地価公示法
 
昭和四十四年六月二十三日法律第四十九号
最終改正 昭和五十八年十二月二日法律第七十八号
 
 
第一章 総則
第一条(目的)
 この法律は、都市及びその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的とする。
 
第一条の二(土地の取引を行う者の責務)
 都市及びその周辺の地域等において、土地の取引を行う者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有すると認められる標準地について公示された価格を指標として取引を行なうよう努めなければならない。
 
第二章 地価の公示の手続
第二条(標準地の価格の判定等)
 土地鑑定委員会は、総理府令で定める都市計画区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第二項に規定する都市計画区域をいい、国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)第十二条第一項の規定により指定された規制区域を除く。)内の標準地について、毎年一回、総理府令で定めるところにより、二人以上の不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行つて、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとする。
 2 前項の「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引(農地、採草放牧地又は森林の取引(農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための取引を除く。)を除く。)において通常成立すると認められる価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格)をいう。
 
第三条(標準地の選定)
 前条第一項の標準地は、土地鑑定委員会が、総理府令で定めるところにより、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地について選定するものとする。
 
第四条(標準地についての鑑定評価の基準)
 不動産鑑定士又は不動産鑑定士補は、第二条第一項の規定により標準地の鑑定評価を行なうにあたつては、総理府令で定めるところにより、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格、近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案してこれを行なわなければならない。
 
第五条(鑑定評価書の提出)
 第二条第一項の規定により標準地の鑑定評価を行なつた不動産鑑定士又は不動産鑑定士補は、土地鑑定委員会に対し、鑑定評価額その他の総理府令で定める事項を記載した鑑定評価書を提出しなければならない。
 
第六条(標準地の価格等の公示)
 土地鑑定委員会は、第二条第一項の規定により標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは、すみやかに、次に掲げる事項を官報で公示しなければならない。
 一 標準地の所在の郡、市、区、町村及び字並びに地番
 二 標準地の単位面積当たりの価格及び価格判定の基準日
 三 標準地の地積及び形状
 四 標準地及びその周辺の土地の利用の現況
 五 その他総理府令で定める事項
 
第七条(公示に係る事項を記載した書面等の送付及び閲覧)
 土地鑑定委員会は、前条の規定による公示をしたときは、すみやかに、関係市町村(都の特別区の存する区域にあつては特別区、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあつては当該市の区。次項において同じ。)の長に対して、公示した事項のうち当該市町村が属する都道府県に存する標準地に係る部分を記載した書面及び当該標準地の所在を表示する図面を送付しなければならない。
 二 関係市町村の長は、政令で定めるところにより、前項の図書を当該市町村の事務所において一般の閲覧に供しなければならない。
 
第三章 公示価格の効力
 
第八条(不動産鑑定士等の土地についての鑑定評価の準則)
 不動産鑑定士又は不動産鑑定士補は、第二条第一項の都市計画区域内の土地について鑑定評価を行なう場合において、当該土地の正常な価格(第二条第二項に規定する正常な価格をいう。)を求めるときは、第六条の規定により公示された標準地の価格(以下「公示価格」という。)を規準としなければならない。
 
第九条(公共事業の用に供する土地の取得価格の算定の準則)
 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律によつて土地を収用することができる事業を行なう者は、第二条第一項の都市計画区域内の土地を当該事業の用に供するため取得する場合(当該土地に関して地上権その他当該土地の使用又は収益を制限する権利が存する場合においては、当該土地を取得し、かつ、当該権利を消滅させる場合)において、当該土地の取得価格(当該土地に関して地上権その他当該土地の使用又は収益を制限する権利が存する場合においては、当該権利を消滅させるための対価を含む。)を定めるときは、公示価格を規準としなければならない。
 
第十条(収用する土地に対する補償金の額の算定の準則)
 土地収用法第七十一条の規定により、第二条第一項の都市計画区域内の土地について、当該土地に対する同法第七十一条の事業の認定の告示の時における相当な価格を算定するときは、公示価格を規準として算定した当該土地の価格を考慮しなければならない。
 
第十一条(公示価格を規準とすることの意義)
 前三条の場合において、公示価格を規準とするとは、対象土地の価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして成立すると認められる価格)を求めるに際して、当該対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる一又は二以上の標準地との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を行ない、その結果に基づき、当該標準地の公示価格と当該対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう。
 
第四章 土地鑑定委員会
第十二条(設置)
 この法律及び不動産の鑑定評価に関する法律(昭和三十八年法律第百五十二号)に基づく権限を行なわせるため、国土庁に、土地鑑定委員会(以下「委員会」という。)を置く。
 
第十三条(所掌事務)
 委員会の所掌事務は、次のとおりとする。
 一 地価の公示に関すること。
 二 不動産鑑定士試験に関すること。
 三 国土庁長官の諮問に応じて不動産の鑑定評価に関する重要事項を調査審議すること。
 四 その他法律(これに基づく命令を含む。)の定めるところにより委員会の権限に属させられた事項を処理すること。
 2 委員会は、その所掌事務を行なうため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
 3 委員会は、不動産の鑑定評価に関する重要事項について、国土庁長官に建議することができる。
 
第十四条(組織)
 委員会は、委員七人をもつて組織する。
 2 委員のうち六人は、非常勤とする。
 
第十五条(委員)
 委員は、不動産の鑑定評価に関する事項又は土地に関する精度について学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、国土庁長官が任命する。
 2 委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、固化医の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、国土庁長官は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。
 3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承諾を得なければならない。この場合において、両議院の事後の証人が得られないときは、国土庁長官は、直ちに、その委員を罷免しなければならない。
 4 次の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
 一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ないもの
 二 禁錮以上の刑に処せられた者
 5 委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
 6 委員は、再任されることができる。
 7 委員は、第四項各号の一に該当するに至つた場合においては、その職を失うものとする。
 
第十六条(委員長)
 委員会に委員長を置き、委員の互選によつてこれを定める。
 2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
 3 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
 
第十七条(会議)
 委員会は、委員長が招集する。
 2 委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
 3 委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
 4 委員長に事故のある場合の第二項の規定の適用については、前条第三項に規定する委員は、委員長とみなす。
 
第十八条(委員の服務)
 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
 2 委員は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
 3 常勤の委員は、在任中、国土庁長官の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行なつてはならない。
 
第十九条(委員の給与)
 委員の給与は、別に法律で定める。
 
第二十条
 削除
 
第二十一条(政令への委任)
 この法律に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
 
第五章 雑則
 
第二十二条(土地の立ち入り)
 委員又は委員会の命を受けた者は、第二条第一項の規定による鑑定評価若しくは価格の判定又は第三条の規定による標準地の選定を行なうために他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査を行なう必要があるときは、その必要の限度において、他人の占有する土地に立ち入ることができる。
 2 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、立ち入ろうとする日の三日前までに、その旨を土地の占有者に通知しなければならない。
 3 第一項の規定により、建築物が所在し、又はかき、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとするときは、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を土地の占有者に告げなければならない。
 4 日出前又は日没後においては、土地の占有者の承諾があつた場合を除き、前項に規定する土地に立ち入つてはならない。
 5 土地の占有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立ち入りを拒み、又は妨げてはならない。
 6 前項の規定により、他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
 7 前項に規定する証明書の様式は、総理府令で定める。
 
第二十三条(土地の立入りに伴う損失の補償)
 国土庁長官は、前条第一項の規定による立入りにより他人に損失を与えたときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
 2 前項の規定による損失の補償については、国土庁長官と損失を受けた者とが協議しなければならない。
 3 前項の規定による協議が成立しないときは、国土庁長官又は損失を受けた者は、総理府令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。
 
第二十四条(秘密を守る義務)
 第二条第一項の規定により標準地の鑑定評価を行なつた不動産鑑定士又は不動産鑑定士補は、正当な理由がなく、その鑑定評価に際して知ることのできた秘密を漏らしてはならない。
 
第二十五条(鑑定評価命令)
 委員会は、第二条第一項の鑑定評価のため必要があると認めるときは、不動産鑑定士又は不動産鑑定士補に対し、標準地の鑑定評価を命ずることができる。
 2 前項の規定に基づく命令により標準地の鑑定評価を行なつた不動産鑑定士又は不動産鑑定士補に対しては、総理府令で定めるところにより、旅費及び報酬を支給する。
 
 
第二十六条(不動産の鑑定評価に関する法律の特例)
 不動産鑑定士又は不動産鑑定士補が第二条第一項の規定により行なう標準地の鑑定評価についての不動産の鑑定評価に関する法律の適用に関しては、当該標準地の鑑定評価は、同法第二条第二項に規定する不動産の鑑定評価に含まれないものとする。
 
 
第六章 罰則
 
第二十七条
 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一 第二条第一項の規定による標準地の鑑定評価について、虚偽の鑑定評価を行なつた者
 二 第二十四条の規定に違反して、標準地の鑑定評価に際して知ることのできる秘密を漏らした者
 
第二十八条
 第二十二条第五項の規定に違反して、同条第一項の規定による土地の立ち入りを拒み、又は妨げた者は、十万円以下の罰金に処する。
 
第二十九条
 第二十五条第一項の規定により標準地の鑑定評価を命ぜられた者が、正当な理由がなく、鑑定評価を行なわないとき、又は第五条に規定する鑑定評価書を提出しないときは、一万円以下の過料に処する。