後一年以内も、同様である。
*成年(三・七五三)
⇒参照条文
第13条〔婚姻規定の準用〕第八条、第九条及び第十一条の規定は、養子縁組についてこれを準用する。
*新法にない縁組取消原因(法定推定家督相続人ある場合の養子縁組の取消し=旧八五四・八三九、配偶者の同意を得ない配偶者の子の養子縁組の取消し=旧八五六、父母等の同意を得ない縁組の取消し=旧八五七、婚姻の無効・取消しによる婿養子縁組の取消し=旧八五八、旧法にない離縁原因=八一四1(3))、新法にない離縁原因(他の一方からの虐待侮辱=旧八六六(1)、養親の直系尊属からの虐待侮辱=旧八六六(3)、他の一方の処刑=旧八六六(4)、養子の家名冒□・家産蕩尽=旧八六六(5)、養子の三年以上の逃亡=旧八六六(6)、自己の直系尊属に対する他の一方からの虐待侮辱=旧八六六(8)、婿養子縁組における離婚等=旧八六六(9))
⇒参照条文
第14条〔婚姻関係のない父母の共同親権〕新法施行の際、現に、婚姻中でない父母が、共同して未成年の子に対して親権を行つている場合には、新法施行後も、引き続き共同して親権を行う。但し、父母は、協議でその一方を親権者と定めることができる。
□前項但書の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判所は、父又は母の請求によつて協議に代わる審判をすることができる。
□新法第八百十九条第六項の規定は、第一項但書又は前項の規定によつて親権者が定められた場合にこれを準用する。
*□婚姻中でない父母の共同親権(応急措置法六)、協議による親権者の届出(戸一三五1)、□親権者の届出(家審附則2、家審九1乙(7)・一七、家審規一四六、戸一三五2)
⇒参照条文
第15条〔母の親権の制限〕応急措置法施行前に、親権を行う母が、旧法第八百八十六条の規定に違反してし、又は同意を与えた行為は、これを取り消すことができない。
*親権を行う母(旧八七七2)
第16条〔継父母・嫡母の親権の制限〕第二十一条の規定は、応急措置法施行前に親権を行つていた継父、継母又は嫡母についてこれを準用する。
*親権を行う継父母・嫡母(旧七二八・八七八)
第17条〔親族会員と子との間の債権の時効〕新法施行前に親族会員と親権に服した子との間に財産の管理について生じた債権については、なお、旧法第八百九十四条の規定を適用する。
*親族会員(旧九四五)、親権に服した子(旧八七七)
第18条〔母の管理権の辞任〕新法施行前に母が旧法の規定によつて子の財産の管理を辞した場合において、新法施行の際その子のためにまだ後見が開始していないときは、その辞任は、新法施行後は、その効力を有しない。
*母の管理権の辞任(旧八九九・九〇一)、後見の開始(旧九〇〇)
第19条〔後見人の地位〕新法施行の際現に旧法第九百二条の規定によつて父母の一方が後見人であるとき、又は旧法第九百四条の規定によつて選任された後見人があるときは、その後見人は、新法施行のため、当然にはその地位を失うことはない。但し、新法施行によつて後見が終了し、又は新法による法定後見人があるときは、当然その地位を失う。
*新法施行による後見の終了(八三八(1)・七五三)、新法による法定後見人があるとき(八四〇)
⇒参照条文
第20条〔後見監督人・保佐人の地位〕前条の規定は、後見監督人及び保佐人についてこれを準用する。
*後見監督人(旧九一〇・九一一)、保佐人(旧九〇九)
第21条〔後見人の権限の制限〕新法施行前に、後見人が、旧法第九百二十九条の規定に違反してし、又は同意を与えた行為は、なお、旧法によつてこれを取り消すことができる。
*後見人(旧九〇一−九〇四)、違反行為の取消し(旧九三六・八八七)
第22条〔親族会員と被後見人等との間の債権の時効〕第十七条の規定は、親族会員と被後見人又は準禁治産者との間にこれを準用する。
*親族会員(旧九四五)、被後見人(旧九〇〇)、準禁治産者(一一)
⇒参照条文
第23条〔親族会の決議に対する不服〕新法施行前にされた親族会の決議に対する不服については、なお、旧法を適用する。
□前項の規定によつて親族会の決議を取り消す判決が確定した場合でも、親族会であらたに決議をすることは、これを認めない。
*親族会の決議に対する不服(旧九五一)
第24条〔扶養に関する判決〕新法施行前に扶養に関してされた判決については、新法第八百八十条の規定を準用する。
*扶養に関する判決の変更・取消し(旧九六二)、家庭裁判所による変更・取消し(家審附則2、家審九1乙(8)・一七、家審規一四七)
⇒参照条文
第25条〔応急措置法施行前の相続〕応急措置法施行前に開始した相続に関しては、第二項の場合を除いて、なお、旧法を適用する。
□応急措置法施行前に家督相続が開始し、新法施行後に旧法によれば家督相続人を選定しなければならない場合には、その相続に関しては、新法を適用する。但し、その相続の開始が入夫婚姻の取消、入夫の離婚又は養子縁組の取消によるときは、その相続は、財産の相続に関しては開始しなかつたものとみなし、第二十八条の規定を準用する。
*家督相続人の選定(旧九八二−九八五)、入夫婚姻・入夫の離婚または離縁の取消しによる相続開始(旧九六四2,3)、財産分配の審判および調停(家審附則2)
⇒参照条文
第26条〔家附の継子〕応急措置法施行の際における戸主が婚姻又は養子縁組によつて他家から入つた者である場合には、その家の家附の継子は、新法施行後に開始する相続に関しては、嫡出である子と同一の権利義務を有する。
□前項の戸主であつた者について応急措置法施行後新法施行前に相続が開始した場合には、前項の継子は、相続人に対して相続財産の一部の分配を請求することができる。この場合には、第二十七条第二項及び第三項の規定を準用する。
□前二項の規定は、第一項の戸主であつた者が応急措置法施行後に婚姻の取消若しくは離婚又は縁組の取消若しくは離縁によつて氏を改めた場合には、これを適用しない。
*継子の地位(旧七二八、応急措置法三、法七二五(3))、財産分配の審判および調停(家審附則2)
⇒参照条文
第27条〔憲法公布後の家督相続の場合の財産分配請求〕第二十五条第二項本文の場合を除いて、日本国憲法公布の日以後に戸主の死亡による家督相続が開始した場合には、新法によれば共同相続人となるはずであつた者は、家督相続人に対して相続財産の一部の分配を請求することができる。
□前項の規定による相続財産の分配について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家事審判所に対し協議に代わる処分を請求することができる。但し、新法施行の日から一年を経過したときは、この限りでない。
□前項の場合には、家事審判所は、相続財産の状態、分配を受ける者の員数及び資力、被相続人の生前行為又は遺言によつて財産の分配を受けたかどうかその他一切の事情を考慮して、分配をさせるべきかどうか並びに分配の額及び方法を定める。
*日本国憲法公布の日(憲法上諭)、戸主の死亡による家督相続(旧九六四(1))、共同相続人(八八七−八九〇)、家督相続人(旧九六八−九八五)、財産分配の審判および調停(家審附則2、家審一七、家審規一四八)
⇒参照条文
第28条〔戸主であった者の婚姻取消し・離婚・縁組取消し・離縁による復氏の場合の財産の分配〕応急措置法施行の際戸主であつた者が応急措置法施行後に婚姻の取消若しくは離婚又は養子縁組の取消若しくは離縁によつて氏を改めた場合には、配偶者又は養親、若し配偶者又は養親がないときは新法によるその相続人は、その者に対し財産の一部の分配を請求することができる。この場合には、前条第二項及び第三項の規定を準用する。
*婚姻の取消し等(附則二六3)、相続人(八八七−九八〇)、財産分配の審判および調停(家審附則2、家審一七、家審規一四八)
⇒参照条文
第29条〔相続人の廃除〕推定の家督相続人又は遺産相続人が旧法第九百七十五条第一項第一号又は第九百九十八条の規定によつて廃除されたときは、新法の適用については、新法第八百九十二条の規定によつて廃除されたものとみなす。
*推定の家督相続人(旧九七〇・九七二・九七四)、推定の遺産相続人(旧九九四・九九六)
第30条〔遺産管理についての処分〕旧法第九百七十八条(旧法第千条において準用する場合を含む。)の規定によつて遺産の管理についてした処分は、相続が第二十五条第二項本文の規定によつて新法の適用を受ける場合には、これを新法第八百九十五条の規定によつてした処分とみなす。
*推定相続人の廃除またはその取消しの裁判確定前に相続が開始した場合における裁判所の処分(旧九七八・一〇〇〇)、相続が開始した場合における家庭裁判所の処分(八九五)
⇒参照条文
第31条〔分家・廃絶家再興のための贈与〕応急措置法施行前に分家又は廃絶家再興のため贈与された財産は、新法第九百三条の規定の適用については、これを生計の資本として贈与された財産とみなす。
*分家または廃絶家再興のための贈与(旧一〇〇七)
第32条〔遺産の分割〕新法第九百六条及び第九百七条の規定は、第二十五条第一項の規定によつて遺産相続に関し旧法を適用する場合にこれを準用する。
*遺産相続と相続財産の共有(旧一〇〇二・一〇〇三)、遺産分割に関する審判または調停(家審附則2、家審一七、家審規一四九)
⇒参照条文
第33条〔遺言の確認〕新法施行前に旧法第千七十九条第一項の規定に従つてした遺言で、同条第二項の規定による確認を得ないものについては、新法第九百七十九条第二項及び第三項の規定を準用する。
□新法施行前に海軍所属の艦船遭難の場合に旧法第千八十一条において準用する旧法第千七十九条第一項の規定に従つてした遺言で、同条第二項の規定による確認を得ないものについても、前項と同様である。
*家庭裁判所による確認(家審附則2、家審規一五〇)
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附 則〔抄〕(昭和四六年六月三日・法律第九九号)
(施行期日)
第1条 この法律は、昭和四十七年四月一日から施行する。
(経過措置の原則)
第2条 この法律による改正後の民法(以下「新法」という。)の規定は、別段の定めがある場合を除き、この法律の施行の際現に存する抵当権で根抵当であるもの(以下「旧根抵当権」という。)にも適用する。ただし、改正前の民法の規定により生じた効力を妨げない。
(新法の適用の制限)
第3条 旧根抵当権で、極度額についての定めが新法の規定に適合していないもの又は附記によらない極度額の増額の登記があるものについては、その極度額の変更、新法第三百九十八条の四の規定による担保すべき債権の範囲又は債務者の変更、新法第三百九十八条の十二の規定による根抵当権の譲渡、新法第三百九十八条の十三の規定による根抵当権の一部譲渡及び新法第三百九十八条の十四第一項ただし書の規定による定めは、することができない。
2 前項の規定は、同項に規定する旧根抵当権以外の旧根抵当権で、民法第三百七十五条第一項の規定による処分がされているものについて準用する。ただし、極度額の変更及び新法第三百九十八条の十二第二項の規定による根抵当権の譲渡をすることは、妨げない。
(極度額についての定めの変更)
第4条 旧根抵当権で、極度額についての定めが新法の規定に適合していないものについては、元本の確定前に限り、その定めを変更して新法の規定に適合するものとすることができる。この場合においては、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
(附記によらない極度額の増額の登記がある旧根抵当権の分割)
第5条 附記によらない極度額の増額の登記がある旧根抵当権については、元本の確定前に限り、根抵当権者及び根抵当権設定者の合意により、当該旧根抵当権を分割して増額に係る部分を新法の規定による独立の根抵当権とすることができる。この場合においては、旧根抵当権を目的とする権利は、当該増額に係る部分について消滅する。
2 前項の規定による分割をする場合には、増額に係る部分を目的とする権利を有する者その他の利害の関係を有する者の承諾を得なければならない。
3 附則第十四条の規定による改正後の不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)第百十七条第二項、第百十八条及び第百十九条の規定は、第一項の規定による分割による権利の変更の登記の申請について準用する。
4 前項の登記は、増額の登記に附記してする。この場合においては、登記官は、分割により根抵当権の設定を登記する旨を記載し、かつ、分割前の旧根抵当権の登記に分割後の極度額を附記しなければならない。
5 不動産登記法第百四十七条第二項の規定は、前項の場合において、増額の登記に当該増額に係る部分を目的とする第三者の権利に関する登記があるときに準用する。
(元本の確定すべき期日に関する経過措置)
第6条 この法律の施行の際旧根抵当権について現に存する担保すべき元本の確定すべき時期に関する定め又はその登記は、その定めにより元本が確定することとなる日をもつて新法第三百九十八条の六第一項の期日とする定め又はその登記とみなす。ただし、その定めにより元本が確定することとなる日がこの法律の施行の日から起算して五年を経過する日より後であるときは、当該定め又はその登記は、当該五年を経過する日をもつて同項の期日とする定め又はその登記とみなす。
(弁済による代位に関する経過措置)
第7条 この法律の施行前から引き続き旧根抵当権の担保すべき債務を弁済するについて正当な利益を有していた者が、この法律の施行後元本の確定前にその債務を弁済した場合における代位に関しては、なお従前の例による。
(旧根抵当権の処分に関する経過措置)
第8条 この法律の施行前に元本の確定前の旧根抵当権についてされた民法第三百七十五条第一項の規定による処分に関しては、なお従前の例による。
(同一の債権の担保として設定された旧根抵当権の分離)
第9条 同一の債権の担保として設定された数個の不動産の上の旧根抵当権については、元本の確定前に限り、根抵当権者及び根抵当権設定者の合意により、当該旧根抵当権を一の不動産について他の不動産から分離し、これらの不動産の間に、民法第三百九十二条の規定の適用がないものとすることができる。ただし、後順位の抵当権者その他の利害の関係を有する者の承諾がないときは、この限りでない。
2 前項の規定による分離による権利の変更の登記は、当該一の不動産の上の旧根抵当権の設定の登記に附記してする。この場合においては、登記官は、当該不動産が他の不動産とともに担保の目的である旨の記載を朱抹しなければならない。
3 不動産登記法第百二十八条の規定は、前項の権利の変更の登記をした場合について準用する。
4 第一項の規定による分離は、新法第三百九十八条の十六の規定の適用に関しては、根抵当権の設定とみなす。
(元本の確定の時期に関する経過措置)
第10条 この法律の施行前に、新法第三百九十八条の二十第一項第二号に規定する申立て、同項第三号に規定する差押え、同項第四号に規定する競売手続の開始若しくは差押え又は同項第五号に規定する破産の宣告があつた旧根抵当権で、担保すべき元本が確定していないものについては、この法律の施行の日にこれらの事由が生じたものとみなして、同項の規定を適用する。
(旧根抵当権の消滅請求に関する経過措置)
第11条 極度額についての定めが新法の規定に適合していない旧根抵当権については、その優先権の限度額を極度額とみなして、新法第三百九十八条の二十二の規定を適用する。
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附 則〔抄〕(昭和五一年六月一五日・法律第六六号)
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。〔後略〕
(民法の一部改正に伴う経過措置)
2 この法律の施行前三月以内に離婚し、又は婚姻が取り消された場合における第一条の規定による改正後の民法第七百六十七条第二項(同法第七百四十九条及び第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定の適用については、同項中「離婚の日から三箇月以内」とあるのは、「民法等の一部を改正する法律(昭和五十一年法律第六十六号)の施行の日から三箇月以内」とする。
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附 則〔抄〕(昭和五四年一二月二〇日・法律第六八号)
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
(法人の設立許可の取消し等に関する経過措置)
第2条 この法律による改正後の民法第七十一条及び民法施行法第二十三条第一項の規定は、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の当該規定によつて生じた効力を妨げない。
(法人の解散の登記に関する経過措置)
第3条 この法律の施行前に主務官庁が設立許可を取り消し、又は解散を命じた法人の解散の登記に関しては、なお従前の例による。
(罰則に関する経過措置)
第4条 この法律の施行前にした行為及び前条の規定により従前の例によることとされる事項に係るこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
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附 則(昭和六二年九月二六日・法律第一〇一号)
(施行期日)
第1条 この法律は、昭和六十三年一月一日から施行する。
(民法の一部改正に伴う経過措置の原則)
第2条 改正後の民法(以下「新法」という。)の規定は、次条の規定による場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の民法の規定によつて生じた効力を妨げない。
(縁組の取消しに関する経過措置)
第3条 新法第八百六条の二及び第八百六条の三の規定は、この法律の施行前にした縁組には適用しない。
(離縁等の場合の氏に関する経過措置)
第4条 この法律の施行前三月以内に離縁をし、又は縁組が取り消された場合における新法第八百十六条第二項(新法第八百八条第二項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、新法第八百十六条第二項中「離縁の日から三箇月以内」とあるのは、「民法等の一部を改正する法律(昭和六十二年法律第百一号)の施行の日から三箇月以内」とする。